meg、芳醇な歌声と豪華ジャズサウン
ドで彩った10周年記念ライブ
メジャーデビュー10周年を迎えたジャズシンガーのmegが11月29日に、東京・銀座のジャズレストラン・No Birdで10周年記念ライブを開催。守屋純子(Pf)や近藤和彦(As)など豪華メンバーを迎え、「My Favorite Things」や「Spain」、デビューアルバム収録の「I Hear Music」などアンコール含め全14曲を、セクシーで芳醇な歌声で届けた。
ジャズシンガーmegの歴史の始まり「I Hear Music」で幕開け
銀座の街中にあるNo Birdはおしゃれな大人の空間。観客は食事や談笑をしながらステージの始まりを待ちわびているようだった。定刻を少々過ぎた頃、今回のバンドメンバーである守屋純子(pf)、中村健吾(Ba)、近藤和彦(As)、岡崎好朗(Tp)、佐野聡(Tb)、デニス・フレーゼ(Dr)の6人がステージに登場した。守屋のカウントからイントロダクションともいうべくジャズサウンドで観客を出迎えた。
臨場感あふれる演奏に導かれるように、megがゆっくりとステージに登場した。デビュー10周年を飾るオープニングナンバーは「I Hear Music」。デビューアルバム『Grace』の1曲目に収録されている楽曲だ。ジャズシンガーmegの歴史の始まりとも言える楽曲を10年を迎えた感謝と、喜びとともに歌い上げた。
メンバー紹介も兼ねたMCをおこない「My Favorite Things」を披露。観客は、この楽曲の持つ優雅なサウンドと歌に身を委ねるように聴き入る。3管によるハーモニーもゴージャスに響き渡った。「I Got Rhythm」ではベースの中村をフィーチャリングしたアレンジで、ピアノとドラムスのトリオ編成でまた違った趣のジャズサウンドを展開。そこの演奏の上に乗るmegの歌も少ない楽器編成のなかで力強い存在感を放っていた。
そして、ジャズ界の巨匠であるロン・カーターがプロデュースし、ニューヨークでレコーディングをおこなった4枚目のアルバム『Little Waltz』から「It’s Only A Paper Moon」を披露。そのなかで演奏したジャズピアニストのソロを、近藤のアレンジで3管で再現。軽快なリズムに心も踊るようだった。
さらに続けて「Over The Rainbow」を守屋のアレンジで届けた。ソロでは佐野がトロンボーンではなくハーモニカソロで聴かせる。ジャズならではの自由な発想のサプライズ演奏に驚きを隠せないmeg。ハーモニカの情緒あふれるフレーズで哀愁を漂わせた。ここでメジャーデビュー10周年のサプライズケーキもmegに送られた。火の灯った10本のキャンドルを吹き消し、訪れた観客とともに祝った。
誰もが耳にしたことがあるであろう名曲。優しく包み込むようなmegの歌声に観客も静かに耳を傾けていた。1stセットのラストはチック・コリアの名曲「Spain」。難解なメロディラインを言葉とともに紡いでゆくmeg。情熱的でスリリングな楽器陣の演奏も相まって、興奮の中1stセットを終えた。
大きな意味を持つ大切な曲「Christmas Rose」
2ndセットは、守屋純子アレンジによるCharles Mingusの「Nostalgia in Times Square」で幕を開けた。ここは日本ではないのではないか、と思わせるような世界観のある演奏と、ダイナミックなアレンジで、聴く者の高揚感を煽っていく。
再びmegがステージに登場し、届けたのは「I’ve Got You Under My Skin」。安らぎを与えてくれるような歌声と、何とも心地の良いリズム、グルーヴが会場に満ちていく。続いてはバリー・マニロウの「Copacabana」を披露。佐野によるアレンジで、ジャズテイストあふれるグルーヴとハーモニー、疾走感のあるベースが躍動感を演出。その上でmegは伸び伸びと歌う。
ここでmegのオリジナルから、押尾コータロー作曲、湯川れい子作詞の「Christmas Rose」を守屋とのデュオによるジャズアレンジで披露。「シンガーとしての人生で、常にこの曲が寄り添っていてくれた。私にとってかけがえのない、大きな意味を持つ大切な曲です」とこの曲への想いを語った。
情感を込めて歌うmegと引いては寄せる波のような守屋のピアノ演奏で、歌を鮮明に際立たせ、より楽曲の持つ感情がダイレクトに伝わってきた。ピアノを弾きながらも、megを家族のように見守る守屋の姿も印象に残る。
そして、ハワイの風を感じられる「Sophisticated Hula」へ。体が自然と動き出してしまうようなリズムに乗って、セクシーなmegの歌声がコントラストとなり、オリジナルとはまた違ったジャズアレンジによって優雅な空間を作り出していった。曲が終わるとmegは「次回までに振り付けをマスターしてきます!」と歌のみならず踊りもおこなっていきたいことを告げた。
本編ラストは、守屋とずっとやりたいと約束していたという楽曲で、コール・ポーター作曲の「It’s All Right With Me」を披露。megの低音が大地に根付くように会場に響き渡る。テンポも刻々と変化していき、スリリングでアグレッシブなアレンジに魅了される。ホーンセクションとピアノによる、コールアンドレスポンスとも言える掛け合いもエキサイティングに展開。ジャズの魅力満載の歌と演奏で本編を終了した。
アンコールを求める手拍子にmegは「皆さんと一緒に笑っていたいなと、この先はそんな時間を刻めるような活動と経験を積み重ねていきたいです。そんな時温かいお客様の励ましが力となってくれると思っています。これからも一歩一歩大切に、いろんなことに挑戦していきたいと思います」と抱負を語り、ナット・キング・コールの「L-O-V-E」を届けた。自然と笑顔になってしまう名曲とともに、ライブは大団円を迎えた。
ゴージャスな大人の空間で奏でられたジャズサウンドは、心を豊かにしてくれた。10年という一つの節目を迎えたmeg。ジャズシンガーとして15年、20年に向けて動き出した決意表明とも言えるライブであった。まだまだジャズシーンは一般からすれば間口は広くはない。しかし、megのようにジャズとポップスをハイブリッドで展開していくシンガーは貴重だ。ジャズの未来を、さらに切り開いていくきっかけにもなりうる存在だと確信した。(取材・村上順一)
セットリスト
meg 10周年記念ライブ 11月29日 銀座No Bird ▽1stセット ▽2ndセット Encore ▽メンバー |
ライブ情報
2017年1月30日(月) 東京・銀座 No Bird 「meg quest II ~「大丈夫」リリースライブ~」 新曲「大丈夫」を手掛けた有木氏と 『megの新世界探求』をテーマに様々な楽曲に挑戦するプログラムの第2弾。 出演:meg(vo) 有木竜郎(pf) 斎藤千穂(vln) 齋藤隆広(gt) 北村規夫(b) 足立浩(ds) music charge 4500yen(2ステージ合計) open 18:00 / 1st 19:30~ / 2nd 21:00~(入替なし) |