Carly Simon

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    Carly Simonカーリー・サイモン

    71年のデビュー以来、現在に至るまでコンスタントにアルバムをリリース。その数はすでに20枚に達しており、今や大御所ミュージシャンと言って差し支えなかろう。だが多くの人にとって彼女はやはり、60年代後期〜70年代初期に一世を風靡した「女性シンガー・ソングライター」ブームを代表する存在——といったところだろう。キャロル・キングやジョニ・ミッチェルらとほぼ同期、というとわかりやすいだろうか。
    ただ、あの当時の女流シンガー・ソングライターというと決まって「私小説的」な、ある種「自虐的な自身の切り売り」的痛ましさがついて回ったものだが、彼女の場合はどちらかというと、そういったセンセーショナリズムには加担していなかった。まずはシンガーとして耳に心地よい歌を唄うことにシフトしていた点が、なにかと思わせ振りな作品に走りがちだったあの時代において、良くも悪くも浮いていたところ。もともと、彼女の声質が清楚である以上に、女性にしてはクールでソフトなテナー・ヴォイスを持ち味としていたことからも、最初からヒステリックな押しの強さやブルースな感情移入には距離を置いていたということだろう。
    とはいえ感情に忠実な、というよりもあっけらかんとしたオープンぶりはやはりアメリカン・ガールそのもので、74年の代表作『ホットケーキ』は当時の旦那であるジェームズ・テイラーが全面参加した一作だが、カヴァーに映る本人はなんと妊婦姿。で、収録曲には「もうすぐ、赤ちゃんが生まれるの〜?」(意訳)なんてのもあったりして、"やっぱアメリカ人は違うわ〜"と当時まだまだシャイだった日本人はわけわからず圧倒されたものである。(小池清彦)

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