L→R TOC(MC)、DJ KATSU(DJ)

L→R TOC(MC)、DJ KATSU(DJ)

【Hilcrhyme】Hilcrhymeには、まだや
ることが超いっぱいある

10周年記念特別公演『朱ノ鷺二〇一七』の開催、オールタイムベスト『BEST 2006-2016』の発売、映画『春夏秋冬物語』の公開と、アニバサリーイヤーの締め括りに相応しく話題豊富なHilcrhymeが、11年目からの決意を熱く語ってくれた!
取材:帆苅智之

まず、3月25日に行なわれた『Hilcrhyme 10周年記念特別公演「朱ノ鷺二〇一七」at 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター』は振り返ってみていかかでしたか?

TOC
(観客の)半分は県外からだったらしいんですよ。それはかなり珍しいことらしく…別の見方をすると新潟県内のお客さんが少なかったのかなとは思いますが、公演は最高でした。大体、その日の同録って2回観て終わりなんですけど、もう10回は観てますね。4時間のライヴを10回…毎晩観てます(笑)。それほどにいいライヴでしたね。
DJ KATSU
自分は日本武道館の時(2014年9月)、気を張りすぎていて、ダンサーあり、バンドあり、ありありの状態で、どこか思った通りにできなくて、不完全燃焼だったというか。でも、今回は初心に戻って1MC+1DJ。リラックスしていたわけじゃないですけど、でかい舞台だからって気が入りすぎることもなかったし、わりと自然体でできましたね。最前列にいる人が泣いている姿を見てグッときちゃったし、今までのライヴで一番やっていて感動したというか、すごく気持ちが入りましたね。

広い会場の中央にステージを置いて、後ろの席からでも比較的観やすいように配慮がなされていて、ライヴ空間を共有しやすいコンサートだったのかなとも思います。

TOC
360度のステージは難しいけど、自分たちには向いていると思いますね。またやりたいと思うし、課題もたくさん見つかったと思ってます。

もっとも腐心されたのはセットリストではなかったかと思いますが、その点はいかがでしょう?

TOC
そうですね。でも、アルバム順にやっていくというコンセプトができてからは覚悟が決まったというか。

この日のセットリストに関しては、当日のMCでも“振り返るではなく、Hilcrhymeのやってきたことを確かめたい”と言ってましたが、確かに懐古的なものにはなってなかったですね。

TOC
はい。“振り返る”という言葉自体にネガティブを感じるので、アーティストはそれじゃ絶対にダメだと思っていて。そうじゃなくて、軌跡を確かめていくライヴにしたいと思ったんです。10年間、新潟でやってきた俺たちが新潟のアリーナでやるライヴで、しかもファンの人たちが全国から観に来てくれるから、コンセプトは当てはまってるなと。“確かめる”と言葉を変えたのは、1stアルバムからずっとやってきて、それぞれにツアーがあったんですよ。未熟だった自分…特に1stの頃はツアーの周り方すら分からなかったし、声の出し方も全然違ったし、“そういう部分がとんでもなく変わったよ”というのを観せたかったんですね。一切アマチュアイズムはないという意識で1曲目から歌ってました。あと、新潟でやるんだからお手本にならないといけないと思っていて。35曲4時間、オケで歌うというお手本を見せなくちゃというところがありましたね。

いろんなものを背負って歌いましたか?

TOC
見せつけるのは嫌いじゃないので(笑)。

KASTUさんはどうですか? セットリストから朱鷺メッセ公演を振り返ると?

DJ KATSU
全シングルをやる、それをアルバム順に進めていったわけですが、DJとしては…例えば「春夏秋冬」もそうですけど、途中でカットしたり、違うものを差したりしても映えないというか、シングルにはいじりようがない曲が多くて。まぁ、それは今回に限ったことじゃないですけど、そこで曲と曲のつなぎは工夫しましたね。過去にはダンサーが入ったり、バンドが入ったり、ギターだけが入ったり、そういうことをやってきたけど、今回は1MC+1DJに戻って、結局Hilcrhymeはこのスタイルだなというか。キーボードにしてもバンドと違って全体の流れの中でシーンを変えるというか、曲間でその1フレーズを入れるような、普通の演奏とは全く別のキーボードの使い方であって、それがHilcrhymeのオリジナリティーにもなってきていると思うし。今回、「想送歌」の時に「Lost love song」からの流れで軽くキーボードを入れましたけど、自分の中でも結構アレは気持ち良くて。「想送歌」は曲中ではあんまりいじるところはないんですけど、ああやることによって俺は気持ち良く入れるし…そうしたら最前列の人が泣いていて、それで余計に感動しちゃいましたね(笑)。

そうでしたか。その辺はDJならではのカタルシスというか、ダイナミズムなんでしょうね。

DJ KATSU
もともとひたすら曲を途切らせずにつなげていくのが本来にDJの姿ですからね。

では、『Hilcrhyme 10周年記念特別公演「朱ノ鷺二〇一七」at 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター』を終えてみて感じていることはありますか?

TOC
今回、思ったのは、やっぱりアリーナってやってて気持ちがいいし、アリーナツアーまでいかないとダメだなと思いました。当面の目標はそこですね。結成10周年を新潟の朱鷺メッセでやるというのは前々から決めていたことだからそれはそれなんですけど、やっぱり基本的には“新潟から外へ”という姿勢でいたいので。11年目からは外へ外へ攻めていって、より大きな広がりを…ということですね。

全国各地のアリーナでコンサートができるように…ということですか?

TOC
そうじゃないと、やる意味がないと思うんです。…うん、そうならないとダメだと思いましたね。

“毎回この規模でやれるようでいたい”と?

TOC
そうです。そうなれるように、と思ってますね。少なくとも、朱鷺メッセをでかいと思わなかったですから。大したことはなかったです。気持ち良かったけど、掌握できなくはなかったから。それは武道館にしてもそうだし。ここをスタンダードにしたいと思いました。

KATSUさんも思いは一緒ですか?

DJ KATSU
そうですね。とりあえず個人的には、武道館で悔しい想いをしたので…。
TOC
俺は超気持ち良かったけど(笑)。全然悔いはない。
DJ KATSU
俺はめちゃくちゃある(苦笑)。
TOC
そこでふたりの間に違いはあるんですよ(笑)。
DJ KATSU
(笑)。俺はまず武道館でやりたい。
TOC
次やるなら2デイズやりたいね。

前回と同じではなく、スケールアップさせたいということですね。

TOC
はい。

10周年を終えて、次なる目標を見据えることができたというのは、これはもう素晴らしいことじゃないですか?

TOC
そう思います。

10年も経てば、このまま再生産を続けても誰も文句は言わないと思いますし。でも、Hilcrhymeはそれをよしとしないわけですね?

TOC
同じことをやっても全然回るんでしょうし、それを悪とも思わないんですけど、創作意欲はありますね。「アフターストーリー」(映画『春夏秋冬物語』主題歌となっている新曲)ができた時に一気に広がりました。“まだやることが超いっぱいある”みたいな(笑)。

それは本当に素晴らしいですね。

TOC
Hilcrhymeでやれることはまだある…逆に“全然やってこなかったんだな”って思っちゃうくらい。あえて分かりにくい方向というか、ちょっと玄人向けの楽曲を作った時期があったりしたから、本当にキャッチーで、一般リスナーの心を全部鷲掴みみたいな曲を作ることはまだまだできる。

今日はオールタイムベスト『BEST 2006-2016』の取材でもありますので、10年間、作り上げてきた楽曲たちを褒め称えようとインタビューに臨んでいるんですが(苦笑)。

TOC&DJ KATSU
ははははは。

まだまだイケますか?

TOC
全然イケますね。ほんとね、全然足りないです。

『BEST 2006-2016』に話題を移すと、ここに収録されている楽曲はファン投票の人気順ですよね? 普通に考えて、人気上位曲が入ったDisc1が一番耳馴染みが良くて、Disc 3はややマニアックということになりそうなものですけど、まったくそうなっておらず、Disc 2、3もポピュラリティーが高い。ちなみにDisc 2は「FLOWER BLOOM」で終わり、Disc3は「蛍」「YUKIDOKE」で始まるのですが、正直言って“なぜこれがこんなに低いランキング?”と意外に思うくらい、いずれも汎用性が高いメロディーだと思います。ですから、『BEST 2006-2016』はメジャーデビュー以降、Hilcrhymeがいかに秀曲を量産してきたかが分かるベスト盤だと思うのですが。

DJ KATSU
その辺、ファンの人たちはちゃんと分かっていると思うんですけど、一般の人たちにはデビュー当時のシングルのイメージが強くて。“代表曲じゃない曲にもいい曲はいっぱいある”ということをもっと広げられれば、ライヴにも今よりも全然人が集まるだろうし…そう考えると10周年と言ってもまだまだだし、もっと広まる余地はあるとは思いますね。
TOC
そうですよねぇ…そう(=秀曲を量産してきたと)言ってもらえるのは嬉しいですけど、どちらかと言うと、やっぱり“もっとイケたな”と意識のほうが強いですね。それはそれだけ自分自身を高く評価しているので。決して過少評価はしていない。

まだまだポテンシャルはありますか?

TOC
うん。全然ですね。全然出せてない(苦笑)。それはチームでやっていく上での問題もあって、100パーセント自分の力が発揮できる状況をスタンダードに作っていきたい。それはライヴも音源もどちらも。

なるほど。これからは環境面も大事になってくるということでしょうか?

TOC
そうですね。自分はこのチームのリーダーで、発起人で、みんなを誘ったわけだし…だから、いい意味で全部を振り回していきたいですね。お客さんもスタッフも相方も。

この『BEST 2006-2016』は名曲揃いですが、今後これ以上の名曲が生まれてきそうですか?

TOC
俺、コーラス・ライティングだったら誰にも負ける気がしないです。その道のプロたちと一緒にプロダクションに入ったことがあるんですけど、世界中のコ・ライトやっている人たちからも評価してもらったし。なおかつ、ラップにフックさせるメロディーって歌メロとは違う作り方で、そこに関してはもうダントツに長けている自信があるし、それを11年目からはパブリックなかたちで作品に反映させていきたいですね。なんだかんだ言って「春夏秋冬」はそれが上手くできたから売れたんだと思いますから。
『BEST 2006-2016』2017年04月05日発売UNIVERSAL J
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • UPCH-7246 4212円
    • 【通常盤】
    • UPCH-2120〜2 3370円
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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