全世界にその存在を認識させたロバータ・フラックの名作『愛のためいき』
ダニー・ハサウェイと並んで、70’sソウル音楽に新風を巻き起こした立役者が今回紹介するロバータ・フラックである。フラックは黒人女性でありながら飛び級で大学まで進学し、学校教員として働きながらプロのミュージシャンを目指した才媛として知られる。60年代、アメリカ全土を巻き込んだ公民権運動で黒人の地位が少しだけ向上したとはいえ、フラックのような経歴を持つアーティストは実際にはとても少ないというのが現実である。では、なぜ彼女が…と言えば、それだけ彼女の音楽的才能が圧倒的であったからだ。69年にデビューした彼女はすぐに認められ、その後も現在までポピュラー音楽界になくてはならない存在としてリスペクトされている。本作『愛のためいき(原題:Feel Like A Makin’ Love)』(’75)は彼女の5枚目となるアルバムで、大ヒット作となったばかりでなく、ジャズ、フュージョン、AORなどへの、ソウル側からの橋渡し的な役割を果たした重要な意味合いを持つ。