『南から来た十字軍』はルーラルで骨太のフュージョンを提示したクルセイダーズの傑作
一般的にフュージョン黎明期とされる70年代中期は、傑作が多くリリースされた年だ。ジョージ・ベンソンの『ブリージン』(‘76)をはじめ、リー・リトナー『キャプテン・フィンガーズ』(’77)と『ジェントル・ソウツ』(‘77)、マイケル・フランクス『スリーピング・ジプシー』(’77)、アル・ジャロウ『グロウ』(‘76)、アール・クルー『リビング・インサイド・ユア・ラブ』(‘76)、ウェザー・リポート『ヘヴィ・ウェザー』(’76)、ジャコ・パストリアス『ジャコ・パストリアス』(‘76)など、どれもお洒落で都会の夜が似合う名盤たちである。これらのアルバムと同時期にリリースされたのが、スタッフの『スタッフ』とクルセイダーズの『南から来た十字軍(原題:Those Southern Knights)』で、どちらも76年のリリースだ。同じフュージョンでもスタッフとクルセイダーズはあまり都会的ではない。どちらかと言えば、南部的ないなたさが感じられる汗臭いサウンドが売りであったが、特に今回紹介する『南から来た十字軍』は、泥臭いヘヴィ級のリズムセクションに対して、繊細で洒脱なギターとエレクトリックピアノのインタープレイが素晴らしく、ポピュラー音楽史に残る名演が繰り広げられている。