キュウソネコカミの『サギグラファー
』で現代の自撮り詐欺社会を考える

「イケメンの側で撮られたら 死にたくなるなる絶望だ」この悲しさ!共感できる人は多いはずですよ。

「鏡に写った俺の顔」と「シンプルな不細工」の対比も!そう、誰しも経験があるだろう。鏡で顔をキメてたら意外と自分の顔イケるんじゃね?と錯覚する瞬間が!でも実際に写真に写し出されるのは「シンプルなブサイク」だ!「シンプルなブサイク」という表現の上手さ、語呂の良さが余計悲しい!

そのまんまの勢いで「フォトグラファー 俺に魔法をかけてくれ」というサビに突入する。フォトグラファーは、写真家の意味だ。携帯のカメラが発達した今、誰もがフォトグラファー。「魔法」と表現しているのは、もちろん「修正」のことだ。今や、写真を手軽に修正してくれるアプリも多い。「修正可能なら」どんどん加工するんだ!今や、みんな立派なサギグラファーですわ。

MVでは、キュウソのメンバーが身体をはって修正写真を再現してくれている!まさにこれぞ『サギグラファー』!

現代では写真写りが良いことが重視されがちなんだ。それはバンドやアイドルみたいな人前に出る職業だけでなく、一般人の自撮りや就職活動にまで影響している!おかしーだろーが!この曲は、そんな現代の写真社会をするどく風刺している。




「カッコつけて」たところから自信がなくなり「変顔」になる心理!集合写真とかで、妙に変顔で写りたがる奴の心理をよく歌詞にしてる!

「笑顔の練習したけれど」という涙ぐましい努力を見てくれよ!シンプルなブサイクだって、鏡の前で笑顔の練習するんだよ!でも「面白くない時笑えない」。そんな人も多いはずなんだ。このバンドは、そんなみんなの心理を代弁してるんだ!



挙げ句の果てはこの歌詞よ!「自撮り詐欺写真が褒められて」という現実!「いじけた心」が、これでようやくとかされるんだ!ここの「解かされる/溶かされる/説かされる」の表記の使い分け!まず固まっているものをゆるめる意味の「解かされる」。「心を解かす」には普通、この字をあてる!いじけて固くなってた心がゆるむんだ!そして固形のものを液状にする「溶かされる」。自分の顔写真が溶けて変わっていくことを表現してんだ!さらに説得される意味の「説かされる」。詐欺写真に対する周囲の反応に「詐欺写真こそが褒めるに値するもの」と説得されてるかのような心理になるんだ!この「とかされる」三段変化こそ、キュウソのすごさよ。単純に繰り返してるだけじゃねーんだ!



終盤に出てくる「本当の自分の価値忘れがち」。この歌詞が出てくるのがポイントよ。自撮り詐欺写真に頼ってると、本当の自分の価値を忘れちまうんだ!「愛してくれよ 無加工の俺を」この歌詞がリアルに感じられる現代ですよ。それほど今は加工が当たり前なんスよ。繰り返される「フォトグラファー… 修正可能なら…」の歌詞もわざわざ「…」をつけてんだ!この「…」に言葉にならない虚しさが込められてんだ…!それほど真剣なんだ…!

そういうことなんですよ。ふざけてるだけのバンドじゃねーんですよ、キュウソは。自撮り詐欺社会を考えさせられるほどのするどい歌詞を書いとるわけです。そして今日もまた、みんな詐欺写真を撮りまくる。みんな、立派なサギグラファーだ!

アーティスト

UtaTen

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