「誰かの無事を祈らずにいられない時
、WISH(「希望」〜「祈り」〜「願い
」)を感じる曲」
熊本県(九州地方)にて、大きな震災が発生しました。
現地の復興調査のために現地に入る機会を得ましたが、毎日、毎時間のように地震は続き、それは、慣れるようなものではなく、恐怖の連続です。命は取り留めたものの、いつまで続くかわからない避難生活、倒壊した家や仕事の今後に思いをはせるとき、希望という言葉は、今、ここでは安易に聞くことはできないほどに疲弊しています。とはいえ、誰もが、同時に思うことは、希望を失ってはいけないということ。まずは、目の前の困難を一つ一つ乗り越えなくてはと、人は文字通り手を取り合って進もうとしています。
今回はクラシックからテレビドラマや映画やCMで使われて耳なじみのある「希望」「祈り」「願い」を感じる曲をご紹介します。
1.「Hail Holy Queen」/ 聖歌
崇高的な讃美歌をまずは披露(合唱)し、そのあとにゴスペル風の軽快で親しみやすいリズムにのって、人の心をつかむ合唱シーンには、誰もがひきつけられました。
映画のそのシーンを彷彿とさせる合唱隊の演奏をご紹介します。讃美歌的な合唱ではじまり、後半はゴスペル風に美しく歌い上げています。しかも、伴奏等はなく、アカペラでのコーラスです。タイトルの「Queen」とは、聖母マリアのこととされています。
タイトルを訳すと、「素晴らしき聖母マリア」という感じでしょうか。敬虔な気持ちになります。
2.「レクイエム」/ ヴェルディ
冒頭の印象的な部分を多く耳にすると思いますが、是非全曲聴いていただければと思います。ヴェルディが、小説「いいなずけ」で著名なイタリアの文豪、アレッサンドロ・マンゾーニの死を悼んで作られた曲ですが、この曲には「怒りの日」という題目がついています。天災など、怒りをどこにぶつけていいか分からない時があります。行き場のない怒りといつ解き放たれるか分からない恐怖、恐怖を乗り越え、平穏が訪れる事を強く願わずにいられません。
3.「カルミナ・ブラーナ」/ カール・
オルフ
この曲は、スポーツ選手の入場時やテレビドラマ「相棒」など、特に有名な「おお、運命の女神よ」の部分は、映画、バラエティ、CMなどでも多く使われているので、どこかで聴いた方は多いと思います。
(このアルバムには、他にもクラシックの名曲がさりげなく入っています。)
どちらの楽曲も運命は自ら切り開いていけるというメッセージを感じます。
4.「弦楽セレナーデ」より第1楽章 /
チャイコフスキー
冒頭の短調的な序奏には重苦しい雰囲気を感じながら、その後に続く明るくて未来の開ける展開は、未来への希望を予感させ、やさしくも、情熱的なエンディングへと続きます。
5.「第九」(ベートーベン:交響曲第9
番「合唱」付き)/ ベートーベン
人々は楽園というものを追い求めるものかも知れませんが、楽園は追い求めるのではなく、自ら切り開いていくもの、そしてそれは一人だけではなく、みんなの手で!
そのようなものを、この「第九」合唱曲から感じずにはいられません。
第九は、1時間を超える曲ではありますが、今回は誰もが聞いた事のある有名な部分を、ベルリンフィルの公式サイトからの動画でご紹介します。
そして、被災された人に、心からのお見舞いと、未来への復興をお祈り申し上あげます。
(選曲・文/堀川将史)
著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会