Dan Hicks And The Hot Licks

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    Dan Hicks And The Hot Licksダン・ヒックス・アンド・ザ・ホット・リックス

    フラワー・パワー真っ盛りの60年代後半、サイケデリアの中心地、サンフランシスコから突如として登場した、とびっきりのヒップ・スター。飄々として捉えどころのない人柄、諧謔精神に満ちた音楽観、そしてシニカルな詞世界——演っている音楽は全く異なるが、ある意味、フランク・ザッパに通じるものがあるかもしれない。
    ダン・ヒックスは、女性コーラスにヴァイオリンを含む6人編成で、アコースティック・スウィングを触媒に、サイケデリック/オールド・ジャズ/ヒルビリー/フォーク/ハワイアン……などを混ぜ合わせ、ノスタルジックで新しいという一筋縄ではいかない音楽を抽出した。一言で表すなら"グッド・タイム・ミュージック"というフレーズが最適かもしれないが、そこには過去に対する執着は一切なく、ひたすらクールで客観的な姿勢で演じるあたりがこの人の持ち味であり魅力。70年代には数枚のアルバムを発表しているが、なかでも有名なのは72年の『Striking It Rich』と73年の『Last Train to Hicksville』。どちらもヒックスのアナーキーな感性が爆発した傑作である。そして00年には、22年ぶりの新作『Beatin' the Heat』を発表。"粋"を極めた親分を慕って、エルヴィス・コステロ、ブライアン・セッツァー、トム・ウェイツ、リッキー・リー・ジョーンズなどが馳せ参じた豪華なアルバムとなった。
    またここ日本でも、小西康陽や田島貴男が影響を公言し、現在も渋谷界隈の若者たちに圧倒的な支持を受けている。