ゲスの極み乙女。が“私以外”を入れ
る『私以外私じゃないの』

マイナンバーカードのアピールで甘利大臣が歌ったこともこの曲にとっては大きい出来事。まさか経済再生相の口からこの歌が出てくるとは誰も思わず、ちょっとした驚きと共にその様子が報道されました。
“私以外私じゃないの 当たり前だけどね
だから報われない気持ちも整理して 生きていたいの 普通でしょう?”
「私以外私じゃないの 当たり前だけどね だから報われない気持ちも整理して 生きていたいの 普通でしょう?」と歌う印象的なサビ。CMでも使われていた箇所で大臣が歌ったフレーズです。「自分は自分でしかないという事実」を受け入れる歌詞内容。川谷絵音が裏声で歌うメロディが耳に残ります。
コーラスを入れている曲です。MVで歌舞伎メイクをしている女性もコーラスの人。2番はコーラスとの掛け合いになる、あえて「私以外」を入れている構成。ゲスの極み乙女。は毎回コーラスの入れ方が巧みですが、今作は特に意識してコーラスを入れています。
“殻を破った気になってる誰かの声がしたけど
殻にこもったはずだった私はもうそこにはいない
私になってみてよ,ねえ 私になってみたいんでしょ?
声にならない言葉で自分が煙に巻かれた”
ここの掛け合いは歌詞がコーラスとボーカルで対照的になっている構成。
「殻を破った気になってる」というコーラスの声。コーラスの声は基本的に内なる自分を表しています。「誰かの声がしたけど」とボーカルの声で続くことからもそれが分かります。「誰かの声」というのは、自分以外の誰かと解釈することもできますが、この曲の場合は自分が普段意識していない自分。
「殻にこもったはずだった」ここで先の「殻を破った」という歌詞とは正反対の展開のコーラス。「私はもうそこにはいない」とさらにボーカルで否定する展開が続きます。これは自問自答している歌詞。自分自身は殻を破った気になったり、殻にこもったつもりだったりするものの、私は結局私でしかない、変わらない。このあたりの一連のフレーズは、まさに自分の内なる声と自問自答を繰り返しているんですね。
あえて自分以外の声=コーラスを入れることで、曲のもつメッセージを分かりやすくしているこの曲。人は自分以外の人間になることはできません。それは当たり前のようなことだけれど、この曲のようにアレンジや歌詞を凝ることで、よりその事実が鮮明になります。そして「自分自身を認めよう」という気持ちが、聴き手の潜在意識に芽生えるんですね。
川谷絵音は今回は分かりやすくアレンジを工夫したと言っています。アレンジを凝りつつも、ポップさを失わない絶妙なバランスを心掛けたという曲。バンド名だけでもなめられるという絵音。曲でその熱い音楽に対する思いをぶつけてきます。歌詞にそっていうならば、ゲス以外ゲスじゃない。この曲のタイトルは、そんなゲスの極み乙女。というバンドが自分たちしかできない音楽、自分たちだからこそできる曲を提供する意味合いが含まれています。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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