佐藤竹善、初のフルオケ公演 一夜限
りのプレミアムハーモニー

東京フィルハーモニー交響楽団をバックに熱唱する佐藤竹善(撮影・Ryota Mori)

東京フィルハーモニー交響楽団をバックに熱唱する佐藤竹善(撮影・Ryota Mori)

 SING LIKE TALKINGの佐藤竹善が11月24日に、東京・Bunkamuraオーチャードホールで『CORNERSTONES Symphonic Concert』をおこなった。1995年に始まった古今洋邦の名曲カバーシリーズ第6弾『My Symphonic Visions ~CORNERSTONES 6~ feat. 新日本フィルハーモニー交響楽団』の発売記念コンサート。指揮に大友直人氏、演奏に東京フィルハーモニー交響楽団、スペシャルゲストに平原綾香と村上佳佑、大儀見元(Per)を招いての豪華一夜。アンコールでは「Amazing Grace」をアカペラで披露するなど全16曲を圧巻の歌声と演奏で届け、2000人の観客からスタンディングオベーションをもって賛辞を受けた。

竹善さんは歌の神様

撮影・Ryota Mori

撮影・Ryota Mori

 この日は、11月の東京では54年ぶりに初雪が舞った。真冬並みの寒さに、会場までの道のりは白い息があがっていた。その先にある会場のBunkamuraオーチャードホールには、一夜限りのプレミアムコンサートを楽しもうと、既に2000人の観客で満たされていた。

 定刻通りに東京フィルハーモニー交響楽団がステージに登場。バイオリンの音色を基準に楽器陣がチューニングを合わせる。そして、指揮を務める大友直人氏と、ハットにステッキとジェントルマンな出で立ちの佐藤竹善が登場した。

 コンサートは、アルバムでもオープニングを飾るOne Directionの「Story Of My Life」で幕は開けた。オーケストラにアフリカンなパーカッションも加わり、リズミックに展開。そこに滑らかな佐藤竹善の歌声が乗り、訪れたオーディエンスを魅了していった。続いて、弦楽隊による力強い妖艶さを醸し出したMaroon 5のヒット曲「This Love」へ。マイナーキーの少し湿った空気間でガラっと雰囲気を変えた。

 MCでは「自分で生粋の雨男だとは知っていますが、まさか大雪に近い状態が11月に来るなんて…」と積雪について語り、「54年振りの出来事が起こるなんて、きっと今日は良いコンサートになるということですよ」と投げかけた。

 続いて、西部劇をイメージしたというアヴィーチーの「Hey Brother」。目を閉じれば荒野の風景が広がるダイナミックな演奏が体に響く。竹善の歌声も伸びやかに力強さを加えていった。その姿は荒野のガンマンのような存在感を放つ。

 そこから、TOTOの名曲「Africa」をゲストボーカルにアカペラ・グループ「A-Z(アズ)」のメイン・ボーカリストだった村上佳佑を招き、美しいハーモニーを聴かせる。村上のハイトーンボイスが突き抜けるように会場に響く。大地の雄大さをオーケストラの広がりのあるサウンドで表現。このスケール感はオーケストラならでは。

 一旦カバーを休み、竹善のオリジナルクリスマスソングである「Momento」を届けた。竹善の優しい甘い歌声に会場は一気に一足早いクリスマスの雰囲気に。続いて、カバーするにあたって、小田和正がプロデュースしてくれたオフコースの「生まれ来る子供たちのために」をオーケストラアレンジで届けた。優雅な演奏に楽曲の持つポテンンシャルをさらに引き出した。

 第1部の最後は白いドレス姿の平原綾香が登場。平原は今回のメンバーを見て「本当に素晴らしいメンバーで、私も真似したいぐらい」と話すと竹善が間髪入れず「その時は僕も呼んで」とアピール。さらに平原は「竹善さんは歌の神様だと思っているんです。一緒に歌っていても1人だけ声が飛び抜けているんです。同じマイクで同じ音量でも竹善さんだけピューと抜けていくんです」と竹善の声を絶賛した。

 そんな和やかな2人の空気感で届けたのは「I Need You」。壮大なオーケストラサウンドと、竹善と平原による何とも贅沢なハーモニーに酔いしれる。大きな愛を感じ取れた瞬間であった。

「Amazing Grace」をアカペラで披露

撮影・Ryota Mori

撮影・Ryota Mori

 第2部は「O Holy Night」でスタート。ジングルベルのメロディをモチーフにしたピアノが印象的に響く。そして、竹善の青春時代の曲だというChicagoの「Will You Still Love Me?」。「Chicagoでオーケストラに目覚めた人もいるんじゃないかな」とオリジナルのサウンドにも言及し、興味深いエピソードを語った。美しいメロディラインは竹善の歌声によって更に鮮明に輝きを放った。続いて、エド・シーランがホームレス時代に書いた楽曲「The A Team」を披露。切ない歌詞を叙情的に歌い上げる竹善。

 そして、12分を超える大曲「The Lost Treasure」と「Human」を披露。世界で活躍するパティシエ エス コヤマのオーナーシェフ小山進氏とのコラボレーションした楽曲。4種類のショコラをモチーフにし壮大な冒険ストーリーを組曲で表現した「The Lost Treasure」。オーケストラの躍動感とどこまでも広がっていく無限大の宇宙を感じさせた。見事な起承転結を持つ構成に長さは感じさせない。竹善の歌も抑揚と感情を乗せ様々なシーンを連想させた。

 そして、「素晴らしい出会いに曲を書くことが出来て、良い経験ができました。これをすぐにオーケストラと出来る機会が来るなんて夢にも思っていなかった」と自身もびっくりした様子をのぞかせ、「チャンスがあったらまたやりたいと思います。こんな時しかスーツは着ませんから」とユーモアを交え、オーケストラとの共演への意欲も見せた。

 ラストはくまモンの生みの親でもある小山薫堂氏に、校歌を作って欲しいと頼まれ制作したという「明日へ[For Kumamoto Version]」を濁りのない澄み切った歌声で届けた。風に乗って被災地の熊本まで届いていくかのような清々しい光あふれるサウンド。オーケストラとのラストを飾るに相応しい楽曲で本編を終えた。

 鳴り止まない拍手にステージに登場した佐藤竹善。アンコールに「Amazing Grace」をアカペラで披露した。その存在感のある歌声は2000人の観客の心を鷲掴みにした。一人の男が放つ歌はホールの隅々まで響き渡った。その圧巻の歌唱にスタンディングオベーションが巻き起こった。壮大なスケールで感動を届けてくれた一夜限りのプレミアムショーの幕は閉じた。

 初の試みとなったオーケストラとの共演は、聴くものの感情を揺さぶり続け、淀みのない佐藤竹善の歌声は高級スイーツのような満足感を与えてくれた。また巧みなトーク術もコンサートのアクセントになっていた。きっとこれをきっかけにオーケストラにも足を運ぶようになる人もいるだろう。バンドとはまた違ったサウンドスケープを魅せてくれたコンサートの次なる展開にも、嫌が応にも期待が高まってしまう。(取材・村上順一)

セットリスト

01.Story Of My Life(One Direction)
02.This Love(Maroon 5)
03.Against All Odds(フィル・コリンズ)
04.Hey Brother(アヴィーチー)
05.Africa(Toto)
06.Momento
07.生まれ来る子供たちのために
08.I Need You
09.O Holy Night
10.Will You Still Love Me?(Chicago)
11.The A Team(エド・シーラン)
12.Come On(ベン・ジェレン)
13.The Lost Treasure
14.Human
15.明日へ[For Kumamoto Version]
ENCORE
EN1.Amazing Grace

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