瀬川あやか、酉年初ステージで見せた
満面の笑みと躍進への自信

終始笑顔を振りまいていた瀬川あやか

 歌手の瀬川あやかが13日、東京・渋谷eggmanでワンマンライブ『私なりの酉ックオア酉ートメント』をおこなった。ちなみに『私なりの酉ックオア酉ートメント』というライブタイトルは、ハロウィンでおなじみのキーワード「Trick or Treat」に、今年の干支である「酉(とり)」を掛けたもの。終始笑顔で観客とともに今年最初のライブを成功させた。また、3月に初のアルバム『Sega Wanderful』がリリースされることが明かされた。

ひと時も絶やさない笑顔

 北海道出身の瀬川は看護師と歌手の二足の草鞋を履く、少し変わり種のシンガーだが、その確かな歌唱力に裏付けられた広い表現力で頭角を現し、2016年にシングル「夢日和」でメジャーデビューを果たした。この日も、午前中はしっかりと看護師としての職務を果たした上で臨んだという瀬川。さらに新年で気持ちも新たに、これまで見せていたトレードマークともいえるツインテールの髪をバッサリと落とし登場。それもあってか「トリート」を「トリートメント」としたようだ。そんな瀬川の様々な思いが詰まったこの日のステージ。彼女を一目見ようと、寒さに満ちた東京の夜、開場前から多くの観衆が駆けつけ、入場口に列をなしていた。

 この週末のライブハウスは、1週間の忙しい日々を終えた安堵感を示すように、リラックスした空気を醸していた。多くの観衆がフロアに集まり“早く瀬川に会ってホッとしたい!”そんな思いが表情から見て取れた。やがて定刻を過ぎると、会場には暗転とともに瀬川のアカペラの歌が流れる。観衆はじっとそのメロディを聴いている。そしてそのメロディが終わると、ギターを抱えた瀬川が登場、流れるサウンドに合わせて観衆に「新年あけまして!」と挨拶。

気持ちを込め歌う瀬川あやか

 続いた曲の、頭の詞は「おめでとう」。8ビートのポップなナンバー「ハッピーハッピーバースデー」だ。会場は「親しい友人」に会った喜びに満ちあふれる。瀬川も、瀬川を見る観衆の表情も皆、笑顔で満たされていた。アクティブなビートが、さらにみんなの気持ちを高めていく。

 今までのイメージから、さらにアクティブでクールな雰囲気を加え、パワーアップするためにと、切り上げたヘアスタイルの意味を明かし、改めて2017年への意気込みを語る瀬川。序盤からそのアクティブな雰囲気そのままに、ひと時も絶えない笑顔で会場をさらに盛り上げていく。

 瀬川の伸びやかな歌声が、会場に心地よい空気を染み渡らせる。思いがはじけるほどに崩れた声ではない、かといってそのメロディにはたっぷりの情感が込められている。自身の持つ歌の間合いをしっかりと確保した中で、自由に伸び伸びと歌を表現する。常に観衆から目を離さず、この楽しいひと時を最大限に盛り上げる中、自らの表現も忘れない。パフォーマンスの中で、みんなが気づかないところまで行き届いた意識を見せる力量は、音楽だけにとどまらない生活を送る瀬川ならではのスキルともいえるだろう。

淡々と歌う中での表現の広さ

キーボードを奏でながら歌う瀬川あやか

 ひとしきり大きな盛り上がりを見せた前半から、中盤は一度クールダウンするように、「サンサーラ」からギタリストともにデュオ構成によるアコースティックなライブを展開。この曲はフジテレビ系のドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』のエンディング・テーマ曲として長年歌われている楽曲で、中孝介など様々なアーティストに歌い継がれている。「サンサーラ」とは、サンスクリット語で「輪廻」を意味する。大きな支持を得て今歌い続けている瀬川。このテーマは、そんな瀬川の運命の一部を表しているようでもある。

 他愛のない日常の風景や、そこから見える人の思いをイメージした楽曲が多い瀬川だが、その意味ではこの楽曲は一つのアクセントとなる。全般的にマイナーなハーモニーから、コーラスの末端でふっとメジャーキーになる、コードの進行に特徴があり、かつ感傷的な楽曲で、非常に情感がのりやすい楽曲だが、瀬川はどちらかというとあえて淡々と歌っているようにも見える。しかし、それがかえって歌に込められた情景や思いを深く表現しているように感じられた。

 それまで明るくポップな雰囲気を会場に振りまいていた瀬川だったが、「サンサーラ」「人魚のあした」と続くアコースティックなライブでは、対照的に楽曲の世界観を存分に披露。さらにバックバンドを戻しながら、2枚目のシングル曲「恋の知らせ」をピアノとともに披露。明るさの中にもちょっぴり切なさのあるスパイスを感じさせるなど、味わい深いセットを見せていく。

2017年の躍進を改めて誓う

2017年初ライブを成功させた瀬川あやか

 いよいよステージも後半、観衆との掛け合いが楽しい「せーのっ!」から、ステージもスパートをかけ始めた。サビの「いっせーのーせ!」という一節を、観衆とともに叫ぶように歌う瀬川。「いけー!」「まだまだいけるよ!」フロアから上がる声に感謝を抱きながらも、さらにあおっていく瀬川。

 さらに「Hight Five!」で湧き上がる手拍子に、会場はさらに熱を帯びていく。瀬川は「暑いね。お正月は北海道に帰っていたんだけど、本当に寒かったんですよー」と友達のように、観衆に語り掛けた。

 この日は瀬川から、3月に彼女としては初のアルバム『Sega Wanderful』がリリースされることが明かされた。その喜びにまた笑顔をあふれさせる瀬川は、さらにそのリリースへの期待を膨らませるように、収録曲の2曲「ベストフレンド」「妄想スニーカー」を披露、そしてラストは抱えていたギターを置き、星形のタンバリンを片手にビートのはじけるポップなナンバー「はりーあっぷ」を披露。

 ラストのサビで観衆との掛け合いをおこない、最高潮の盛り上がりを見せた。ステージは終わりの時を迎えた。さらに湧き上がるアンコールに応えて登場した瀬川は、キーボードでの弾き語りによるバラード「カレイドスコープ」、そして改めてバンドメンバーを呼び寄せ、ラストナンバー「The Brightest Woman」を披露し、盛大にステージを締めくくった。

瀬川は「本当にどうもありがとうございました! 2017年も瀬川あやかのこと、をどうかよろしくお願いいたします!」瀬川はこの日の礼とともに、変わらぬステージへの意欲を示した。

 アルバムのタイトルにある「wanderful」という言葉は誤植ではなく、「歩き回る」という意味の英語「wander」と、「wonderful」という単語を掛け合わせた造語であるという。さらに瀬川の英語表記を掛け合わせてできたこのアルバムタイトル。まさしく彼女の性格を感じさせてくれる、楽しそうな雰囲気のあるタイトルにも感じられる。幅広い表現力と、常に観衆を楽しませる気遣い。楽しく温かいステージを展開した彼女は、次にはどんなステージを披露してくれるだろう? 新たにリリースされるアルバムとともに、その動向には期待していきたい。(取材・桂伸也)

■セットリスト

瀬川あやか 新年初ワンライブ『私なりの酉ックオア酉ートメント』
2017/1/13 @渋谷eggman

01. ハッピーハッピーバースデー
02. マスカット
03. 夢日和
04. ロンリーガール
05. to the top
06. サンサーラ
07. 人魚のあした
08. 恋の知らせ
09. 「せーのっ!」
10. Hight Five!
11. ベストフレンド
12. 妄想スニーカー
13. はりーあっぷ

encore
EN01. カレイドスコープ
EN02. The Brightest Woman

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