スライドギターの概念を変えたデビッド・リンドレーの『ウィン・ジス・レコード』は時代に左右されない作品だ
デビッド・リンドレーと言えばジャクソン・ブラウンの名前が浮かぶほど、その関係は深い。特に『レイト・フォー・ザ・スカイ』(‘74)のタイトルトラックでの寂寥感に包まれた味わい深いギターソロはまさに名演で、リンドレーの名がロックファンの心に刻みつけられた忘れられない一曲となった。しかし、彼の天才はラップ・スティールによるスライドプレイにあり、『プリテンダー』(’76)以降のジャクソン・ブラウン作品でのプレイは、どんどん凄みを増していった。そのプレイに魅せられた多くのファン(もちろん僕も含めて)は彼のセッション作品も聴かずにはおれず、彼が参加しているというだけでアルバムを購入し、やっぱりその演奏に引き込まれるのである。今回は80年代初頭にリンドレーが結成したエル・ラーヨ・エキス名義としては1作目となる『ウィン・ジス・レコード』を取り上げる。