スティングの『ブリング・オン・ザ・ナイト』は、パンク以降のロックが進むべき道を示したライヴ盤
一流ミュージシャンが集まっているくせに、偽パンクロッカーとしてデビューしたポリスのすごさは未だに忘れられないが、ソロになったスティングのすごさもまた忘れられないものである。特にソロデビュー時の畳み掛けというか、次々に繰り出す彼の新しい試みは、新たなロックへの指針に満ちあふれていた。今回紹介する2枚組のライヴ盤『ブリング・オン・ザ・ナイト』は、スティングが新進気鋭の若手ジャズミュージシャンたちとともに、フュージョン的な要素は極力排除したまったく新しいスタイルのロックを提示してみせた名作である。これほどハイレベルのライヴパフォーマンスは、21世紀になった現在でも滅多にないと言っていいだろう。アーティストとしてのスティングの才能が最も輝いていた時代の、ロック史に残る偉大なドキュメントである。