「阿久悠 リスペクトコンサート」に八代亜紀、Char、和田アキ子、五木ひろしら集結
2017年11月17日と18日に東京国際フォーラム ホールAにて、<没後10年・作詞家50年メモリアル 阿久悠リスペクトコンサート 〜君の唇に色あせぬ言葉を〜>が開催された。
ここでは17日に開催されたコンサートの模様をレポートする。17日の出演者は、八代亜紀、大橋純子、林部智史、MAX、北原ミレイ、石野真子、ささきいさお、Char、新妻聖子、山本リンダ、ゴスペラーズ、和田アキ子、木の実ナナ、五木ひろしという豪華な顔ぶれ。それぞれが、阿久悠への想いや当時のエピソードなどを語り、阿久悠が生んだ大ヒット曲と見発表作品を、阿久悠メモリアルオーケストラの演奏とともに披露した。
第一部のトップバッターは八代亜紀。数々の金字塔を打ち立てた、阿久悠・浜圭介の名コンビによる代表曲、「舟唄」(1979年)、「雨の慕情」(1980年)を歌い上げた。八代は「舟歌」の頃を、「阿久先生に『僕は八代君に会うために9年間助走をつけてきたよ』と言われ、嬉しかったです」と振り返った。
続いて、大橋純子が登場し、「私にとって初めてのビッグヒットとなった曲です。40年近く経ちましたが、今でも私の代表曲として一緒に歩いて来てくれています」と語ると、「たそがれマイ・ラブ」(1978年/作曲:筒美京平)を熱唱。森鴎外作品『舞姫』がモチーフの臨場感ある歌詞に、大橋のドラマチックな歌声が見事に調和した名曲である。
その次は、沢田研二の「時の過ぎゆくままに」(1975年/作曲:大野克夫)を実力派若手歌手の林部智史がカバー。林部は「阿久悠さんの伝えたいこと、そして意識を歌い継げますように、この曲を歌わせていただきたいと思います」と語り、阿久悠の未発表詞に吉田拓郎が曲を付けた新曲「この街」を歌唱。同曲は『地球の男にあきたところよ〜阿久悠リスペクト・アルバム』(2017年)に収録されている。
「S・O・S」(1976年)で登場したのは、“95年型ピンク・レディー”のキャッチフレーズでデビューしたMAX。「渚のシンドバッド」(1977年)、「サウスポー」(1978年)、「UFO」の4曲を、華麗に歌って踊り客席を沸かせた。全て、作曲は都倉俊一が手掛け、オリコン1位を記録した大ヒット曲である。
北原ミレイは、48年前の出世作「ざんげの値打ちもない」(1970年/作曲:村井邦彦)を披露。凄みのある声と存在感で観客を歌の世界へと引き込んだ。幻の歌詞・4番を入れた、5番構成の完全版で聴けるのは貴重。続けて、『阿久悠メモリアル・ソングス〜私は話して みたかった』に収録された新曲「恋は砂時計」(2017年/作曲:田尾将実)を歌い上げた。阿久悠が企画・審査員を務めたオーディション番組「スター誕生!」出身の石野真子は、デビュー曲「狼なんか怖くない」(1978年/作曲:吉田拓郎)と、「日曜日はストレンジャー」(1979年/作曲:筒美京平)を、キュートな振りと歌で魅せた。
ささきいさおは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』の同名テーマソング(1974年/作曲:宮川奏)を熱唱。声の伸びも圧巻で、当時の歌い方を崩さない歌唱法にも感動する。ささきは「すごい歌ができたな、と思っていたのですが、『宇宙戦艦ヤマト』は『アルプスの少女ハイジ』の裏番組だったので視聴率が上がらなくて、半年で打ち切りという、悲惨な目に遭いました。それからだんだん人気が出て、現在でも新作を作り続けています」と語った。8歳になる阿久悠の孫もヤマトのファンなのだそう。ささきは、河島英五の「時代おくれ」(1986年/作曲:森田公一)のカバーで第一部を締めた。
第二部はCharのギターで幕を開け、「闘牛士」(1978年/作曲: Char)の歌と演奏に歓声が上がった。Charは初めて阿久悠と会った時を振り返り、「ロックの人に詞を書くのは久しぶりで非常に楽しみだ、と仰ってくださいました。僕はめちゃくちゃつっぱってる時だったので、ふん、そうなんだ、っていう勢いだったんです」と語ると客席から笑いが起こった。続けて「気絶するほど悩ましい」(1977年/作曲: 梅垣達志)も、歌とギターで聴かせた。
ペドロ&カプリシャスの「五番街のマリーへ」(1973年/作曲:都倉俊一)と「ジョニィへの伝言」(1973年/作曲:都倉俊一)は、ミュージカル女優の新妻聖子がカバー。 “無国籍ソング”と呼ばれた名バラードの世界を、見事な歌唱力で表現した。同じく、阿久・都倉コンビによる作品でも、非日常型エンタテイメント路線である「どうにもとまらない」(1972年)と「狙いうち」(1973年)を山本リンダが歌唱。パワフルなパフォーマンスで、会場は熱気に包まれた。
ゴスペラーズは、アカペラで、森田健作の「さらば涙と言おう」(1971年/作曲:鈴木邦彦)に、生演奏で、小林旭の「熱き心に」(1985年/作曲:大瀧詠一)を聴かせた。ゴスペラーズは、阿久悠の作詞でアニメソング「BOO~おなかが空くほど笑ってみたい~」(1998年/作曲:筒美京平)を発表している縁から、今回の出演となった。
和田アキ子は「笑って許して」(1970年/作曲:羽根田武邦)で登場。和田は「こんなに豪華なアーティストが一堂に集まるなんてさすが阿久さん。想い出というと、私はご一緒に飲んだことしか覚えていないですし、その内容も、こういう場所で言えない話なんです」と語ると、会場に笑いが起こった。続けて「あの鐘を鳴らすのはあなた」(1972年/作曲:森田公一)を熱唱。和田のダイナミックな歌声が、会場中を魅了した。
トリを務める五木ひろしは、木の実ナナと、カラオケの定番曲「居酒屋」(1982年/作曲:大野克夫)をデュエット。今回、約7年ぶりのステージでの歌唱となった。デビュー当時を振り返り、「賞レースの時はライバルの曲を手掛けているのが常に阿久悠さんでした。1年、2年、3年ならまだしも、10年間位です。くやしいという思いと、いつか一緒にお仕事できたら、と思っていたところ、たまたま映画の主題歌という企画で書いていただいた」と語り、続けて「契り」(1982年/作曲:五木ひろし)を歌い上げた。同曲は、阿久悠が他界した2007年の紅白歌合戦で、追悼の意を込めて、大トリでも歌われている。そして、コンサートのフィナーレは、森田公一とトップギャランの「青春時代」(1976年/作曲:森田公一)を出演者全員で歌って締めくくった。
当日の模様は、12月16日にBS-NHKにて放送予定(時間未定)。