誠実で不器用なバンド、R.E.M.の本質を浮かびあがらせる名盤『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』
ニルヴァーナのカート・コバーンやレディオヘッドのトム・ヨーク、U2のボーノ、コールドプレイなど多くのミュージシャンに影響を与えたアメリカのオルタナティブロックバンド、R.E.M.は数々の素晴らしいアルバムを残して2011年に解散してしまった。全米1位を獲得する大ヒットアルバムとなった前作『アウト・オブ・タイム』を経て、1992年にリリースされた『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』はジャケットのイメージ通り全体の印象はモノトーン。内省的な作品に仕上がっている。が、聴けば聴くほどハマる胸を締め付けられる楽曲が多く、国民的バンドの地位を獲得したにもかかわらず、ビッグビジネスの波に飲まれることがなかった誠実で不器用なバンド、R.E.M.の本質を浮かびあがらせる。派手なスキャンダルや戦略的プロモーションもなく、ジミで黙々としたイメージのせいか、日本では「なんで?」と思うほど評価に恵まれなかったが、今でも定期的にR.E.M.のアルバムを聴きたくなる衝動に駆られるほど彼らの音楽は生々しく痛く、美しい。のちにヴォーカリスト、マイケル・スタイプのことにも触れようと思うが、「R.E.M.のような曲が1曲でも書けたら」と生前に語っていたカート・コバーンが最期に聴いていたのがこの『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』だったというエピソードは有名である。