「Re:␣ハマトラ」OPテーマ「千の翼」、多数のアーティストが参加した“addingシリーズ”フルアルバム「と」発売記念!livetune kzインタビュー(第2回)
――では話は変わって、“addingシリーズ”のフルアルバム「と」についてお聞きしたいんですが……。「と」っていうアルバムタイトルとはどういう意味なんですか?
kz:やっぱり気になりますよね(笑)。まずは、いろんな人と一緒にやった「together」や「(featuring)with」の意味合いが込められています。「ともだち」の「と」でもあります。
また、将棋の「と金」もモチーフです。小学生の時に将棋をやっていて、一番弱いコマである歩が、一転して強くなるというのが好きだったんです。僕はデビュー以前はインターネット上で活動していましたが、たまたまみなさんの目にとまったことで、以前からリスペクトしていたアーティストの方々や、新しく友だちになった人たちと一緒に音楽ができるようになりました。ヒップホップマインドでいうところのメイクマネー、友だちのtofubeatsはサクセス・イズ・ザ・ベスト・リベンジという言葉を使っていますが、そうした「やってやるぞ」という気概は僕にもありましたね。「と金」ならMV(ミュージックビデオ)をお願いしたファンタジスタ歌磨呂さんに、カッコよくデザインしていただけるんじゃないかという目論見もあって、「と」に決定しました。
――“addingシリーズ”には、ビックリするくらい豪華なアーティスト陣が参加していますよね。アニメファンとしては中島愛さんや、三森すずこさんなど、おなじみの方々が参加しているのも嬉しいところです。とても懐が広いプロジェクトですが、アーティストの選定基準みたいなものはあるんでしょうか?
kz:偶然一緒になったライブで仲よくなったり、知り合いつながりだったりすることが多いですね。今回のアルバムに参加してもらったmoumoonも、パリのイベントでたまたまご一緒したことがきっかけです。三森すずこさんと中島愛さんについては、僕がファンだったから呼ばせていただきました(笑)。三森すずこさんのHigh And Loudは専門学校HALとのタイアップなんですが、アニメの出演する声優さんに歌ってもらいたい、というHALからのリクエストがあったことも渡りに船でしたね。鬼龍院くんは、ラジオにゲストとして呼んでいただいたのがきっかけです。お互い、なんとなく同じ空気を感じたんでしょうね、彼のほうからご飯に誘ってくれました(笑)。音楽的な絡みがなく、友達というところから入ったからこそ、ゴールデンボンバーという異色のユニットを起用できたのかもしれません。
――“addingシリーズ”は、これまではシングルとして楽曲を発表してきましたよね。アルバムにするつもりは最初からあったんですか?
kz:アルバム一枚までは、なんとかがんばって作ろうと思っていました。正直、僕がスタッフなら、同じことは二度としたくありませんね(笑)。ただ、大変だった甲斐あって、ジャンルにとらわれない人選ができたと思っています。「原田さんと三森すずこさんとFukaseくんと鬼龍院くんが同じアルバムにいる」というわけがわからないものが完成したので、僕はそれだけで大満足です(笑)。
――特に思い入れのある曲は?
kz:足かけ2年ちょっと続けていて、どの曲にも思い入れはあるのですが、特にということとなると、原田郁子さんの「ファンタジア」ですね。僕は高校生の頃からクラムボンのファンだったので、ご一緒できたのがとても嬉しかったです。レコーディング前のプリプロで、一回録音してみようということになったんですが、なんと僕の自宅でやることになってしまったんです。「原田郁子がウチに来る」というまさかの展開で、僕の中では一大事件でした(笑)。おみやげにあんドーナツを買ってきてくれたのは忘れられません。
ほかに思い出深いのはNIRGILISの「Dreaming Shout」。8月6日に全員脱退してしまったNIRGILISにとっては、これが最後の曲になるんです。NIRGILISのみんなは友達なので、寂しく思う気持ちと、最後に関われてよかったと思う気持ちとが半々ですね。まめぐ(中島愛)も音楽活動を休止してしまったので、「Transfer」にも同じような感慨があります。偶然が重なってしまった結果なんですが、「Livetuneに関わると音楽をやめることになる」みたいなウワサが流れると困ってしまうので、ほかのアルバム参加者には音楽から離れないでいてほしいです(苦笑)。
――歌詞もすべてkzさんが作詞していますよね。どうやって生み出しているんでしょうか?
kz:先にシンセサイザーでメロディーを作って、そこに言葉を当てはめていく方法をとっています。僕は歌詞を書くのがすごく苦手で、特にタイアップの場合は歌詞のイメージを合わせる必要があるので、毎回とても悩みますね。ただ、今回のアルバムは比較的スムーズに作詞できました。
「ファンタジア」は、原田さんが包み込むような声の持ち主なので、トゥギャザー感のある歌にしたかった。僕は、EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)の大家であるデヴィッド・ゲッタの「人種や宗教、言語は違っても、今ここにいる僕達はひとつだ」というMCがとても心に残っていて、そのマインドを原田さんが歌で伝えてくれたら素敵だなと思って曲作りをしました。
「Dear You」は、YUKAさんにはロマンチックな曲を歌ってほしいなと思って作った曲です。彼女は星が似合う歌声なので、夜空をイメージさせる恋唄になりました。
鬼龍院翔くんの「大好きなヒトだカラ」は、テーマが“カラオケ”。ゴールデンボンバーといえば、やっぱりカラオケじゃないですか。タイトルにも“ヒトカラ”って入っているでしょ(笑)。鬼龍院くんとは先日のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014でも会ったんですが、僕も彼も周囲に大先輩ばかりで、同世代の友だちがいない(笑)。彼には、そういった哀愁が漂っているので、それを歌詞に込めてあります。僕自身はJ-POPに明るくないのですが、新しさを持ちつつも、わかりやすい“ドン・キホーテ店内で流れているような曲”を目指しました。僕の音楽の方向性は、本来なら鬼龍院くんとはマッチするイメージが浮かび辛いと思うんですが、その異物感がおもしろいんじゃないかと思ったんです。また、この曲については、詞のベースを僕が作り、それをAkira SunsetさんというJ-POPで活躍されているクリエイターの方がブラッシュアップするという手法をとって、よりJ-POPらしくしています。ストリングスも、弦一徹さんというJ-POP界では超有名な方にアレンジをお願いして、「これぞJ-POP!!」と言える曲に仕上げていただきました。
今回はボーカルがそれぞれ違っていて、彼らのイメージに合った曲を作ればよかったので、あまり悩まずに済みました。
――収録曲はどれも、未来志向の歌詞ですよね。
kz:僕自身がポジティブで、あまり暗いことを考えないからですかね。去年、シンガポールやマレーシアを訪れたんですが、現地の人たちはみんな底抜けに明るいんです。いずれもとても景気がいい地域ということはありますが、そこから日本に戻ってくると、とても暗く感じてしまう。ポジティブ感がなくて、熱量が低いんです。日本はアジア各国に比べて経済的な格差が小さいので、現状に満足しがちで、やる気を保ちにくい社会だということも関係していると思います。たとえば、ニコニコ超会議などを見ていると、熱量の大きさは感じます。それが、「俺達楽しいぜ」から「みんな楽しいぜ」というように、外に向かって放たれていくとすごくおもしろいんじゃないかなと思います。EDMは明るくてハッピーなジャンルなので、音楽を通じて、日本に住むみんなに、もっと元気になってもらいたいんですよ。
また、アニメとのタイアップでは、壊滅していく世界を描いた「デビルサバイバー2」や、キャラクター同士の軋轢がある「ハマトラ」など、重たい空気をまとった作品が多かったので、「希望を持たせたい」という思いで音楽を作っています。「魔法少女大戦」の「オール・オーヴァー」については、「地元っていいな♪」というだけで、なにも考えていませんが(笑)。
僕が音楽を通じて伝えたいことは「ファンタジア」の中にあって、「君と歌う歌が君に必要なんだ」という歌詞に集約されています。歌は、聴いてくれる人たちにとって必要な物なんだと思うんです。日本は、東日本大震災以来、どこか歯車が狂ってしまったんじゃないかと感じています。今年もなんだか、とんでもないニュースばかりですよね。そんな世相だからこそ、僕は笑って生きていたいし、みんなにも笑ってもらいたいじゃないですか。
……ずいぶんと重たい話になってしまいましたが、僕が言いたいことは「もっと楽しくなれるよ!」という、ただそれだけなんです。僕は、いつでもバカやっていきたいですね。これだけのアーティストを呼んだ“addingシリーズ”も、普通の感覚なら正気じゃない(笑)。