1月15日@青山CAY

1月15日@青山CAY

マキタスポーツのソロライヴに竹原ピ
ストルが登場

マキタスポーツが3ヶ月に一度のペースで開催している名物ライヴシリーズ『LIVE@マキタスポーツ』が、1月15日に青山CAYで行なわれた。
ジャンル特定不能の活動を繰り広げるマキタスポーツが、自らの本拠地と考えている音楽でエンターテインメントを追求したステージと、多彩なスペシャルゲストを迎えることで毎回完売御礼の人気を博すこのライヴ。これまで、吉田山田、石崎ひゅーい、奇妙礼太郎、尾崎世界観(クリープハイプ)、YOU、ディーンフジオカ、鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)、藤巻亮太、Creepy Nuts(R-指定&DJ 松永)、島津亜矢と、マキタの広大な交友関係がうかがえる多彩なゲストを迎えてきた。

15日の最新のライヴでは、ゲストにミュージシャン・俳優の竹原ピストルが招かれた。音楽活動を精力的に繰り広げながら、つい先ごろ発表された2016年『第90回キネマ旬報ベストテン&個人賞』の助演男優賞にも選ばれた、実力派俳優の両面を併せ持つ竹原ピストルが、同じく俳優業と音楽活動両面で活躍を繰り広げるマキタスポーツとどのような化学反応を起こすか、注目のライヴとなった。

LIVE@のパートナー、ジミー岩崎のピアノにのせて、マキタスポーツが登場。冒頭、マキタが「お年玉代わりと言ってはなんですけど、マキタスポーツから、接吻を」というと、客席から笑いが沸き起こる。オリジナルラブの名曲「接吻」でライヴはしっとりとスタートした。田島貴男の歌マネではなく、マキタスポーツ自身の艶のある地声で歌い上げるセクシーな「接吻」で客席の集中力は瞬く間に増し、一気に静まりかえる。

続くMCでは、マキタの爆笑の近況ネタがやつぎはやに繰り出される。わけても、昨年末の紅白歌合戦について、マキタなりの批評性をもった感想を話しつつ、話題の先に上るのは、大竹しのぶのシャンソン。強いインパクトを持った大竹の歌唱に感化され、マキタはここで、昔作ったというシャンソン曲「クリスマスソング~シャンソン編~」を歌い始めた。突如、ここはシャンソン喫茶・銀巴里かと見まごうほどに、シャンソン歌手がマキタに憑依。強めのビブラートと酒焼けしたような低音の歌声で歌うのは、つれない男に翻弄される女の心模様と、その先の人間賛歌。なりきりシャンソン歌手のマキタが見事に歌い上げて客席を沸かせた。

続いてのコーナーは、2018年に芸歴20周年を迎えるマキタが、20年を振り返るというもの。 先日のNHK総合『スタジオパークからこんにちは』にマキタが出演した際、視聴者に「マキタスポーツは何者なのか?」とアンケートをとったところ、「役者」「お笑い芸人」「ミュージシャン」で、見事に30%ずつに割れたというマキタ。芸歴スタートからこれまでのジャンルカテゴリーわけ不能の活動の一端を、最近マキタ自身によって発見された昔の映像を公開しながら振り返る。 若きデビュー直後のマキタスポーツが展開していた、ここでは詳細が書けないほどの、あぶないお笑い音ネタ芸の数々で会場が戸惑いと爆笑に包まれる。先ほどのシャンソン同様に、さまざまなジャンル、さまざまなキャラクターのアーティストが憑依して、独特のマキタ音ネタキャラクターが醸成されるスタイルはデビューから不変であることがなによりわかる映像の数々であった。

当時のネタ曲から、下北沢のライヴハウスでであった不思議っ子系の女性アーティストにインスパイアされた「赤いキノコ」を披露。そして、前半最後は、最近のマキタが編み出した、洋楽の名曲を英語詞の語感を活かした独自の日本語詞を乗せるスタイルで歌唱する「Don't let me down~青春×人生~」。きいていると、まるで英語の歌詞のようにきこえるが、実は日本語という高度な解釈カバースタイルを披露して休憩に。

後半は、「長年このアーティストが大好きだった」というマキタの呼び込みで、ついに今回のスペシャルゲスト、竹原ピストルが登場。「顔のエイジング感、ユーズド感がすごい」という二人が並ぶと壮観な画ヅラだ。まずは名刺代わりとして、住友生命「1UP」のテレビCMとして有名な「よー、そこの若いの」を披露。MCの優しい語り口から一変して、濃厚なエネルギーに満ち溢れた力強い歌声が客席全体を魅了。続いて歌われたテレビ東京系列 ドラマ24『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』のエンディングテーマ「Forever Young」でも、のどから血が出るような全精力を声に込めた歌声が聴く者の耳を捉えてはなさない。

「声が銃刀法違反」とマキタなりの絶賛の辞を述べるマキタとMCを展開する竹原。先日、映画『永い言い訳』でキネマ旬報のベストテン助演男優賞を受賞した竹原に、以前同じようにブルーリボン賞を受賞したマキタから、賛辞を送られると竹原は「監督の言われたとおりにやっただけ」と謙遜する。 マキタスポーツと役者としての在り方が似通っている竹原に対して、嫉妬に似た感情を持っているマキタは、竹原の映画話を聞いてますます自分の危機感と憧憬の入り混じった名状しがたい気持ちを抱いたようだ。

続いて、マキタと竹原のデュオで、以前ラジオでも一緒に歌ったことがあるという、ビートたけし作詞作曲の「浅草キッド」を披露。ともにアーティスト&性格俳優の二人、それぞれの声の違いと共通性が浮き彫りになる印象深いステージとなった。

ふたたびマキタのソロがスタート。マキタ率いるビジュアル系バンド、マキタスポーツpresents Fly or Dieのアルバム「矛と盾」から、マキタ作曲&作詞による「ダーク・スター誕生」のピアノバージョン、さらに、マキタの別バンド「マキタ学級」のアルバムから「理想の女」をオーディエンスの手拍子とともに披露。

竹原とトークを展開していると、役者業をメインにすえているかのような錯覚に陥るが、マキタのソロでの歌唱パフォーマンスをみていると、まさに音楽をこよなく愛し、音楽で表現を重ねたい音楽エンターテイナーという側面こそがマキタの本丸であることがなにより伝わってくる。

アンコールでは、ふたたび竹原ピストルが登場。竹原が選んだというザ・ブルーハーツの「青空」と、「いつかこの曲をやるなら、かならず君とやりたかった」とマキタが選んだ「男たちのメロディ」の2曲を二人で披露。「青空」での二人のハモりの妙、そして「男たち」での、二人のキャラクターと絶妙にマッチした武骨な歌声。いずれもこの日最高のパフォーマンスをきかせて、会場から万雷の拍手を受けた。

アンコール最後は、マキタのモットーともいえる「おれの歌」をマキタ&ジミーで歌い終了。 LIVE@マキタスポーツは、まさにジャンル特定不能のマキタの多様な側面が現れる、濃厚マキタ印のステージだが、「誰だ? 誰だ? 俺の邪魔する奴は誰だ、おまえか、俺か」と歌われる「オレの歌」をききながら今日のライヴを振り返れば、このLIVE@は、マキタの自由な魂が最も現れたステージであることがありありと浮かんでくる。エンターテイナー、マキタスポーツは来年の芸歴20周年を前に、どのような新たな顔と声を見せてくれるか。次回のLIVE@マキタスポーツは4月9日に開催予定だ。
1月15日@青山CAY

OKMusic編集部

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