選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今回は秋が深まり紅葉も盛りの中、「イチョウ並木の散歩に似合う曲」です。

1.「パリの散歩道」/ ゲイリー・ムー

●ソチでもパリでも、優雅に。
2014年、ソチ・オリンピックで羽生結弦選手がショートプログラム過去最高得点を出した時に使われ、一気に知名度があがった曲です。北アイルランド出身のギタリスト、ゲイリー・ムーアは超絶技巧のテクニックもさる事ながら、「泣きのギター」と形容されるほど、感情に訴えかける演奏で魅了してきました。この曲は冒頭から一音ずつ下がっていくメロディーと”泣き”のギター奏法が、少しセンチメンタルな気分でゆっくり歩くパリの街路樹を思い起こさせます。
(選曲・文/麻布さやか)

2.「Autumn Childhood」/FOREST

●紅葉を眺めながら子供時代へトリップ
ブリティッシュ・フォークは秋にぴったり。のどかなメロディーが心を落ち着つかせてくれます。ご紹介する曲は「Autumn Childhood」。フォーク・グループ、フォレストが発表した1970年のアルバム『FULL CIRCLE』に収録されています。
12弦ギター、ハープシコード、マンドリンなどによる演奏はどこかモタモタしている印象。その理由は、ヒッピー集団である彼らが、時々で気に入った楽器を手に取って、ほろ酔い気分で演奏するスタイルなため。明日も明後日もお休みが続いていく。そんな彼らならではの「幼年期」はとにかくお気楽。イチョウの葉っぱを踏みながら、のんびり散歩が出来そう。
(選曲・文/旧一呉太良)

3.歌劇『セルセ』より「オンブラ・マイ
・フ」/米良美一

●降り注ぐマイナスイオンのなかで散策を
ヘンデル作曲のオペラアリアです。木陰が何より愛おしいという内容のこの曲、現在は単独で扱われ親しまれています。
歌唱は米良美一さん。透き通る美声が持ち味ですね。地上のもの全てを賛美するようにあたたかな表現をされています。並木の木陰と陽光の差した葉のコントラストがより鮮やかに映し出される情景が頭の中に広がります。
どうぞ深まる秋を、音楽と共にお楽しみください。
(選曲・文/山本陽子)

4.「街はたそがれ」/ルルルルズ

●黄金色の街路樹と恋人。理想の秋の景色が目に浮かぶ。
色づく街路樹の下で、トレンチコートのカップルが歩く。 映画のワンシーンような秋の景色が浮かんでくるのが、この曲。 インディーズバンドのルルルルズが歌う「街はたそがれ」です。 バンドサウンドにヴァイオリンの音色が美しく乗り、ヴォーカルのモミが繊細で美しい歌の世界をつくりあげます。 地方フェスやサーキットフェスに数多く出演し、 ファンを着実に増やしていく、ルルルルズ。 これからの活躍を期待されるバンドです。
(選曲・文/石井由紀子)

5.「もう一度あなたに会いたい」/ 林
明日香

●落ち葉を踏みしめる音も愛おしく感じる
CM音楽やドラマや多くのアーティストへの楽曲提供で活躍中の作曲家、市川淳による美しいメロディーが耳を離れない。イントロの弦楽器が木の葉を震わす優しい秋の風のようだ。この曲は歌手の林明日香が祖母を亡くした事をきっかけに作詞した曲。発売後、”大切な人を亡くしたくない想い”や”大切な人を亡くした想い”などリスナーからの手紙やメールが全国から多く寄せられ、その声を反映した曲名と同タイトルの本も出版された。冬へと向かう季節の移ろいの中、落ち葉を踏みしめ歩きながら、前向きに歩いていきたいという秘めた想いが心に沁みて来る。
(選曲・文/麻布さやか)
さて、お気に召した選曲はございましたか。
ぜひこれを機にCDやレコードなどの音源でも、各曲をお楽しみいただければ幸いです。
それでは、また次回♪

著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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