【インタビュー】SEAMO、オールドスクールな音作りと自伝リリックを多く含む優れたヒップホップアルバム『Wave My Flag』
山あり谷ありという言葉では語りつくせない、これは一人のラッパーの15年間の人生の物語。SEAMOデビュー15周年記念アルバム『Wave My Flag』は、オールドスクールな音作りと自伝リリックを多く含む優れたヒップホップ・アルバムであり、SEAMOが未だに夢を追い続けるヒーローであることを強く印象付ける快作だ。同じ時代を生きた人間ならば涙なしには聴けない「大人になりました」を筆頭に、生きるヒントを散りばめたリリックに、SEAMOらしいユーモアとジョークも添えて、聴き終えるとなぜか力が湧いてくる全12曲。2019年の今、SEAMOはビンビンに生きている。もう一度SEAMOを聴こう。
■40代にならないと書けないこともある
■ちゃんと自分らしいもので勝負していきたいと思います
──15周年の新作『Wave My Flag』は今年2枚目のアルバム。すごいハイペースですね。
SEAMO:そうなんですよ。そういえば今年1枚出してたよなって。
──急遽こうなったんですか。
SEAMO:2月に『Glory』を出した時には、15周年といっても厳密には来年の3月なので、あんまりそういうことは考えていなかったんですけど、そのあとアリオラジャパンで出しましょうという話をいただいた時に、「15周年のメモリアルな1枚にしましょう」と。最初はミニアルバムでいいという話だったんですけど、数えてみたらアルバムは10枚目だったんですよ。恐ろしいことに、誰も気づいてなかったんですけど(笑)。僕が自分でホームページを見て数えて、フルアルバムが10枚目になることに気づいて、これはめでたいと。「15周年で10枚目のアルバム!」と言いたいなと思って、フルアルバムのボリュームまで頑張って行きましたね。
──なるほど。そんな経緯が。
SEAMO:アルバム10枚って、ヒップホップに限らず、ソロでやってるアーティストにはすごく誇らしいことなんです。ラップ業界を見渡しても、メジャーフィールドで10枚にたどり着いた人はほとんどいない。それはすごく誇っていいことだし、コツコツやってきた賜物だなとは思いますね。ただお手本が限りなく少なくなってくるので、ラップを生業にするミュージシャンとしては未知の領域に入ってきてるとは思います。
──確かに。
SEAMO:たとえば、歌ってる時に次の歌詞が思い出せなくて、でも体が覚えてるから口が先に出るんですよ。リリックが出たあとに「そうだ、これだった」という不思議な状況があって、確実に老いを感じているというか(笑)。詰め込むよりは小節をゆったり取ってラップしたり、若い時みたいにまくしたてる高速ラップがどうだとか、そういうものではなくなってくるかもしれないです。そこで、より老獪な技術や味というか、リリックの内容もそうで、たとえば「大人になりました」という曲では、10代、20代、30代、40代と歌っている。それはもちろん40代にならないと書けないことでもあるので、そういうふうにちゃんと自分らしいもので勝負していきたいなと思いますね。