3ピースの美学、がらくたロボット 
衝動封じ込めた「BREAK OUT」

がらくたロボットのフロントマン、ヤマモトダイジロウ

 神戸発3ピースロックバンドのがらくたロボットが3月8日に、2ndミニアルバム『BREAK OUT』をリリースする。メンバーは、ヤマモトダイジロウ(Vo、Gt)、ムラカミフウタ(Ba、Cho)、イノウエタカヒロ(Dr、Cho)。高校1年の時に結成。2013年7月に開催された、音楽専門学校OSM主催の高校生バンドコンテスト『OSM High School MUSIC CAMP』で優勝を果たし、高校卒業とともに現メンバーのラインアップになる。彼らの音楽は80年代のパンクロックの要素を感じさせるが、特に意識はしていないという。威風堂々たる姿勢は、若くともベテランバンドと対等に渡るだけの気概がある。前作『GOOD-BYE THE SUN』から約10カ月ぶりとなる今作では更に磨きがかかり、衝動的なサウンドと歌詞がさらに研ぎ澄まされた。今回は、フロントマンであるヤマモトダイジロウにインタビュー。楽曲制作の背景や、3ピースバンドのとしてのこだわりなどを聞いた。

ギターとボーカルの相性

ヤマモトダイジロウ

――ダイジロウさんが音楽に目覚めたのはいつ頃でしたか?

 小学校3年生の後半くらいかな、家に親父のギターがあって。たまたま車の中でThe Whoの「Pictures Of Lily」が流れていて、それに一番、シビレたんです。その時はピート・タウンゼントになりたくてレスポールギターを弾いていました。

――音源を聴いて、あれだけエッジの効いたギタープレイをする人は少ないと思うとともに、テレキャスターの音を凄く引き出しているとも感じました。

 ありがとうございます。でも実は元々テレキャスターは嫌いだったんですよ。ムスタングが一番好きだったんですけど、がらくたロボットのサウンドを考えると、シバいても鳴る方が良いなと思ってテレキャスを買ったんです。

――バンドサウンドを考慮しての選択だったんですね。

 そうです。テレキャスの方が凶暴な感じが出せて。

――がらくたロボットを始めてからテレキャスターにした?

 いや、1年前くらいで、それまではムスタングとかYAMAHAのSGを弾いていたんです。

――ギターを弾き始めた頃は既に歌も歌いたいと思っていましたか?

 そうは思っていたけど、超下手だったので…。むしろギターをもっと弾きたいと思っていました。中学生の頃は同級生と一緒にやっていたけど、高校生になったらちゃんとやりたいと思ってメンバーを探して、ベースとドラムを見つけたんです。ボーカルをやりたいという人もいたんですけど、イマイチだったから自分が歌おうと言う事になったんです。その時は、ただ鳴っているだけだったんだけど、それでいいと思っていました。ちょっとずつやっていったら「もうボーカルしかない」と思う様になりました。

――ギターに集中したいという思いも?

 ギターだけもやりたいし、ボーカルだけもやりたいし…。

――良いボーカルがいたら任せても良いと思っていた?

 どこかのタイミングでいたら任せていたかもしれません。でも、どんどん自分の声が好きになっていっているから、今はがらくたロボットのボーカルは俺しかいないと。

自分達が出来損ないのがらくたロボット

ヤマモトダイジロウ

――「がらくたロボット」というバンド名の由来は?

 中学3年の頃にふと「がらくたロボットやん!」って思ったんです。街を歩けばそこら中がらくたロボットだから。

――世間の事?

 自分達ができ損ないのがらくたロボットだからそれでいいかなと。最初からバンド名は決まっていたんです。高校生になったら「がらくたロボット」をやろうと。

――なぜ自分を含めて回りががらくただと?

 きっとひねくれているからですね。まともな人はそう思わないんじゃないですかね?

――達観しているという感じもしますが。

 そういうふりをしているだけです(笑)。

――それでは現在のメンバーが集まった経緯は?

 フウタ(Ba)は元々別のバンドをやっていて、その時がらくたロボットのメンバー2人が抜けて、新しいメンバーを探していたんです。それで「フウタがいいんじゃないか?」という事になって、一緒にスタジオに入ってという流れです。

 タカヒロ(Dr)は、ドラムをずっと探していて、それでも見つからなかったんです。ライブは決まっていたのにどうしようという時に、ライブハウスで聞きまくって紹介してもらったのがタカヒロです。それで1回スタジオに入って「良い感じ」やと。

――ドラムのタカヒロさんは2人とはちょっと歳が離れていますね。やっぱりお兄さんみたいな感じですか?

 バンドメンバーだから感覚は同じ歳です。むしろ歳下みたいな感覚もあります(笑)。

――メンバーで意見の衝突やケンカはある?

 話せば解るというか…。合わない所というのはもちろん出てくるけど「じゃあ、それをどうしようか?」という話をすれば、ケンカになる事は無いですね。

――でも曲作りの時に揉めたりしませんか?

 俺の自己満足で表現するんだったらそうなるんでしょうけど、フウタとタカヒロと3人集まってやるのががらくたロボットだから、アレンジで揉めるという事は特にないです。「こっちの方が良いかな?」というくらいです。

――アレンジは基本的にセッションして作っていく?

 原曲を聴いてもらって、各々が考えてという感じです。俺が「こういう風にしたい」という事でドラムに「こんな感じで叩いてみて」などはあるけど、2人のファーストインパクトが大事だし、それは刺激でもあるので。

初期衝動

ヤマモトダイジロウ

――今作で苦労した楽曲は?

 苦労したのはやっぱり「ハネル」でしょうね。ゆっくりした曲だから、どんなテンポでやろうかとか。この曲は、がらくたロボットを結成した時に作った最初の曲なんです。色んなパターンがあるんだけど、初期衝動が一番出ているパターンを録りたかったんです。最初にレコーディングした曲だから、その時の初期衝動のパワーは凄くて、演奏もそんなにできていなかったけど強かったんですよ。でも、その初期衝動が無いとそれが録れないから、それをこのアルバムで録りたかったんです。

――初めて曲を書いたのはいつ?

 ギターを持った時からです。何か作りたかったんでしょうね。

――何か社会的に不満があったり?

 多分、気に食わなかったんでしょう。

――何かしらそういったものがないと曲を書かないかもしれませんね。

 それが不満でなくても、何かしらをずっと考えていたと思う。学校に対してとか。

――「ハネル」を書いた時は何を思っていましたか? 歌詞は当時と一緒でしょうか?

 ほぼ変わってないです。言葉一つだけ変わっていますけど。<灰色の世界♪>という部分は、昔は違う言葉でした。15、16歳の頃に思った言葉を、より表現できる言葉にした方が良いと思ったからです。

――ダイジロウさんは昨年20歳を迎えましたが、10代の頃と考え方が変わった部分はありますか?

 変わってないです。その時はその時でいいし、変わったから悪いという事でもないですしね。それよりも今考えている事の方が大事です。

――今、一番伝えたい事は?

 世界をひっくり返す。

――「世界」に目を向けている?

 時代はグローバルですから。全部に向かっている。俺の好きなロックスター達はそうだったから。自分の国だけではなくて、全てに向かって歌っていたから。

5本くらい骨を折っている

ヤマモトダイジロウ

――歌詞に出てくる言葉が、20歳とは思えないというか、例えば「Lonely It’s Alright」に出てくる<いつでもあの娘が握りしめたトランジスタ・ラジオ♪>みたいな。言葉のチョイスに70、80年代のロックを感じたんです。日本のロックだとどういったものを聴いていましたか?

 サンハウスとかザ・ルースターズとかアナーキーとか、ザ・スターリンも好きです。

――衝動が詰まっている音楽ですね。そういった部分に惹かれる?

 うん。やっぱ吐き出しているというか“魂の叫び”。せめて歌詞はそうじゃなくちゃ。俺の歌詞が70年代っぽいというのも、それはそれで良いけど決して昔の人達に憧れてはいないんです。むしろ昔の人達より格好良いかな。多分、吸収したものがそのあたりで多いのかな。

――最初は情報も先入観もなしにがらくたロボットの楽曲を聴いたのですが、“キャリアを感じる音”という印象がありました。人生経験的には波瀾万丈?

 今の若い子達よりきっと人生経験しているんでしょう(笑)。

――あえて自ら過酷な環境に進もうとしたり?

 しんどいとは思わないけど、色々あったな…。

――「自分の一部を形成している」という体験は?

 がらくたロボットをやりだしてからが一番大きいと思う。5本くらい骨を折っているから。前のメンバーが抜けたツアーで事故にあってツアーファイナルに出られなくて入院したり。

――車の事故ですか?

 そうです。後ろの席に座っていて。腰や鼻の骨を折って立てなくなってしまって。

――そういう事が頻繁に起きた?

 はい。事故だったり、普通に腕を折ってしまったり。でもライブは決まっていたからギブスを付けたままやりました。名古屋でのライブではギブスを取ってやりましたけど。

――その時ライブでの演奏はどうでしたか?

 上出来でしょ(笑)。でもツアーファイナルはやりたかったなあ…。医者に「車椅子でも出られないか」って聞いたり。

――その経験は今に生きているでしょうね。

 その時は高校生だったので。学校に行っている時間より、外の世界が見られて楽しかったです。

――そういった時期にできた曲はある?

 その時も歌詞は書いていましたけど、そこから曲になったのはあまりないです。全部をひっくるめて今があるから。

『BREAK OUT』は全部に通ずる

ヤマモトダイジロウ

――「キングコング」の作詞・作曲者が違うのはなぜ?

 the chelsea flower showという昔の神戸のバンドのカバーなんです。

――尊敬するバンド?

 そうですね。曲がモータウンっぽいし、ガレージっぽいし、格好良いから「俺らに合いそうだな」という事で許可を取ってカバーさせてもらったんです。

――オリジナルとは変えて演奏している?

 ちょこちょことは変えてやっていますね。

――年齢的に、映画『キングコング』は知らないだろうと思ったので、疑問でした。

 映画の『キングコング』は知らないですね。何となくは知っていますけど。でかいゴリラかな(笑)。

――今年、その『キングコング』の新作映画をやるみたいなんですよ。それに被せてきたのかなと思ったのですが。

 ちょうどええやん! ちょっと主題歌の応募しとかないとな。『キングコング』は良いと思いますけどね。破壊的だし「正にキングコング」みたいな感じだから。主題歌じゃなくても挿入歌でも(笑)。

――曲の歌詞もパンチがあるから良いですね。「キングコング」からインスパイアされてできたオリジナル曲もある?

 いやあ、やっぱり別物だと思う。「キングコング」は「キングコング」だし。でも衝動的なキングコングの歌詞は『BREAK OUT』に全部に通じるというか。

――確かにカバーとはいえ世界観に違和感はないんですよね。『BREAK OUT』というテーマは、今作はこれでいこうという感じでしたか?

 そうです。言葉の響きも良いし。

――ちなみに収録されている曲の制作は時系列がバラバラ?

 そうですね。「Bye Bye Baby」は昔、全然違う感じでやっていたんですけど、このアルバムを作るにあたって歌詞やアレンジを変えました。後はほぼ新曲というか、前作の頃から曲があって、それを作り込んで、たくさん曲がある中から選びました。

――ライブで披露していた?

 ちょくちょく。「Lonely It's Alright」はずっとやっていましたね。「BREAK OUT」はついこの間カセットテープで出して。

――カセットテープは使っているのですか?

 カセットで聴いてますよ。昔からそうだったけど、やっぱりメンバーは馴染みが無いんです。

――カセットテープでのリリースの経緯は?

 カセットの音ががらくたロボットのサウンドに合うと思ったんです。音域の上と下が無い感じと言いますか。Mid(中音域)が強い感じですね。「BREAK OUT」は特にガレージっぽいサウンドがカセットの音にドンピシャだったんです。

――基本的にはアナログなサウンドが好き?

 アナログも好きだし、デジタルも好き。レコードも好きだし、CDも買います。CDクオリティも凄いし、アナログレコードは盤に針を落とす瞬間から素晴らしいし。がらくたロボットが1stアルバム『GOOD-BYE THE SUN』をアナログレコードでもリリースして、ファンから「それを聴く為にレコードプレーヤーを買った」という話を聞いて、嬉しかったですね。

――今は配信や動画で音楽を聴く環境が多いなか、そういった形態で聴いてもらえると制作者冥利に尽きますよね。

 アナログレコードってサイズが大きいじゃないですか? だから重みが全然違いますよね。触れるだけでも眺めるだけでも良いっていう感じで。

The Jamは3ピースの美学

ヤマモトダイジロウ

――音源はスタジオ盤だけど、ライブ感がありますよね。さらにライブ盤も出したいと思う気持ちも?

 どちらかというと自分はちゃんとレコーディングして曲を出したいです。音を伸ばしたいのにライブではギター1本だから伸ばせない、という事もありますから。どっちにしろ、ライブで再現できないような曲は録りたくないんです。だからシンプルになっていくんです。フレーズどうこうよりも、その雰囲気がそのまま出れば一番良いんですよね。

――一番大切な事はそこ?

 もちろんそうです。ミスとかは別にどっちでも良くて、それよりも曲としての良さ、雰囲気が出したいだけなんです。だから音はちゃんと録音したいんです。

――やはり1テイク目は重要ですか?

 何だかんだ言って一発目が一番良い。ドラムとかは特に一発目が一番ノリが良いんですよね。だからドラム次第という所もありますね。“ロックバンドの鉄則”というか。

――ミックスエンジニアはザ・クロマニヨンズやOKAMOTO'Sなどをミックスしている川口聡さんですが、サウンドの仕上がりはどうでしたか?

 さすがでした。“ロック”という感じで。

――今作はサウンドに空間が感じられました。楽器のサウンドが歌よりも大きくて今時としては珍しいと思いましたが、それは意図的に?

 そうですね。俺達は歌モノバンドやJ-POPではないから。ボーカルも楽器も同じくらいの音のレベルで、常に戦い合っている感じなんです。

――自分で歌もギターもやっているから、どっちが出ても「自分」だという部分があるかもしれませんね。これが他の人がギターを弾いていたら「ギター下げろ」となったり?

 「やかましいねん」って(笑)。

――ボーカルが自分だというアイデンティティがあれば、他の人にギターを任せても良い?

 俺がけっこうしばきで弾いているのに、同じ様に弾いてもらってもケミストリーが起きないと思うんですよ。もっと違う刺激があった方が、がらくたロボットの面白みが深まると思うんです。だから、俺よりも上手いとかよりも、センスや「これが俺だ」というものがあればそれだけで良いんです。

――自分の歌とギターで戦えるのなら今の3ピース形態は凄く良いですね。

 3ピースの美学ですから。

――もう一人ギターがいたとしても、音に厚みは出るかもしれないけど、エモーショナルな部分が違ってくると思います。この3人だからこそ出せるサウンドと言いますか。

 3人だと全員の力が一緒というところがありますね。常に正三角形という。4人だったら「楽器隊とボーカル」でも良いかなという具合になりますしね。3人だと全員が当たり合っているというか、それが良いんです。

――リスナーも「3人なのにこの音圧」というところを感じると思います。

 4人バンドで立ちボーカルがいて、ギター、ベース、ドラム、だとスリーピースと同じ様な音じゃないですか? ボーカルがそのギターくらい弾けたら、別に3人でやっているのも変わらないし。

――3ピースだとギターが片手間になっちゃう人がいますからね。ただコードを鳴らしているような。そういうベクトルではないですよね。ちなみに3ピースバンド形態の“神バンド”は?

 The Jamかな。3ピースでずば抜けて格好良いバンドってあんまりいないと思うんです。でもThe Jamはシビレたな…。あれこそ本当に“3ピースの美学”だし刺激的ですよ。燃えますね。

――3ピース形態でやっていきたいという思いは強い?

 それは強いですよ。他のメンバーがどう思っているかは知らないけど。

――最初聴いた時は3ピースでやっているとは思えない音の厚みを感じました。

 ギターがうるさいから(笑)。

――でもロックだから楽器も主役なんですよね。

 それこそ押し引きの問題だけで、これだけ引いているからこそ、出す時に出せるというのが力なんです。

――それによって出るパワー感やテンションが凄まじいです。

 俺がずっと思うのは、スピーカーからギターが鳴った瞬間に人が吹き飛ぶくらいのダイレクト感、押される様なものが一番良いなと思うんです。

――ドラムでいったらスネア一発で腰を抜けさせる様な感じですね。

 そう。結局「力」ではないんですよ。どれだけ優しく鳴らせるかという。楽器はしばいても鳴る様なものではないですからね。女の子を扱うのと一緒で優しさが無いと。

――女の子とも優しく接している?

 優しさがあるから良いんですよ(笑)。

――ギターに関しても見た目は乱暴に見えても実は内面的には優しく接している?

 自分の楽器って俺の中では恋人だから。愛せなかったらそのギターを痛めつけてしまうし。でも、そいつが大事だからこそちゃんと鳴らしてあげるという事です。

――今作を引っさげての今後のライブはどの様に展開していきますか?

 シビレるやつ。常にとんでもないライブをしたいです。

――どういった人に来てもらえたら、より一層ライブを楽しんでもらえると思いますか?

 まともな奴は聴いたらアカン(笑)。誰であろうと狂ってしまえば良いから。馬鹿になれると言うか。良くも悪くも強烈に記憶に残るライブがしたいです。

(取材=村上順一、撮影=編集部)

作品情報

がらくたロボット「BREAK OUT」
1500円(税込)、2017年3月8日発売、BZCS-1151
▽収録曲
1.Lonely It's Alright
2.Bye Bye Baby
3.キングコング
4.リンダ
5.BREAK OUT
6.ハネル

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