Idha

94年、『メロディ・イン』という１枚のアルバムが届けられた。アーティスト・ネームはイーダ——なんとも不思議な響きである。
容姿端麗で落ち着いた色気を漂わせる彼女は、"ライドのギタリスト、アンディ・ベル（現オアシス）の妻"という話題の渦中、デビューを果たす。透明感に満ちたハイトーン・ヴォイス、切なげでありつつも力強く鳴らされるメロディ、60'sカントリー／ルーツ・ロックをベースとした温もりあるナチュラルなサウンド——女性ならではの繊細さと寛大さを併せもつ楽曲の数々は、リスナーの胸に切実に響いた。彼女がミュージシャンとしての素質を開花させた大きな要因に、夫君（レコーディングにも参加）の存在があることも忘れてはならないだろう。
97年には、全てのナンバーを自らのペンで書き上げた『トラブルメイカー』を完成させ、シンガー・ソングライターとして独り立ち。バンド・サウンドを強調した作風や壮大なスケール感を醸し出すストリングスの導入など、ひとまわりもふたまわりも成長を遂げたイーダの姿（音楽性）がそこにはあった。