星野みちるインタビュー「皆が驚くよ
うなカバーアルバム」セルフ全曲解説

 豪華アレンジャー&ミュージシャンを迎えた本作は、曲ごとに全く違ったアレンジを施した万華鏡のようなアルバムで、星野みちるの歌唱法もより多彩さを増している。そこで彼女に『マイ・フェイバリット・ソングス』全曲解説インタビューを敢行した。――カバーアルバムのお話は、いつ頃からあったんですか。

星野 何年も前から、はせさんと「いつか皆が驚くようなカバーアルバムをやりたいね」というお話はしていて。そのためには、まずオリジナル曲で土台というか経験を積んだほうがいいだろうと。それで今年に入って「時が来た!」と(笑)。

――選曲はどうやって進めたんですか。

星野 私が昔から松田聖子さんや杏里さんの曲が好きだからやりたいって話を漠然として、その中から2、3曲を私が挙げて。はせさんの中でパッとアレンジが浮かんだ曲を選びました。たとえば松田聖子さんの「天国のキッス」だったら、WACK WACK RHYTHM BANDをバックに歌ったら良いんじゃない? とか。逆にはせさんがアーティストさんの中から幾つか曲を挙げて、私が1曲選ぶこともありました。

――1曲ずつお話を伺っていきたいんですが、1曲目の「私がオバさんになっても」はライブで歌ったことがありますよね。

星野 今年2月にSAWAさん主催の「サワオケ大会」で歌いました。リアルタイムで聴いていた訳じゃないんですけど、ずいぶん後になって動画で森高千里さんを観て。こんなにお顔も髪も脚も綺麗で、色気があって可愛いから、曲にも興味を持って。それで「私がオバさんになっても」を好きになったんです。ファンの方から「声が似ているから、すごく合ってる」って言われました。原曲よりもテンポが少し早い楽しい曲です。

――2曲目は「ずっと一緒さ」です。

星野 はせさんから山下達郎さんの曲でどれがいいかって大量の候補をもらったんです。その中から「ずっと一緒さ」はドラマ『薔薇のない花屋』で知って、一番好きな曲だったので選びました。

――山下達郎さんの曲は難易度が高いですよね。

星野 キーも上から下まで広いし、本当に難しかったです。リズムもガラッと変わっているので苦労しました。

――3曲目の「SWEET 19 BLUES」はリアルタイムで聴いていたんじゃないですか。

星野 そうですね。小学生の頃からTKサウンドにどっぷりハマっていました。それを、はせさんも知っていたので、何か1曲やらないかってことで「SWEET 19 BLUES」が候補に挙がって。その時点で、はせさんの中で「ピアノがあって、真城めぐみさんにコーラスを入れてもらって」って具体的にアレンジが浮かんでいましたね。ただ最初にいただいたデモが全く原曲と違うので、「できません」って言ってモヤモヤしていたんですよ。でも、そこに安部潤さんのピアノが入ったら、めちゃくちゃカッコ良くて大好きになりました。

――4曲目の「SUMMER CANDLES」は杏里さんの曲です。

星野 VIVID SOUNDに入る前にMichiru名義で『Bitter&Sweet』というアコースティックのミニアルバムを出したんですけど、それも全編カバー曲で。その時も「オリビアを聴きながら」をカバーしたぐらい、杏里さんの歌声が好きだったんですよ。

――いつ頃から杏里さんは聴いていたんですか。

星野 高校時代からです。当時、懐メロって感じで杏里さんやテレサテンさんがクラスで流行ったんですよ。「つぐない」とかカラオケで歌っていました(笑)。ただ「SUMMER CANDLES」はキーが高くて難しいんですよ。杏里さんが歌うと心に沁み渡るように深いんですけど、私が歌うとペラペラで切ない雰囲気も足りないんじゃないかなと思って、大人っぽく歌うように意識しました。

――5曲目はインドネシアのバンド・イックバル(ikkubaru)の「Love Me Again」です。日本のシティ・ポップに多大なる影響を受けたバンドで、日本での人気も高いですが、星野さんは昨年の初来日の時にライブで共演したんですよね。

星野 会う度にフロントマンのMuhammad Iqbalさんは日本語が上手くなっていくんですよ。最初に会った時は「よろしく」「ありがとう」ぐらいだったのに、次に会った時は早くも上達していて、こないだ会った時は「みちるちゃんはコーヒー好き?」みたいな感じで、「これ僕の好きなやつだから」ってコーヒーをくれました(笑)。フェイスブックでも日本語で記事を書いていますからね。

――レコーディングはどんな感じで進行したんですか。

星野 先にキーだけ伝えて、インドネシアで演奏してもらって、あとはデータのやり取りでした。

――日本のバンドとは何か違いましたか。

星野 インドネシアの音がしました。

――本当ですか(笑)。

星野 何か違う気がします(笑)。

――レコーディングで苦労した点はありますか。

星野 私は英語の発音が苦手なので、歌っているとスタッフさんからクスクスって笑い声が起きました。あとコーラスが多重で入っているので、音を取るのが大変でしたね。

――6曲目の「愛しのロージー」は松尾清憲さんのカバーですが、この曲も収録されたシングル「MY TINY WORLD」では松尾さんとデュエットしています。ライブでも披露したことがありますが、松尾さんと歌った感想はいかがですか。

星野 優しく包み込んでくれるような歌声でした。でも大御所だから、失礼にあたらないようにしっかりしなきゃって緊張しました。すごく松尾さんはパワフルで優しくてカッコ良い方ですね。

――「愛しのロージー」も英詞が多いですよね。

星野 松尾さんは発音が良いから、それをレコーディングで真似たら、やっぱりクスクスってなりました(笑)。

――作詞は秋元康さんです。

星野 そうなんですよ! 松尾さんと共通点があって嬉しかったです。

――7曲目はEPOさんの「土曜の夜はパラダイス」です。

星野 それまでEPOさんは聴いたことがなくて、いろんな曲をはせさんから渡されて聴いたんですけど、すごく大好きになりました。その中でも華やかで、ライブで歌ったらパッとするだろうなってことで「土曜の夜はパラダイス」を選びました。

――8曲目は先ほどもお話に出た「天国のキッス」。松田聖子さんは小さい頃から聴いていたんですか。

星野 聖子さんを聴くようになったのも大人になってからです。「懐かしの」みたいな番組で当時の映像を観て、すごい声が綺麗で可愛くて、素敵な曲をたくさん歌っているから大好きになりました。この曲はWACK WACK RHYTHM BANDさんのレコーディングも観させていただいたんです。

――生で演奏を観ると気持ちも変わりますか。

星野 こうやってリズムが入ってくるんだとか、だんだん音が重なってくるんだとか過程が分かるから興奮して、より楽しくレコーディングができますね。

――9月23日に代官山UNITで開催する西恵利香さんとの共催イベント「星野みちるの黄昏流星群 Vol.5」でも、WACK WACK RHYTHM BANDのメンバーを中心にした流れ星楽団をバックに歌うんですよね。

星野 WACK WACK RHYTHM BANDとは何度か共演させていただいているんですけど、バンドはすごい迫力があって、ドンと始まった瞬間に空気がガラッと変わって、お客さんの顔もパッと明るくなって、その瞬間が大好きです。音が大きいので、いつもより声も張らなきゃいけないですけどね。あとアドリブでギターの山下洋さんが前に出てくるとか、そこもバンドならではですね。そういえば前に山下さんが前に出てきて、ギターのケーブルが抜けたこともありました(笑)。

――9曲目の「恋するフォーチュンクッキー」はThe Scootersとの共演です。

星野 WACK WACK RHYTHM BANDとはグルーブなども違った雰囲気で、The Scootersならではの音がしますよね。

――この選曲は星野さんですか。

星野 もともとThe Scootersがライブでやっていたんですよ。

――古巣であるAKB48の楽曲はチェックしているんですか。

星野 してないですね(笑)。ここ数年、アイドルブームでいっぱいアイドルがいるじゃないですか。なので制服風の衣装を着ていると、何を観てもAKBの系列かなって思っちゃうんですよ。ただ「恋するフォーチュンクッキー」は、すごく盛り上がっていたのでテレビで聴いていました。

――ラストを飾る10曲目の「ひとつだけ」は矢野顕子さんの楽曲ですが、こちらの選曲は?

星野 はせさんですね。あまり矢野顕子さんも聴いたことがなかったんですけど、この曲は聴き覚えがありました。幾つかライブ映像を観た時に、同じ曲でもライブによって歌い方もアレンジも全部違うんですよ。どれを参考にしていいのか分からないぐらいだったんですけど、すごくカッコ良かったですね。「ひとつだけ」はVIVID SOUNDの皆が好きな曲で、「曲のイメージを壊さないで」とすごくプレッシャーをかけられました(笑)。

――『マイ・フェイバリット・ソングス』を通して聴いてみて、改めてどんな印象ですか。

星野 それぞれ曲によってアレンジが違うので、どれも新鮮に聴こえますね。正直、カバーアルバムって原曲があるから叩かれるかなって不安もあったんですよ。でもファンの方やネットの反応を見ると新しいアレンジも好評で嬉しかったです。

――「星野みちるの黄昏流星群 Vol.5」でも、このアルバムの曲はやるんですか。

星野 はい。流れ星楽団でもオケでもやります。

――他に大きな見所は何ですか。

星野 ゲストの方と一緒に寸劇をやります。VIVID SOUNDのスタジオでやっている定期公演で、一人寸劇を最近やっているんですけど、あそこだから許されている気がするんですよ。大きな会場でやるのは不安だし、皆さんキョトンとすると思いますよ(笑)。ただ今回はゲストの皆さんも参加してくれるので楽しみですね。

(取材・文=猪口貴裕/写真=石川真魚)■星野みちるカバーアルバム 『マイ・フェイバリット・ソングス』
発売日:2016年9月7日
品番:HCCD9577
価格:2,500円(税抜)

■VIVID SOUND Presents 「星野みちるの黄昏流星群 Vol.5」
日時:9/23(金)OPEN17:00 START18:00(Openg Actは17:50~)
場所:代官山UNIT
LIVE : 星野みちる SPECIAL
GUEST:西恵利香 まなみのりさ 脇田もなり
チケット: 一般 4,000円、昼夜通し券 6,000円(ドリンク別)※ 再入場不可

前売りチケット(プレイガイド)
ローチケHMV(http://l-tike.com/ Lコード:72180)
e(http://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050001P002199720P0030001P0006

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