【丸本莉子】苦しみの先に聴こえる最
高の名曲
心をやさしく包み込む温かい歌声で、心の中にとどめた想いや声をそのまま歌詞にして歌う丸本莉子。デビューから2年という歳月をかけてじっくりと作られた1stアルバム『ココロノコエ』について、思い入れをたっぷりと訊いてきた。
取材:吉田可奈
ついに1stアルバム『ココロノコエ』が完成しましたね。メジャーデビューから2年かけてじっくりと作られた今作を改めて聴いてみて、いかがでしたか?
実はデビュー当時から、2年後にフルアルバムをリリースすることを目標にしていたんです。なので、今はこの目標を達成した充実感であふれています。改めて出揃った全ての曲を聴くと、“私は日常を切り取った、当たり前のことを歌いたいんだ”ということを再確認することができました。
アルバム制作は楽しかったですか?
楽しくはないです(笑)。
あはは。いつも制作は苦しいと言っていますよね。
そうなんです。やっぱり何年経っても曲を作るのって難しいなって思うんです。自分の中では“名曲ができた!”と思っていても、スタッフさんたちに聴かせるといろんな反応があって。それを反映させていけばいくほど、いいものができるんですが、その作業が本当に大変で苦しいんです。その仕上げの中で自分のベストを見つけるのは、何年作り続けたとしても難しいですね。
曲に正解はないですからね。
そうなんです。もともと答えのないものを作り上げていくのは本当に大変なこと。一生懸命作るたびに“もうできない!”って思うんですよ。
毎回、振り絞って曲を作り上げているのですね。
そうですね。でも、自分を追い込んで生まれているものを、いい曲と言ってもらえると、やって良かったと思うんです。
より印象的だった曲はどの曲ですか?
今までにないメロディーに挑戦できたのが「夜を泳ぐ」です。周りの反響もすごく良くて、自分の新たな一面が出せたと思います。
歌詞は藤林聖子さんと一緒に作られているのですね。
はい。もともと同じテーマで別の歌詞を書いていたんですが、藤林さんに“メロディーが訴えかけるものだし、内容も報われない恋だから、もっと直接的でいいんじゃない?”というアドバイスをいただいて。それからは一気に言葉が鋭利になり、今までにないほど強い曲に生まれ変わったんです。
その鋭い言葉を並べて曲が成長することができたのはいい進歩ですよね。
そうですね。私自身、以前から“誰にも言えない悩み”を吐き出したような歌を作りたいと思ってて。「夜を泳ぐ」ではどうしても幸せになれないと分かっていても、好きになってしまったらすぐには諦めることはできない…そんな葛藤を表現したかったんです。
アルバムの絶妙な曲順にもこだわりを感じました。
ありがとうございます。アルバムを通して聴くと、今までリリースしてきたシングル曲もすごく新鮮に聴こえるんじゃないかと思います。
確かに。ちなみに、丸本さんはどのシングル曲が新鮮に聴こえましたか?
私は「やさしいうた」ですね。イントロを新しくしたのもあるんですが、やさしいギターの音色がすごく印象的で、歌声も今までにないくらいやさしく聴こえるんです。それまでの曲順が「ココロ予報」「誰にもわからない」「夜を泳ぐ」とサウンドが厚めの曲が続いているので、すごく癒されるんですよ。
この曲はあえての抽象的な表現が多いですよね。
そうですね。広い表現を使いつつも、しっかりと芯が強い曲なので、聴いた時のインパクトは大きいと思うんです。より私が指針にしていた“日常を切り取る”ということが具体化できてるんじゃないかと。
日常をテーマに曲を作っていると、インプットもかなり大事になってきますよね。日々、どんなことを心掛けているのですか?
街中で見かけた風景で感じたことを“こういうことを歌いたい”とメモに残しておくんです。そのメモを何枚も組み合わせて歌詞を作ることが多いですね。あとはドラマや漫画などを読んで、“ときめく”感情を大事に歌詞に落とし込むようにしています。
最近見た作品でときめいたものはありますか?
『私の少年』という漫画にはかなりときめきました。30歳のOLと小学生の男の子のお話なんですが、すごくリアリティーがあってドキッとするんですよ。久しぶりに夢中になれる本に出会えたのですごく嬉しいし、続きが気になって仕方がないんです。
この作品に惹かれたのは母性が出てきたからかもしれないですね。
そうなのかも!(笑) あと、設定的にはよくある話なんですが、それでもオリジナリティーがあって、続きが気になるという展開は歌詞にも通じるものがあるなと思ったんです。私もひとつのことをいろんな角度から見て、新しいものを生み出していけたらなと思って。
では、最後にタイトルに込めた想いを教えてください。
私にとって歌声は“心の声”。それをそのままタイトルにした今作には、私の想いや願いがたっぷり詰まっているんです。歌声を通して歌詞にもじっくりと注目して聴いてもらえたら嬉しいです。
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