【中田ヤスタカ】米津玄師との初コラ
ボで誕生した大胆かつ極上のアンセム
文:田山雄士
佐藤 健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之らフレッシュな役者陣も話題の、原作は朝井リョウ(『桐島、部活やめるってよ』)、監督・脚本は三浦大輔(『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『愛の渦』)という、“超観察エンタメ”映画『何者』。その音楽を手がけたのが、八面六臂に働きまくる中田ヤスタカだ。今作では、主題歌で米津玄師との初コラボが実現! さらに劇伴も中田が書き下ろし、『NANIMONO EP/何者(オリジナル・サウンドトラック)』としてソロ名義でリリースされることになった。
DISC1は、米津が作詞とヴォーカルを担当した主題歌+同曲のリミックス4トラックからなる、5曲入りの『NANIMONO EP』。大型タイアップに初のコラボと複数要素が絡む状況ながらも、Aメロとサビだけのとてもシンプルな構造にまとめ、その上で深みのあるリリックが自問自答のごとく展開されていく。そんな「NANIMONO (feat. 米津玄師)」に、まずはゾクゾクしてほしい。見えない未来への不安、就活の渦中で軋めく人間模様、SNSのリアル、“確かなものが欲しい”“愛されたい”“前を向け”という心の叫び――映画に出てくる若者たちの揺らぎを、米津はその言葉と声でエグいほど的確に、さらりとすくい取ってみせた。ヒエラルキーを連想させる《階段》を繰り返し用いつつ、《踊り場》とダンスフロアーを結び付けているのもうまい。おそらく現状打破のきっかけ、希望としてのダンストラックなんだと思う。踊ることで抜け出すというか、凝り固まることを回避するためのフィジカリティーというか。それを踏まえて、リミックスも徹底的にダンス攻めなのかもしれない。いずれにしろ、米津の譜割りと中田のリズム、そしてメロディーとの噛み合わせは最&高! ピアノのリフレインも切ない、大胆かつ極上のアンセムが誕生した。
リミキサーは中田の他、今年夏のカーリー・レイ・ジェプセンとのコラボが好評だったダニー・L・ハール、DAOKOの歌とナレーションが印象深い学校法人・専門学校HALのCM音楽などで知られるTeddyLoid、山下智久や湘南乃風に楽曲提供したりとマルチに活躍するプロデューサー/DJのbanvoxと、いずれも気鋭揃い! シンプルな曲構造だからこそやり甲斐があったのか、四者四様に個性を爆発させた「NANIMONO」を聴かせてくれる。
DISC2には、中田による映画『何者』のサントラを収録。キラキラとダンサブルなDISC1と対照的に、生ピアノが静謐に響いたり、ギターのアルペジオを柔らかく弾いていたり、代名詞であるエレクトロサウンドとは異なる魅力が味わえる。厳しさと凛々しさを湛えた「就活スタート」から、久石譲や坂本龍一を彷彿させるほど神々しい「拓人と瑞月」まで、キャストの心に寄り添った詩情あふれるトラックの数々は新たな感動を呼ぶ。
変革しつつある日本の映画・音楽シーンの今を象徴する、まさに豪華メンツが集った大注目作『何者』。ちなみにこの映画、劇中バンドの楽曲を忘れらんねえよ、LAMP IN TERREN、Rhythmic Toy Worldが提供し、カラスは真っ白のメンバーが演奏していたりもするので、音楽ファンにぜひ観てもらいたい。中田×米津の「NANIMONO」はじめ、活路を開いてくれるような人生のテーマソングと出会えるかも。