Cartola

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    Cartolaカルトーラ

    20年代から70年代後半まで、50年の長きに渡って活動したブラジル・ポピュラー・ミュージックの巨人。死ぬまでに書いた楽曲は、なんと700曲に及ぶという。
    カルトーラは、19歳の若さでエスコーラ(カーニヴァルに参加するサンバ隊であり、音楽家の主要な活動場所)の音楽監督に納まり、レコードの需要が飛躍的に伸びた30年代に作曲家としてのキャリアをスタートさせた。彼のソングライティングの特徴というと、「カルトーラ以外には歌えない」といわれた複雑な楽曲にある。ちゃんと主要和音に戻らないような独特のメロディ・ラインは、時代を一歩も二歩も先に進むもので、当時としても通好みの存在だったらしい。しかし、その先鋭さゆえに所属していたエスコーラと反りが合わなくなったカルトーラは、音楽を離れ長い隠匿生活に入り、いつしか人々の記憶から忘れ去られてしまう。再び脚光を浴びるのは50年代に入ってから。まるで戦前のブルースマンのように"再発見"されたカルトーラは、映画『黒いオルフェ』に出演したことも手伝ってサンバの新時代とともに復活。彼の周りにはさまざまなミュージシャンが集い、1つのシーンが形成されていく。こうした動きに押され70年代に入ると、ついに歌手としてもデビュー。74年から79年にかけて4枚のソロ・アルバムを発表し、「人生は風車」「沈黙のバラ」といった名曲を生みだした。こうして60歳を過ぎて、つかの間の成功を味わったものの、80年にガンにより永眠。まさに天国と地獄を行き来する生涯を送ったわけだが、だからこそカルトーラの歌は味わい深い。悲喜こもごもとした経験を反映させた曲は、いまだに世界中の人の心を捉えて離さないのだ。