技巧的リズム曲、カラスは真っ白の『
9番目の「?」』が示すもの

歌いだしからものすごい勢いで言葉をつめてきます。間違いなくカラオケで歌いにくい曲。「からくり」「からぶり」「ばかり」「さらのはじ」という似た音でリズムを刻みます。続いて「ハートビート」「ハードモード」とのばす音の連続がきて、「そーともいうけど」で変化を加えつつ、今度は「そー」に沿って「そうそうと」「そまっていく」と頭の音を合わせます。そして、「気まぐれなら」は、「き、ま、ぐ、れ、なら」と一つ一つの音を明確に発音して強調して歌い、「シークレット シークレット」は、よりはっきり聴こえるように歌い、一旦一息つく構成。

自分に関するパスワードは教えない、という歌詞。秘密を守るようなからくりばかりをしかけ、相手は空振りばかりしてしまう。しかも、そんな状況が皿のはじ=食事の席の最後まで続く。ハートビート=心はドキドキするものの、これは相手にとってはハードモード。でも、歌詞の主人公は、「早々と染まっていくだけの気まぐれの関係になるくらいなら」自分のことは秘密にしたい。そういう歌っています。言葉遊びを入れつつ、明確な意味を入れているんですね。



続くフレーズも怒涛の早口展開。耳打ちして誘い出すような文句を言っても、どうせそのうち忘れちゃうんでしょう?と言う主人公。チープな外見を狙ってそうな相手は、主人公の好みではないことが分かります。「ダークな関係」という歌詞から、相手との関係が暗くなりそうだと主人公は感じている状態。心が嫌いから好きに「回転するまでの条件」もいらない。じゃんけんよりもつまらなさそうな「安定」もいらない。こうした相手に対しても上辺だけで対応し、シークレットを貫くのです。



ここからリズムが変わります。リズムに沿った歌い方になり、序盤よりも歌詞が聴きとりやすくなっています。こうすることで、歌詞の主人公が「相手と歩調を合わせてきた」ことが分かるんですね。「1・2・3」「A・B・C」と順をおって自分に接近してくる相手。ロック=鍵をしめている自分の心の扉。ノックしてもいいし、ちょっとのぞくだけならいい、と主人公は、相手に歩み寄りを見せてきます。しかし、相手が「もっと知りたい」と思うものなら、たちまちおあずけ状態に。再びシークレットな状態を貫きます。

サビで繰り替えされる「9番目のクエスチョン」という歌詞。このタイトルフレーズは、わざわざ「 」までつけて?を強調しています。この曲は簡単には自分の秘密を明かさないという歌。「パスワードはあなたの」の後はピー音が入ります。自分の心の鍵を開けるパスワードは、「あなたの」=相手の何かですが、それは最後まで明かしません。

「9番目のクエスチョン」のヒントは歌詞の中にありました。アルファベットを、「1・2・3」と辿っていくと、9番目がIです。I=私に関する秘密なんですね。そしてこれはI=愛についての歌でもあります。恋愛において、あえて秘密をもち、自分の本心を明かさない。恋愛という単語を使わずに、独特な歌詞と音のリズムやスピード感で、巧みに心の動きや駆け引きを表現しているんですね。

まさに、このバンドだからできた曲。聴く者がこの曲の謎を解き明かしたくなるようにできているのです。

TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

UtaTen

歌詞検索・音楽情報メディアUtaTen

新着