シンガーソングライターの焚吐にとって初となるアルバム『スケープゴート』。人に託す身から、アーティストとして人に託される立場へ変わっていった彼の変化を感じられる作品である。
取材:桂泉晴名

『スケープゴート』は焚吐さんが10歳から書き溜めた曲から厳選したナンバーを集めた作品だそうですね。

今まで9年間たくさん音楽を作ってきて、その時々の音楽性はあるんですけれども、今回はひとつのテーマに絞るというより、自分が今出せるものをジャンルレスに入れたという感じです。アルバムタイトルの“スケープゴート”については、自分がもともと人に直接ものを言えない性格で、それを曲というスケープゴートに託すことによって、想いを昇華してきたこともあったので、自分が音楽をやっている理由となる言葉をタイトルにしました。

1曲目の「ハイパールーキー」は、12曲の中では新しいナンバーだとか。

昨年11月に開催したワンマンライヴのあとに作った曲のひとつです。すごくノリが良くて底抜けに明るいので、ライヴで映えるだろうなと思って1曲目に持ってきました。イントロのフレーズも印象的ですし、ドラムもすごく攻めた感じなので、バンドアレンジで早くライヴでやってみたいですね。音楽を届ける側になってみてから、自分が音楽で影響を与えていることをいろいろな方々のリアクションから学ぶことが多くて。自分が“先陣を切って引っ張っていく”くらいの気力がないとやっていけない、という想いを込めて作りました。

焚吐さんは高校生まで自分自身を閉じ込めた生き方をしていたそうですが、その時期の曲というのは?

7曲目の「グリンプス・グランパ」はそうですね。曲に昇華して最終的にはっちゃけているんですけど、これは本当にパーソナルなナンバーです。サウンド的にもとりわけ焚吐っぽい曲なんじゃないかな。あと、最後の「ティティループ」は小学校6年生の時、“自分の存在は100パーセント自分だって断定できない”と感じた不安を曲にしました。アルバムではNeruさん(カリスマボカロP)にアレンジしていただいて壮大になっているんですけど、“自分がここにいる意味”をすごく考えて作った曲です。

9曲目の「夢負い人」はストレートなナンバーですね。

これは高校時代に原案を書いた曲で、その時はタイトルが“夢追い人”だったんですけど、自分なりに夢っていうものの見方がデビュー前と変わってきて。夢って追いかけるものだとずっと思っていたんですよ。もちろんその一面もあるんですけど、夢を目指すことによって少なからずも背負うものが人それぞれにあるなって。“夢という言葉の中に混在するふたつのテーマをひとつの曲に落としたらどうなるか?”ということをやってみたいと思って、タイトルを“夢負い人”にして歌詞も今回少し書き直しました。

アルバムを完成させた現在の気持ちを教えてください。

今は次のアルバムのことを考え、どんどん曲作りを行なっています。でも、『スケープゴート』は“この作品なくして次の作品はない”くらいの気持ちでやったので、だからこそぜひ聴いていただきたいです。そして、2016年はどちらかと言うと自己否定で進んでいった年だと思うんですけど、2017年は逆に“自分らしく”というのをテーマに掲げていて。アルバム最後の「ティティループ」は“本当にこれでいいのか?”という疑問形で終わる曲なのですが、これも自分らしさなんですよ。「ティティループ」でアルバムが締め括られたのは、今年の活動につながっていくんじゃないかと感じています。
『スケープゴート』2017年02月08日発売Being
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • JBCZ-9049 3900円
    • 【通常盤】
    • JBCZ-9050 3000円
焚吐 プロフィール

タクト:1997年2月20日生まれの21歳。東京都出身。某音楽大学在学中。10歳頃から楽曲制作を始め、それらを人前で歌うことで、自身の苦手とするコミュニケーションの代わりにしてきた。普段の物静かな佇まいとは裏腹に、本音を露わにした鋭利な歌詞と心に訴えかけるような力強い歌声が特徴の男性シンガーソングライター。焚吐 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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