新レーベル「REXY SONG」にメディア初潜入+話題のRED HOT CHILLI PIPERSメール・インタビュー
フジロックの生みの親であるSMASH日高代表が昨年新たに設立したレーベル「REXY SONG」。メディア初となる潜入取材に成功した今回は、レーベル・スタッフ(REXY SONG 取締役・豊間根 聡氏、山田稔也氏、四方亜矢氏)による全4作品についてのインタビューを中心に、今年のフジロック出演発表時に「え? サマソニとフジロック、両方出るの!?」とそのネーミングが故に音楽ファンをざわつかせたスコットランドのバグパイプ・バンド、RED HOT CHILLI PIPERS(レッド・ホット・チリ・パイパーズ)のメール・インタビューをご紹介する。
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■ レーベル“REXY SONG”とは
── 「REXY SONG」はこれまで日本にはなかった音楽フェス発信、つまりフジロック発信のレーベルとして映りますが、発足に至った実際の経緯は?
豊間根:2年目の今、フジロック出演アーティストの盤を出しているレーベルという点では間違いはないのですが、決してそのように限定しているわけではありません。日高から「レーベルを作るぞ」と聞いたときはフジロックに出演するアーティストに限定することは考えておらず、自分たちが好きなバンドや音源を出していこうという話でしたし、これから出すバンドがフジロックに出られればいいですが、出られない可能性もありますからね。
── 「REXY SONG」の代表は?
豊間根:日高です。僕は取締役で、日高と僕とで作りました。実質働いているのは岩盤のスタッフです。キャリアが長く、岩盤で既に責任のある仕事をやっているこの2人です。ふたりはフジロックでは場内と場外それぞれの売り場責任者でもあります。ただ将来的には岩盤スタッフ全員がREXY SONGの仕事をすることになると思いますよ。
▲REXY SONG 豊間根 聡氏
山田:もう20年くらいですかね。最初は、何でもいいのでフジロックに関わりたいという気持ちが強かったです。
豊間根:四方なんて出会った時は19歳だったんですよ。途中でオーストラリアへ自分探しの旅に行ったものの、自分を探せずに岩盤に帰ってきて今に至ります。
四方:(笑)。私たちもフジロックに遊びに行って拾ってもらったんです。
▲REXY SONG 四方亜矢氏
── 豊間根さんは岩盤の代表を務められていますが、なぜ岩盤ではなく新たな会社(株式会社 REXY SONG)を立ち上げたのでしょうか?
豊間根:日高曰く、「岩盤の歴史としてホップ・ステップの段階まで来たから、最後のジャンプはレコード会社、レーベル業務をやる新しい会社を作る」と。また、日高さんは岩盤の心のボスであり、岩盤の生みの親ではありますが日高さんの会社ではありませんし、岩盤で新たにレーベル事業をやろうという気もありませんでした。過去にはやっていた時期もありましたけど。
── 過去のレーベル業務復活ではなく、新たな会社、新たな事業。
山田:はい。本人たちはとても新しい気持ちでやっています(笑)。
▲REXY SONG 山田稔也氏
豊間根:日高さんもそう思ってますよ。岩盤は来年20周年を迎え、今年11月下旬に渋谷パルコに移転してまた一からお店を作って再出発するんです。岩盤はいろんな業務をやっていますが、レーベル業務だけに特化する会社を作ったのは岩盤のジャンプの部分をそこに持って行くということだと思います。僕は、レーベル業務の中にはアーティスト・マネージメントも入っていると思っていますし、日高は岩盤をそこに持っていくためにREXY SONGを作ったんだと思っています。そうじゃないと新たに会社を作る意味もないと思うので。
── アーティスト・マネージメントもとお話されていましたが、現在所属アーティストは?
豊間根:将来的にです。今の時代、レーベル業務だけでは会社を継続していくことは難しいので日本のアーティストという制限は出てくるかもしれませんけど、ある種、360度やるべきだと思っています。今はミュージシャンがそれぞれ発信できる時代だし、はっきり言ってしまえばレコード会社が要らない時代。特にアメリカやヨーロッパなどのポピュラー・ミュージックの先進国では、所謂レコード会社が新人を発掘してデビューをさせるという枠組みが完全に壊れていると思うので。
── では、海外アーティストも視野に?
豊間根:海外の全くの新人アーティストの盤を出すには現実的なハードルがあると思っています。欧米のポピュラー・ミュージックやロックン・ロールどまん中のアーティストを見つけるという日高の夢はあるんですが、手つかずのいいバンドはなかなか見つからない状況なので、英語圏じゃないバンドや、海外ではリリースしているけれど日本にはまだ入って来ていないバンドしかリリースできない現状があって。先ほどお話した360度の中には、レーベルとしてマネジメントよりも先に原盤権を持つというのがど真ん中にある。そうなるとやっぱり国内のアーティストになるんだろうなという気がします。
── フジロックを立ち上げた人が創るレーベル。そのワールドワイドなネットワークを使えば邦楽アーティストを海外に押し出すのも容易いのでは?
豊間根:日高はやると言っていますよ。もちろん僕もそれはやりたいですよね。日本から海外に出て行くようなバンドが出てきたらいいなともちろん思っています。
▲REXY SONG事務所内の壁にかけられている日高氏とイギー・ポップの写真
── 「REXY SONG」という名前の由来は?
豊間根:名付け親はもちろん日高で、つい2週間前に日高と食事をしたときに、突然「お前、REXY SONGの意味わかってんの?」と言われて、「REXって確かラテン語で王という意味だから、王の歌ってことですよね?」と返したら「そこまでの意味じゃないけどな」と言ってごまかされましたけどね。このロゴの書体にも意味があるんですよ。
山田:宗教的な意味合いの強いものとして使われているようで、このロゴを作ったときもデザイナーさんからは「そのフォントはちょっとなぁ」と言われました。
豊間根:でも日高はこれにこだわったんです。そのままズバリのフォントからかなり変えてはいますが、それはやっぱり「REXY SONG」という名前から来ているこだわりだと思いますよ。ちゃんとコンセプチュアルなんです。
▲「REXY SONG」のロゴ
── 面白いですね。「REXY SONG」があるこの場所も、実はSMASHが始まったのと同じマンションの一室だとお聞きしましたが、そこにも日高さんの意図が?
豊間根:もちろん。SMASHが始まったところと同じ場所で新会社を始めようというのは明確でしたね。日高は僕らに対して、「俺が社長だっていうことは言うな。お前らがやるんだ」と言っていたんですけど、僕らからすれば「社長が日高です」と言うほうが何にしてもやりやすいので大いに言っちゃってますけどね。今回、「REXY SONG」の代表としてインタビューを受けると言っているので。(※後日BARKSにて公開予定)
これまでリリースしてきたINTERACTIVO、BANDA BASSOTTIと今回リリースするRED HOT CHILLI PIPERSはフジロックを象徴するようなアーティストでありながら、けしてポピュラー・ミュージックのど真ん中を行くバンドではない。それが「REXY SONG」のカラーだと思っていただいてかまわないですし、それがレーベル・コンセプトとして捉えていただいていい。ポピュラー・ミュージックのど真ん中をやるレーベルでは100%ありませんから。
◆REXY SONGリリース作品の魅力
■ これまで「REXY SONG」からリリースされた3作品について
◎REXY-1
INTERACTIVO/『QUE LINDO ES EL AMOR(ケ・リンド・エス・エル・アモール)』
国内盤CD/2,000円(税抜き)
2018年7月13日発売
▲『QUE LINDO ES EL AMOR』
山田:「REXY SONG」の最初のタイトルとなったのが、日高さんがキューバで見つけてきたバンド、INTERACTIVOのスタジオ最新アルバム『QUE LINDO ES EL AMOR(ケ・リンド・エス・エル・アモール)』です。本国では配信しかしていないこの作品を世界で初めてCD化したもので、キャリアのあるINTERACTIVOの魅力が伝わりやすいアルバムなんじゃないかと。彼らの一番の魅力はジャンルレス。でもそれは、キューバのトラディショナルなところが基盤にあるジャンルレスで、曲毎にボーカルや演奏メンバーを変えることで今のキューバ音楽を象徴するような多彩な楽曲を聴かせてくれています。キューバ音楽だと日本ではどうしてもブエナビスタ(『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』)のイメージがありますよね。
── 確かにその印象が強くありますね。
山田:あれは、ライ・クーダーが中心になって革命前のキューバのアーティストを集めてやった素晴らしいアルバムですが、INTERACTIVOの場合はリーダーのロベルトがいろんなアーティストを集めてやった現代のブエナビスタ。ブエナビスタは革命前のキューバを、INTERACTIVOは現代のキューバを体現している。その対比も面白いですし、それが一番伝わりやすいのがこの作品です。
豊間根:ファンキーだよね。僕らが知っている黒人音楽のファンキーさではなく、キューバン・ファンキー。そのファンキーさも、キューバン・ルーツ・ファンキーではなく、現代的なバンドという気がします。
▲INTERACTIVO
◎REXY-2
INTERACTIVO/『INTERACTIVO EN VIVO EN FUJI ROCK(インタラクティーヴォ・エン・ヴィーヴォ・エン・フジロック)』
国内盤CD/2,200円(税抜き)
2019年4月19日発売
▲『INTERACTIVO EN VIVO EN FUJI ROCK』
山田:REXY SONGの2作目は、前作と同じINTERACTIVOの2018年フジロック初来日のステージをそのまま収録したアルバムです。ライブ盤は難しいと言われるこのご時世、周りからは「やめといたほうがいいんじゃない?」と言われましたが、それでもこの作品を出すに至った一番の理由は「ライブが良かった」という一言に尽きます。僕は、場外ショップエリアの岩盤売り場で15年働いてきて、15年会場の中に入らず、ライブも観ていません。でも、ライブが良かったバンドのCDがドカッと売れるので「このアーティストのライブ良かったんだろうな」というのを数字で知るのが面白くて。昔で言うとBattles、最近だとONE OK ROCKがものすごかったりして、そうしたバロメーターの中でINTERACTIVOのCDの売れ行きが良かったんです。さらに後日、映像を見せてもらったときに、過去音源を聴いてきた中でずば抜けて面白かった。彼らはジャズ畑の人などが集まっていて巧いですし、あまりロックっぽくない印象がありましたが、フジロックで鳴らす音はすごくロックでアレンジが効いたフェス向けサウンドになっていて、さすがでしたね。INTERACTIVOというバンドのポテンシャルの高さを秘めているのが生々しく見えてくるようなアルバムになっています。
▲INTERACTIVO(2018年フジロック前夜祭/photo by Taio Konishi)
── 異例の2年連続出演とライブ盤のリリースからは、このバンドに対するフェスとレーベルの推し度がわかりますし、私のように昨年見逃した人には今年のステージは観たいと思わせられる作品ですね。
豊間根:INTERACTIVOは第1作目、レーベルを象徴するバンドですからね。「他のライブ・アルバムとフジロックの音源を比べて聴いたら圧倒的にフジロックのほうが良かったから出した」と日高も言っていましたが、その通りだと思いますし、「プログレじゃん!」というインプロをやっていたりもするのでフジロックのお客さんやロック・ファンには取っつきやすいアルバムだと思います。