エンタメの今に切り込む新企画【ザ・
プロデューサーズ】第十回・☆Taku
Takahashi(m-flo, block.fm)



それが「The Producers(ザ・プロデューサーズ)」だ。編集長秤谷が、今話を聞きたい人にとにかく聞きたいことを聴きまくるインタビュー。そして現在のシーンを、裏側を聞き出す企画。

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音楽プロデューサーシリーズ第三弾は、意志あるラジオblock.fmも手掛ける、m-floの☆Taku Takahashi氏へと直撃した。ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――TAKUさんの音楽人生にとっての大きな影響は、やはりインターナショナルスクールに入ったことですか

意識はしていませんが、振り返ってみるとそうかもしれないです。でも元々親はインターナショナルスクールに入れて、音楽やらせようなどとは思っていませんでしたが、結果的に個人のユニークさを尊重してくれる校風だったので、そういうところが僕にとっては大きな影響を与えてくれたのだと思っています。最初に日本の学校に行って、それからインターナショナルスクールに行って、両方とも経験しているのですが、雰囲気が違うのは幼いながらも感じていました。それとタイミングもよくて、音楽をやっている人たちが周りにたくさんいて、実際プロになっている人達も僕らの世代は多いですし、そういったところでセントメリーズという学校に行ったことは大きかったと思います。

――当時、周りの友達でバンドを組んでいる人達も多かったんですか?

多かったですね。僕もVERBALとバンドをやっていましたし、先輩はMONARAL(モノラル)というバンドをやっていて、彼が僕に音楽を教えてくれました。オペラ歌手、劇団歌手、プロデューサーになった人もいます。

――多感な中学、高校時代は、どんな音楽を聴いていらっしゃったんですか?

リヴィング・カラーとかちょっと変わったハードロックにハマったり、それ以外はヒップホップ、R&B、ハウス、友達がこれいいよというものは、すごくモチベーションファクターになっていました。

――音楽で食って行こうと思ったのは何歳の時ですか?

大学2年の時から2年半ほどロサンゼルスに留学していたのですが、その時に日本の音楽が好きになって、当時の日本の音楽シーンはアシッドジャズのムーブメントがあって、UFOとかモンドグロッソというグループがいるよって友達が教えてくれて、ロスのニッチなレコード屋さんで日本のものを探したりしていました。ピチカート・ファイヴが売れていたり、その時に日本から生まれたカルチャーが面白いなと思い、帰国しました。親も音楽に対しては寛大で、帰国する理由として日本で音楽をやると言って、親を説得しました。その時はまだ若かった分、なめていたというか、日本で音楽で食えるだろうと思っていました。最初は日本のポップスってこういう感じで、アメリカはR&Bやヒップホップやダンスミュージックがあって、そういうテイストのものを取り入れたら、新しいものを作っていけるという妙な自信があって。でも世の中はそんなに甘くなくて(笑)、なので色々な経験、葛藤があってのm-floなんです。

――VERBALさんと一緒にやることになったきっかけは?

冬休みにVERBALが帰国した時に、僕のリミックス作品に参加してもらって、それまでは彼は別のグループでやっていたので、一緒にやり始めるまでに一年位かかりました。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――VERBALさんとTakuさんの目指す音楽の方向性は似ていたんですか?

いえ、全然違いました。今はもう少し近くなっていると思いますが、VERBALはディープなラップ音楽が好きで、僕もそういう曲を聴かせてもらいましたが、ちょっと違った方向の曲が好きで。彼は本当にアンダーグラウンドなもの、もっとアンダーグラウンドなものを掘っていましたね。そこから色々影響を受けているのだと思います。僕はあらゆる音楽を聴いていました。

――LISAさんを加え、m-floとしては最初はエイベックスのインディーズからリリースでしたよね?アンダーグラウンドシーンから出てきたという見え方でした。

そこは事務所社長、浅川さんの戦略だったと思います。いきなりポンとメジャーから出しても胡散臭いというか、社長は元々クラブでDJをやっていたので、アンダーグラウンドカルチャーのことを分かっていたからこそ、そういう出し方、見え方にしたのだと思います。僕らも元々メジャー願望というのはなくて…。音楽で結果を何か出すのが目標であって、インディーズ、メジャーというのはその結果のような捉え方でした。だからいまだにメジャーデビュー何周年といって、お祝いしてくれるのはありがたいのですが、どこかピントこないというか(笑)。

――(笑)。m-floはどんな戦略で音楽シーンに打って出て、どんな音楽を提示しようと最初話し合ったのですか?

LISAはR&Bが歌いたい、VERBALは今と全然違っていて、リアルなヒップホップじゃなきゃダメだという想いがすごく強くて、僕はメジャーシーンでポピュラーになるくらい、ヒップホップとR&Bを浸透させていきたいと思っていて、その中で自分が好きな音をどうやったら出せるか、という感じでした。

――m-floがデビューした98年は、ちょうどJ-POPシーンにもR&Bの潮流が出てきた時でした。

でも僕からするとトラックがJ-POPのトラックメーカーが作っていて、当時の3~4年前のアメリカの音色で、ちょっと古いなと思っていました。メロディとか歌いまわしは日本独特なものでも最高なんですが、トラックはやっぱり……と言いながらもあの時僕もハイクオリティなものが作れていませんでした。アメリカの最先端の音を取り込んだものを作りたくて、当時はとにもかくにもヒップホップとR&Bでしたが、途中でハウスやドラムンベースを聴くようになって、もう少しそういうテイストのものを入れてもいいかなという風に音楽性が変わっていきました。メジャーでリリースしたシングル2枚は、R&Bとヒップホップにこだわっていて、アルバムには色々な音楽のジャンルを入れ完成したのが1st『Planet Shining』です。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――斬新でした。

タイミング的にも、アンダーグラウンドで人気だったアシッドジャズが拡がっていって、そのミュージシャンがプロデューサーとしてメジャーのフィールドで出てくるようになったり、それこそMISIAさんや宇多田ヒカルさんという新しいアーティストが登場して、ユーザーもどんどん刺激を求めていた時代にデビューできたことが、大きかったと思います。

――やはりヒットチャートは気にしていましたか?

チャートの上の方に載るのは嬉しかったですが、当時はスタッフの皆さんに対して、本当にお疲れ様でしたという気持ちの方が大きかったです。

――ヒットチャートはスタッフの通信簿みたいな存在で。

そういう見方をしていました。てっぺんを目指すという事自体、そこには美徳もあると思いますが、僕の美学じゃなかったっていう。

――当時良質なクラブミュージックを、よりたくさんの人に紹介したい、聴かせたいという想いで音楽を作り続けていた感じですか?

その通りです。性格的に常にオプションがないとだめなんです。閉塞感が嫌で、だからオプションとしてこんな面白いものがあるんだよという事を、日本の人に教えたいという気持ちが強かったです。

――99年にメジャーデビューをして、どんどん注目が集まってきてm-floの音楽がより広く届いたというのは2001年のシングル「come again」ですか?

そうだと思います。でも何がクールだったかって、VERVALと二人で街を歩いていても電車に乗っていても、全く気づかれないという(笑)。でもそれはすごいいいことで、曲が一人歩きしてみんなの曲になったということなので。

――グループとしてそれまでの最大のヒット曲を出した翌年、LISAさんが脱退されますよね。これはグループの中ではどういう状況だったんですか?

2~3年前にLISAに「あの時は俺の事で怒って辞めたの?」って聞いたら「そうじゃない」と言っていました(笑)。当時結構僕とLISAは喧嘩していました(笑)。彼女はソロをやりたいと言っていまして、性格的に中途半端な事が嫌いな人だから、ソロをやるんだったら辞めるって言って。そういうところでは僕なんかよりもずっと男らしくてイサギいい。僕は去る者追わず的なところがあるので、仕方ないよねって話になりました。

――あの時はタイミング的にもビックリしました。

いや、僕もびっくりしましたよ(笑)。でもそれで、僕も元々プロデューサー志望だったので、プロデュースの方をいっぱいやればいいやって考え方になりました。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――LISAさんが抜けて、その後ボーカリストをフィーチャリングするLovesシリーズがスタートしますが、自分の動けるフィールドが広がったという感じですか?

本当に広がりました。僕は当時はグループを作るというのは手段でしかなくて、プロデューサーになりたかったんです。

――ボーカルがいないのであれば、その時気になっているボーカリストをフィーチャリングすればいいんじゃない?という感覚だったんですか?

そうですね。LISAが抜けた後も、m-floを解散すると言わなかったのは、ひょっとしたら一生解散しないかもしれないと思ったからです。例え辞めても解散発表しないかもしれませんね。僕だけの事ではないのでなんともいえませんが、だけど解散という言葉の意味があまりわからなくて。曲がある時は活動してるし、なかったら活動してないし。LISAが辞めると言ったのは、彼女はとにかく白黒はっきりつけないとダメな性格だと思います。

――Lovesシリーズがその後のフィーチャリングブームに繋がっていった気がします。

そうかもしれないですよね。そうだったら嬉しい。アルバム全体がフィーチャリングでしたから。今まで、そういうスタイルのものがなかったですし。

――ボーカリストはどういう感覚で選んでいたのですか?

基本的に、僕とVERBALとレコード会社のA&Rとで決めていました。声と話題性もちゃんと考えていたと思いますし、そのバランス、アルバムのパッケージとして面白くなって多様性がある、なおかつちゃんと売れるものにするという計算はしていました。だからボーカリストの知名度も考えていました。企画書には最初のイメージがクリスタル・ケイで2人目は忘れましたけど、3人目は宇多田ヒカルって書きました。宇多田ヒカルさんには全アルバムでラブコールしましたが、ダメでした(笑)。大好きなボーカリストで。プライベートで“m-flo loves HIKKIE”という缶バッヂを勝手に作って本人に渡したらつけてライブしてくれたのが嬉しかったです(笑)。

――TAKUさんとVERVALさんが色々なアーティストに興味を持ち、その逆のパターンもあったと思います。

そうですね。レコード会社のA&Rも色々アイディアを出してくれて、2004年に出したアルバム『ASTROMANTIC』では「坂本龍一さんとやってみませんか?」と言ってきて、本当にできるの?と思っていたらOKしていただけて実現したり、あとはたまたま見つけてきた人が良かったらどんどんやりました。CHEMISTRYは先方のA&Rから一緒にやりませんかと言ってもらいました。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――2005年にはm-flo loves Akiko Wadaとして「NHK紅白歌合戦」にも出場しています。

あれは全部アッコさんですよ。しかもアッコさんが白組から出場するということで注目を集めて。名誉ある体験をさせてもらえてありがたかったですし、親が一番喜んでくれました。

――当時と今では音楽業界も様相が一変していますが、TAKUさんはこれから音楽業界はどうなっていくと考えていますか?

もっと自分たちの過ごしやすい環境を作らなければいけないと思います。YouTube観れば済むじゃんとか、音楽わざわざ買わなくてもゲットできるじゃんとか、でも幸か不幸か日本人はそこまでインターネットリテラシーが高くないからまだ助けられていますが、ちょっと調べれば音楽なんかタダで見つけられちゃうじゃないですか。そういソフトウェアもあります。それを認めたくないという現実ではないでしょうか。マネタイズはどんどん難しくなっていくし、ライヴビジネスもやれば必ず千人入るという人も、少人数でも音で夢を見せるというストイックな感じは難しくなりそうだし、スポンサー付けるのも簡単ではないですし、今千人キャパの小屋ってないよねとか、そういう問題ばかりが見えてくる状況です。

――なるほど。

良いか悪いかは別として、昔はオリコンがありました。今もありますがバズの“目安”になっているかといえばそうでもなく、今はどこを目安にすればいいのかが分からないんです。今のオリコンの1位になっているものが、本当に顧客ニーズに応える目安になっているのか、iTunesチャートが目安になっているのかとか。実際、人の趣味も前より細分化されて、選択肢が増えているので、その中でその人の特性が何かというのを皆がデータとしてしっかり持ちつつ、そこに発信出来る、バズらせるものをしっかりと作らなければいけません。

――“本当に”ヒットしているものがわかりにくい状況ではありますよね。

結局キュレーションというのはある人の選択なので、だからそういうガイド的なものがないとダメだと思います。

――さっきおっしゃっていた、自分がやりたい事をやる環境をいかに作るかということのひとつがダンスミュージック総合サイト「block.fm」ですか?

そうですね。当時、民放のラジオ局でダンスミュージック専門番組がありませんでした。その間に世界では何が起こっているかというと、ダンスミュージックを起点としたモンスターイベントがたくさん立ち上がって、盛り上がりをみせていました。日本でもようやULTRAが定着してきましたが、当時は日本だけそういうムーヴメントがありませんでした。だったら自分で作ろうと思って、まずはネットでラジオ番組始めました。それがblock.fmです。その当時の海外のネットの世界では、ユーザーがどうやって手に入れるのか分からないのですが、リリース前の曲をゲットして、それをポストしてMP3で視聴出来て、その曲のレビューを素人のライター達がいっぱい書いていました。それが荒削りなんですが面白くて。どんどん面白い音楽が出てきているのを知ることができて、それが和訳されているのも当時はToo Many Sebastiansっていうブログサイトくらいでした。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――確かに

ダンスミュージックは目まぐるしく変化して、進化しているのですが、それをなかなか日本語で知ることができない、じゃあ自分でやっちゃおうということになって、MyspaceというSNSサービスを使って素性を明かさずに番組を始めたのが最初です。それから色々な人達と繋がっていって、じゃあちゃんとラジオステーションにしようと思って、色々な人達が集まってくれるblock.fmという形にしました。実際やってみると反響が大きくて、特に若い人たちのダンスミュージックを追い求める熱がダイレクトに伝わってきます。

――スタッフの方はやはり音楽業界経験者が多いのですか?

業界内からの移籍は1人もいません。今うちはラジオとニュースサイトをやっていますが、ラジオ制作経験も編集経験もなく、学びながらやっています。編集をやっている友達がいるので、その友達にレッスンしてもらったり、そうやって学んできました。

――TAKUさんが今一番注力してるのがblock.fmですか?

でも好きなもの、やりたい事が多いので(笑)。一番はやっぱり自分の音楽ですよ。すごく波があるんですよね。「なんか楽しくないな、でも仕事だし」という時と「すごい楽しいな」と思う時と。今すごく楽しい時期なので、一番注力しているのは音楽です。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――これからもプロデューサーとして自分の音楽を作りつつも、アーティストを発掘してプロデュースして世の中に出していこうという気持ちは変わらないですか?

そこまでコントロールしなくてもいいかなと思っていて。やっぱり昔とはルールが変わっているんです。今の人達は昔とは違う感覚を持っているので、彼らにそれを押し付けてもうまくいかないと思います。特にblock.fmをやり始めてから、若い人達、次の世代の人達の番組を作ったり、そういう人達と話しをする機会も増えていて、感じている事です。それは発信する側だけではなく、ユーザー側の特性もそうだし、だから彼らの作るものの、スタイルを活かしつつ、ただそのノウハウが今と違うとはいえ、昔使ったノウハウも、ポイントポイントで上手く変換すれば使えるものもいっぱいあると思います。それが何かとは具体的には言えないのですが、それをうまくフィットさせながらやっていきたいです。あとは縁ですよね。「TAKUさん何でもっとこれやらないんですか?」ということをよく言われて、そこで新しいことにチャレンジしたり、気づかされたり、縁を大切にしたいですよね。プロデュースって何だろうと改めて考えることもあります。

――人それぞれプロデュースの形、哲学があると思いますが、世の中に受け入れられるもの、本人が気づいていないその人の魅力を引き出すとか、そういうことでしょうか?

色々な形があると思いますが、一つ共通して言えるのは、昔よりボロが出やすいということだと思います。ユーザーの見方、聴き方、座組とかそういう部分に関しては厳しいというか、騙されないぞと構えているお客さんが増えている気がします。昔は、業界人が見たら明らかにやらせだとわかることも、でも素人にはわからないよねということが成立していました。今は、素人の人に見せてわからなくても、それで終わらくて、どこかの玄人がバラしてしまいます。素人もその知識をゲットするので、それを超越するものを作って夢を見させないといけない、というのが今の時代なんです。だからプロデューサーというのはチャレンジャーだと思います。僕も色々と知識を得るのは好きですし、これからもアンテナを張って色々な知識をゲットしたいと思っていますが、もっと頑張ってその知識を使って、何か形にしなければいけないと思っています。

――さきほど、やらなければいけない事がいっぱいあるとおっしゃっていましたが、他にTAKUさん的にマストな事は何ですか?

数字と肌感のリサーチです。やっぱり明治時代、咸臨丸がサンフランシスコへ行ったのは大きいと思うんですよ、的な。要はあらゆることにおいて、もうちょっとしっかり数値化するという体験、情報が圧倒的に足りないんですよ、日本って。例えば単純な話、アメリカのコミケ行って、何のコスプレが多かったかとか、二年前は「進撃の巨人」が多かったけど今年は「NARTO」だった、とか。そういう情報や例えば動員の数字、割合をもっと知るべきです。そこから何が見えてくるのかというと、アメリカのコミケのコスプレが全然新しくなっていないと。新しいカタログが全然浸透していないということが、そこでわかるじゃないですか。そういう感覚で、日本でも、若い人達の中にもバズっている人達がいたら、そういう人たちがどうやってバズっているのかを知っておきたい。興味がある一定の層がいて、盛り上がる。何でそうなるのか、そういう研究はもっとされてもいいと思います。

ザ・プロデューサーズ/第10回 ☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)

――やっている人もいるかもしれませんが、表層部分の知識しかない、興味がないという人も多いでしょうね。

例えば、NHKの番組で、海外に日本の音楽を紹介する『J-MELO』というプログラムがあって、そのプロデューサー・原田悦志さんと、東京芸術大学の毛利嘉孝教授が一緒に組んで、海外のビューワー達の動向、アンケートを発表する会というのがあります。もう4年くらいやっていますが、そこに呼ばれて行く機会が多くて、でもレコード会社の人がほとんど来ていないんです。そういうことなんですよ。もちろんそこのリソースにどのくらい価値を置いているか、というのもあるかもしれませんが。日本の音楽業界はもちろんみんな危機感を持っていると思いますが、でも一年後の事より、今日やらなければいけない事に追われている状況がずっと続いていて。CDが売れません、配信も売れません、その中で収入源がライヴになるのであれば会場を増やさなければいけない、だからそうなると海外にマーケットを広げるしかないですよね。でもまだケツに火がついてる感じが伝わってこないんですよね。、そういう中でもっと本気でやるのであれば、さっき出てきた研究会とかももっとみんなで一緒にやらないとダメだと思います。社員のモチベーションが上がらない、会社の体質というのも影響しているのかもしれませんね。

――アーティスト自身で制作も宣伝も出来る時代でもありますよね。

実際、レコードレーベルと契約せずに成功しているヒップホップのアーティストもいますし、とはいえ欧米のビッグなアーティストのように自家用ジェットまでは買えませんが、ある程度いい生活ができている人もいます。でも全部自分達で完結できる時代になってきていて、そういう意味ではメジャーもインディーズも垣根がなくなってきています。メジャーにいても宣伝費もかけてもらえず、MUSIC VIDEOも作れなかったり、だったらインディーズでよくない?と考える人が増えています。それは逆に全部自分でできて、自分の責任になるので、最高に面白いと思います。新しいアイディア、やり方が必要で、今の時代に肝心になってくるのがバズるポイントです。単純に「この展開何ビューありました」じゃダメなんですよね。この層に何ビューあったか、この層に何フォロアー来ましたとか、よりフィルタリングが求められる時代なってくると思います。

――狭いところに刺さる方が、結局バズりますもんね

そのバズりが大きくなると、日本ってお祭り好きな人が多いので「祭りやってる、行こう」って入ってきてくれます。でも厳密に言うと、その発想って実は30~40年前と変わらないですからね。その盛り上がり方がちょっとマスになりすぎていて、昔の感覚が鈍っているのかもしれません。その火の点け方は、それはまた技能だと思います。



編集・企画=秤谷建一郎  文=田中久勝  撮影=風間大洋


プロフィール☆Taku Takahashi​(m-flo, block.fm)
DJ、プロデューサー98年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやRemix制作も行う。「Incoming... TAKU Remix」で"beatport"の『beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS』を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。アニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」やドラマ・映画「信長協奏曲」、スクウェア・エニックスのゲーム「フィギュアヘッズ」のサウンドトラックも監修するなど活動の場を広げている。2012年からはLOUDの“DJ50/50”ランキング国内の部で3年連続1位を獲得するなど、日本を牽引する存在としてTOP DJの仲間入りを果たした。また、自身が立ち上げた日本初のダンスミュージック専門インターネットラジオ「block.fm」は開局5周年を迎え、新たな音楽ムーブメントの起点となっている。

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