ザ・ウォールフラワーズの『ブリンギング・ダウン・ザ・ホース』は90sルーツロックの一つの到達点となった傑作
ルーツロックは文字通り、ブルースやカントリーなどのアメリカンルーツ音楽に根ざしたロックのことである。そもそも50年代に登場したロックンロールという音楽自体がブルースやR&B、カントリーのフュージョンであるだけに、なぜルーツロックと呼ぶのかは、若い人にはなかなか分かりにくいかもしれない。60年代の中頃になると、ロックはどんどん進化しルーツ的なロックは影を潜め、サイケデリック、プログレ、ハードロックなど、新しいロックのスタイルが次々と現れるようになる。それらの多くは“ロック”そのものに影響されていることで、ロックの原点が見えにくくなってしまっていたのだが、ザ・バンドやデラニー&ボニーといったグループはR&Bやカントリーなどをモチーフにした先祖返り的(もちろん先進性は兼ね備えている)なサウンドであったにもかかわらず多くのファンを獲得する。彼らはカントリーロックやスワンプロックの先駆けとなり、彼らに影響を受けた後進のアーティストのサウンドをルーツロックと呼ぶようになったのである。アメリカではルーツロックはいつの時代にも繰り返し再生されている。今回取り上げるウォールフラワーズは、ジェイコブ・ディラン率いる90sを代表するルーツロックグループのひとつで、本作『ブリンギング・ダウン・ザ・ホース』は名曲満載の傑作である。