あえて「日本のヒップホップ、ソウル
」で勝負!カリスマアーティストLGY
ankeesが繰り出す新作から見えるその
意向は…

 そもそもロックしかり、フォークソングしかりと、”今さらそんな…”とも思われる話ではあるが、ヒップホップ、ソウルというとなおさらである。ヒップホップでは象徴的な表現方法であるラップのプレーは、プレーこそフリースタイルと呼ばれ、あらゆる思想や人種を巻き込んでいるようにも見えるが、その象徴的なイメージは、やはりアメリカの黒人音楽的なもの。様々な社会事情、生活事情を呑み込んでできたラップは、どんな表現を用いても”黒人のスタイル”を抜け切ることはできないようでもある。

 そんな宿命的な壁に、LGYankeesは様々な手法に向き合い、時にはあえて同化することで自分の表現、また日本的なイメージを訴えているように感じられる。


 その戦いの狼煙(のろし)ともいえるオープニングナンバー「Dui☆Dui(feat.大山愛未)」は、一見ヘヴィなヒップホップのサウンドを感じさせるものであるが、よくサウンドに注意を凝らすと、ハーモニーという部分では本場アメリカのヒップホップでは感じられない繊細な音使いが、ほんの隠し味程度に入っていることがわかるだろう。僅かなものであるが、実はこの僅かに見える差が、「和」を感じさせる要素として大きい存在感を持っている。

 また、詞の方でも「和の国」という文言をあえて入れて、歌を歌う者たちが、あくまで「和」に軸足を置くことを強調しているようでもある。一方で「Just do it 俺のスタイルで Just do it」は、そんな中でも某CMに何か刃を向けているような雰囲気も感じられてもして面白い。


 さらに 「恩返し(feat. Oh Yeah Yankee (a.k.a 大江裕))」で演歌歌手の大江裕を起用した部分は、ヒップホップサウンドに一石を投じる挑戦を行っているようにも見える。ヒップホップのファンキーなリズムに、ソウルフルなハーモニー、そして時に入ってくるラッププレー。しかしその中で大江の歌のメロディは、何かJ-POP的なイメージを織り込んでいるようでもある。

 この曲では「演歌」というジャンルにつきもののコブシなどを効かせた強い表現はあえて控えている大江だが、メロディそのものの効力もあれど、その歌い方はやはり日本語を強く感じさせるものでもあり、かつ日本で聴かれるJ-POPというジャンルで聴かれるサウンドにマッチするもの。それをあえてヒップホップ/ソウルというジャンルにぶつけているところは非常にユニークでもあり、かつちゃんと一つの聴かせられる作品に仕上がっており、新鮮な雰囲気も感じられる。


 同様に「7days diary(feat. Noa)」のような女性ボーカルのサウンドは、一件海外のソウルを感じさせるものの、よくよく聴きこめば「日本ならでは」のソウルメロディであることがわかるだろう。このアルバムに収録されている曲の歌メロは、ほとんどが絶対に本場のサウンドにはない。逆にJ-POPでは長く親しまれてきた雰囲気のスタイルである。そこにはあえて先陣へのリスペクトを払い、打ち壊すことを考えず、それでもまったく別のイメージを広げようとしている印象がある。「別のイメージ」とは、まさしくいうまでもない「日本的なイメージ」である。


 一方で「最後のワガママ feat. 8utterfly」や完全英語で海外仕様にも見える「Colorful Travel」などは、逆に「本場のサウンド」を意識した作りにも見える。そこには海外の「本物」サウンドへの敬意とともに、あえて「ヒップホップ/ソウル」という軸をずらさないというLGYankees自身の信念、意向も見えるようだ。この確固たる信念が感じられる作品は、これからこのジャンルがどのように面白くなっていくかを期待させるようでもあり、かつ一枚の「LGYankeesだからこそできる作品」であるとその存在価値を感じられるものといえる。

TEXT:桂伸也

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