「誇りに思えるバンドであるように!
」ライブモンスターの軌跡と未来が鳴
り響いた、Dragon Ash20周年記念日ラ
イブ



モノクロームのLED映像をバックに、EX THEATERのステージに現れた7人のメンバー。彼らが最初に鳴らし始めたのは、1997年に発表されたデビューミニアルバム『The day dragged on』からの1曲「天使ノロック」だった。早くもフロアにモッシュの波が続々と生まれていく。過去にとらわれず、信じるのは目の前の真実だけ。そう歌う1曲で幕を開けた、デビュー20周年を祝う一夜限りの宴、『Dragon Ash 20th Anniversary Live Show『MIX IT UP』』。さらに場内の熱気を煽るように、この日配信されたばかりの渾身のライブ賛歌「Mix It Up」、そして昨年末に発表されたシングル「光りの街」収録の「Headbang」と、最新のライブ・アンセムが続く。つねに音楽性とスタイルを進化させながら邁進し続けてきたライブモンスター、Dragon Ashらしい始まりだ。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



すでにモッシュとダイブの坩堝と化したフロアをクールダウンするように始まったのは、オリジナル・メンバーでベーシストのIKUZONEの最後の演奏曲としてリリースされた、「Walk with Dreams」。赤と青のバンダナを腰につけたKjがギターを鳴らしながらかみしめるように歌うと、青から赤へゆっくりと照明の色が変わる。アンプの傍らに、IKUZONEのトレード・マークの赤と青のチェックのシャツコートをかけていたベーシスト・KenKenが奏でているのは、IKUZONEが使っていた赤と青の愛機だ。続いて披露された「繋がりSUNSET」は、当時29歳だったKjが20代で得たものを歌った1曲。HIROKIのギターソロが温かく優しい音色を響かせると、それはすべての人の人生の賛歌へと生まれ変わっていく。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



「Velvet Touch」「TIME OF YOUR LIFE」「Freedom」と、場内にシンガロングが巻き起こった後、聞き慣れたスクラッチ音が鳴り響くと、ひときわ大きな歓声が上がる。社会現象にもなった大ブレイクへの布石であり、ヒップホップのビートが大胆に取り込まれたミクスチャーバンドとしてのDragon Ashを決定づけた1曲「Let yourself go, Let myself go」だ。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



「スタッフとみんな(観客)と、こいつのおかげで20年やってこれました」
Kjがそう言うと、KenKenがベースをビョーンと鳴らしながら、IKUZONEの赤青のチェックのシャツコートを自らのマイクスタンドにかけ、スラップベースを響かせる。それに応えるように激しいバンドアンサンブルが重なると、ステージもフロアも一斉にヘドバンのカオスへ。ライブにかける音楽家の思い、親友でありベーシスト仲間でもあったIKUZONEの意志を継ぎ、KenKenがDragon Ashで演奏する理由。すべてが詰まった1曲の中で、KenKenが「馬場育三」の名を叫ぶ。「Amploud」では、IKUZONEがこの曲のMVやライブでいつもやっていた、右手を水平チョップするポーズをメンバー全員がすると、もちろんフロアも同調。誰よりもファン思いだったIKUZONEは、今も間違いなくDragon Ashの音楽の中に存在しているのだと確信する。<そんで楽しいんだったら歓声を>と歌うKjのコールに、<Ho!>と叫ぶオーディエンスのレスポンスもバッチリだ。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



「ケガすんじゃないぞ!」
KjのMCで始まった「百合の咲く場所で」でいくつものモッシュサークルが生まれ、ダイバーが次々と押し寄せるフロアは、ほんの数人の観客しかいないライブも経験した、20年前のKjが夢見た幸福な光景、だった。音楽と歌と時間を共に分かち合うライブという空間。それぞれの人生の喜びや悲しみ、ほころびやいろんなものを持ち寄り、ぶちまけて楽しむ唯一無二の場所。そんな自由な表現の場で、ダイヴやモッシュを禁止するのではなく、思いやりやマナーで誰もが楽しめる理想郷を作れたら……。下の人を蹴らないように両足を少し浮かせた体勢で転がるダイバーや、うまくダイブ出来ずに落ちた人がリフトしてくれた人に、「ごめんね」と謝る姿が目に入る。暴れることなく身体を揺らして各々楽しむ人もいる。大丈夫、Dragon Ashのライブスピリットはちゃんと伝わっている。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



「俺はロックバンドやロックが世界で一番大好きです。だから周りの人すべてに誇りを持ってるし、Dragon Ashが好きだと言ってくれる人たちが誇りを持てるように、これからもがんばります」
キラーチューン「Fantasista」で極限までフロアを煽った後、Kjがさらに言葉を続ける。
「俺たちはみんなに救われてきたので、願わくば、俺たちの曲やライブハウスという空間がみんなの支えになってくれたらいいなという思いで作った新曲です」

じっと聴き入るオーディエンスに披露されたのは、3月29日にリリースされるニューシングル「Beside You」。どんな時も彼らの音楽を糧に人生を歩むオーディエンスに捧げられた、Dragon Ashからの美しいラヴソングだ。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



最後に希望の歌、「光りの街」で本編を締めくくると、場内に「Viva! Viva! la revolution!」のコールが沸き起こる。ダンサーのATSUSHIとともにこの日のセットリストを作った桜井誠曰く、「いちばん最初に作った曲(「天使ノロック)で始まって、いちばん新しい曲で終わる」という流れに、20周年への思いを込めたという。何しろこの日・2月21日は、Dragon Ashがミニアルバム『The day dragged on』でデビューをした、まさに20周年目の始まりの日。一夜限りの記念日を共に祝いたいというファンの熱い思いも強く、会場の前には、「チケットを譲ってください」と書かれた紙を持つ多くのファンの姿が見受けられた。そんなファンの熱意を代弁するように、アンコールに応えてステージにメンバーが登場した途端、「HAPPY BIRTHDAY」のSEが流れ、ケーキや「20」の数字の金色のバルーン、ファンからのメッセージが書き込まれたフラッグを持ったファンクラブの代表メンバーがサプライズでステージに登場。「20周年は祝われたい」と発言していたドラムの桜井誠の要望を叶えるべく実現した企画だったそうだが、「俺はディナーショーをやってほしかった」と、桜井が無茶を言って場内の笑いを誘う。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



「一介のバンド人生では経験できないようなこととか、抱えきれないことを経験してきたバンドだと思いますけど、やめないでやってきてよかったなと思います」

かけがえのないメンバーやスタッフ、仲間の喪失。進化し続ける過程でぶち当たった、さまざまな悲しみや苦悩。幾多の音楽を飲み込み、パンク、ハードコア、ヒップホップ、ポストロック、ラテンなど、多彩なアプローチを重ねてきた軌跡。そのすべてを包括するようなKjの言葉に、フロアから大きな拍手と熱い歓声があがる。Dragon Ashの音楽と共に人生を歩んだすべての人にとって、貪欲なまでに革新し続けてきた彼らの姿勢、立ち止まるより前を向こう、どんな状況でも小さな光を見つけようと歌うその音楽は、想像以上に大きな糧になってきたに違いない。多分それはDragon Ash自身にとっても同じなのだ。それを確信するようにアンコールで披露されたのは、「運命共同体」。場内がまさにひとつになった温かな瞬間を惜しむように、「Curtain Call」の美しくも激しい音が最後に響くと、フロア中からオーディエンスの腕が力強く突き上がる。

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



「また20年後に会いましょう!」
BOTSがそう言ってスリップマットをフロアに投げ入れると、桜井も続ける。
「また今日が始まりですから。今年はガンガン行きますから!」
桜井の言葉を反映するように、メンバーが去った後、スクリーンに映し出されたのは約3年ぶりとなる大規模な全国ツアー『Dragon Ash Tour 2017』の告知だった。6月8日の東京、Zepp DiverCity TOKYOを皮切りに、10月3日の東京、Zepp Tokyoまで全国30カ所31公演がスタートする。3月29日にはニューシングル「Beside You」も発売。20周年目のDragon Ashがいよいよ走り出す!

取材・文/早川加奈子 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)

Dragon Ash 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)



セットリスト20th Anniversary Live Show 「MIX IT UP」Intro:Duodecimal Future
1 天使ノロック
2 Mix It Up
3 Headbang
4 For divers area
5 Walk with Dreams
6 繋がりSUNSET
7 Velvet Touch
8 TIME OF YOUR LIFE
9 Freedom
10 Ivory
11 few lights till night
12 Let yourself go, Let myself go
13 The Live
14 Amploud
15 百合の咲く場所で
16 Fantasista
17 Beside You
18 光りの街[ENCORE]19 運命共同体
20 Curtain Call
ツアー情報Dragon Ash Tour 20176/8(木) Zepp DiverCity
6/16(金) Zepp Nagoya
6/17(土) なんばHatch
6/22(木) いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
6/30(金) 仙台 PIT
7/2(日) 高松festhalle
7/3(月) 松山WstudioRED
7/5(水) 米子laughs
7/7(金) BLUE LIVE 広島
7/15(土) キッセイ文化ホール 中ホール
7/16(日) クロスランドおやべ
7/20(木) KBSホール
7/21(金) 福井県県民ホール
7/25(火) CLUB CITTA’
8/16(水) チキンジョージ
8/17(木) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
8/23(水) 岐阜club-G
8/24(木) Live House 浜松 窓枠
8/30(水) 周南 RISING HALL
8/31(木) DRUM LOGOS
9/2(土) KUMAMoTo B.9 V1
9/3(日) CAPARVO HALL
9/7(木) PENNY LANE24
9/8(金) PENNY LANE24
9/10(日) 帯広MEGA STONE
9/12(火) 石巻BLUE RESISTANS
9/13(水) 山形ミュージック昭和セッション
9/15(金) 青森Quarter
9/18(月・祝) 新潟LOTS
10/1(日) 桐生市市民文化会館 小ホール
10/3(火) Zepp Tokyo 
リリース情報20th Anniversary Single「Beside You」
2017年3月29日発売
【完全限定盤】CD+DVD : VIZL-1117 ¥2,980+ tax
30cm×30cmアナログLPサイズ豪華メモリアル・パッケージ 32ページ大型写真集封入 歴代ロゴステッカー封入
【期間限定盤】CD+DVD : VIZL-1118 ¥1,980+ tax
歴代ロゴステッカー封入  ※2017年12月までの出荷
【通常盤】CD : VICL-37251 ¥1,000+tax

<CD収録曲>
1.Beside You
2.Circle
<DVD/完全限定盤、期間限定盤>
「20 years of Dragon Ash 」 ・初商品化となる12曲にも及ぶライブ映像と、未公開の映像や資料もふんだんに盛り込んだバンドの核心に迫る初のヒストリービデオ。 100分を超える充実の映像作品で20年の活動を振り返る。
[収録曲] ・The Day dragged on / 1997.11.20 SHIBUYA ON AIR WEST ・Future / 1999.4.11 AKASAKA BLITZ ・Fever / 1999.4.11 AKASAKA BLITZ ・Cool Boarders / 1998.10.6 SHIBUYA CLUB QUATTRO ・Humanity / 1999.10.7 YOKOHAMA ARENA ・百合の咲く場所で / 2001.5.5 Tokyo Bay NK Hall ・Fantasista / 2003.11.23 Tokyo Bay NK Hall ・Scarlet Needle / 2005.11.25 YOKOHAMA BLITZ ・Fly / 2007.6.28 Zepp Tokyo ・Velvet Touch / 2009.5.8 Zepp Tokyo ・SLASH / 2011.4.22 Zepp Tokyo ・The Live / 2014.4.20 Ishinomaki Onepark

【配信情報】
iTunes Store、dヒッツほか主要配信サイトで同日配信開始予定

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