【SHE’S】ピアノを前面に出した、心
に染みるバラード
SHE’Sにとって2枚目となるシングル「Tonight / Stars」は“夜をテーマにした3曲”というコンセプトで制作されたという。井上竜馬（Vo&Key）が3曲に託した想いとは？
取材：桂泉晴名
バラード曲「Tonight」はどのようなかたちで生まれたのですか？
心に病気を患ってしまった女の子の友達にずっと“生きよう”という言葉をかけていて、そういう中で生まれた曲です。その子は自分の中で“楽しい”とか“嬉しい”という感情の動きすら見えなくなってしまい、“幸せが何か全然分からない”と言っていたんです。でも、僕は違うと思って。歌詞にも《春が好きだと話す顔》とか《君が好きな花の名も》とあるのですが、そういうことを話している時の彼女の顔がほんまに楽しそうで。自分が気付いていないだけで、ちゃんと幸せは彼女の中に刻まれていて、心の中では認識できているんじゃないかと思っていたんです。
空虚な思いを抱えながら、どこか遠くを見つめる女の子が出てくるMVは胸に迫りますね。
やっぱり女の子が葛藤しているところを表現するのは必要なんじゃないかという話になって。でも、毎日一緒にして何かをしてあげられるわけじゃないし。例えば電話でも音楽でも、声で安心するなら、それを頼ってほしいというメッセージがあったので、あえて僕らと主人公の女の子は絡まないようにしました。あとは、楽曲のテーマを表すモチーフとしてロウソクは使いたいと思っていたんですけど、監督に伝えるのを忘れていたんですよ。けれど、ちゃんと当日持ってきていて。監督は大学の映像学科の友達で、初期のMVから一緒にやってきているので、通じ合っていたんでしょうね。
デビュー曲の活発さとは対照的でしっとり胸に残ります。
今回はピアノロックバンドであることがもっと分かりやすく伝わるように、ピアノを前面に出したバラードを書きたいと話していたので、そこから作曲にかかりました。今まで僕らは淡々としたバラードはやったことがなかったので、みんなとアレンジを考える時間は一番長かったと思います。
続く「Stars」は爽快で弾けるような楽曲ですね。
この曲は夏フェスの期間中、船で北海道から青森の八戸に行く時に甲板のところで全員で満天の星空を見て、それで書こうと思った曲だったんです。タイトルにはスーパースターとかの“Star”と、星の“Star”の両方の意味があるんです。なので、複数形なんですけど。僕たちは“Star”を求めていっているけれど、今、それができるのは僕たちがビジネスパートナーじゃなくて、友達として確かな付き合いに戻れる瞬間があるからこそ、4人で頑張っていけるんだなっていうことで、“帰る場所がここにあるから”という歌詞になったんです。
怒涛のごとく駆け抜ける3曲目の「Isolation」は、どんなテーマで書きたいと考えましたか？
これは自分の中の正しさについて説いていくっていう曲ではあるんですけど。孤立を恐れて違う正義を掲げるような人間になるなよ、と。そもそも僕自身が“これは空気を読んでないやろな”と分かった上で、結構バシバシ意見するタイプなので。でも、例えその場で孤立したとしても、分かり合える友達はきっといるだろうし、そこだけでも通じ合えることで十分じゃないかと自分は思っているんですよ。“そういう生き方も悪くはないよ”という想いで書きました。
今はバンドとしてどうありたいと思っていますか？
ひとつの椅子に座り続けないバンドでいたい。いろいろな曲を作りたいし、いろいろなアプローチをして、それがSHE’Sになっていくのを楽しみたいな、と思っています。
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