70’sロックの方向性のひとつを提示したジム・クウェスキン・ジャグ・バンドの『ガーデン・オブ・ジョイ』
60年代初頭、アメリカのフォークリバイバルは音楽ファンだけでなく政治にもかかわりながら大きなムーブメントとなっていた。1963年8月、キング牧師に率いられた20万人にも及ぶワシントン行進が実現し、全米で人種差別撤廃が叫ばれた。同じ年の11月、南ベトナムでベトナム戦争激化の引き金となる軍事クーデターが起こり、その3週間後にはテキサスでアメリカ第35代大統領ジョン・F・ケネディが暗殺されるなど、アメリカ国内は激動の時代を迎えていた。戦前の黒人音楽であるジャグ・バンド音楽を復活させたジム・クウェスキン&ザ・ジャグ・バンドがヴァンガードレコードから『アンブラッシング・ブラシネス』でデビューするのも同じく63年だ。今回取り上げるジム・クウェスキン・ジャグ・バンド(本作で改名している)の4thアルバム『ガーデン・オブ・ジョイ』(’67)は彼らの最終作であるが、最も脂の乗り切った演奏が聴ける最高傑作であり、彼らの音楽はフォークシーンだけにとどまらず、当時のロックシーンに与えた影響も大きい。