カラオケ上半期ランキング2位 ボカロ発「千本桜」がスタンダードになった理由とは?
(参考:米津玄師が語る、“ボカロ以降”のポップミュージック「聴いてくれる人ともっと密接でありたい」)
激情的なピアノのメロディと疾走感のあるサウンドが特徴である同楽曲は、黒うさPの手により2011年9月17日にアップロードされると、瞬く間に再生数が上昇。2014年6月12日現在で7,715,807回再生を記録し、ボーカロイドシーンを代表する楽曲の一つとして支持を受けている。2013年には音楽ミュージカル『千本桜』にAKB48の石田晴香、市川美織が出演して、同曲を歌唱。自動車メーカーのTOYOTAは『AQUA』のCMソングとして、ピアニストのまらしぃが演奏する同曲を起用した。さらに、2013年末の『ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE』では、小林幸子が同曲を演歌風にアレンジしてカバーするなど、様々なユーザー・シーンに浸透しつつあることが伺える。
なぜ「千本桜」はこれほど人気になったのか。音楽ライターの柴那典氏は、同曲があらゆるシーンに普及していることについて次のように語る。
「『千本桜』という曲は、ボーカロイドシーンから生まれたものですが、今や“ネット発”という枠組みに収まらない楽曲になっています。同ランキングのTOP10には、他にボカロ曲は無いですし、『VOCALOID』カテゴリの2位・3位には、れるりり feat.初音ミク、GUMIの『脳漿炸裂ガール』、164 feat.GUMIの『天ノ弱』という曲がランクインしているのですが、この2曲は『千本桜』に比べてそれほど外に向かって広がっているわけではありません。『千本桜』は、公開から3年をかけて一人歩きして広がった稀有な例ですね」
このように「千本桜」が際立った広まりを見せた背景には、二次創作・三次創作を楽しむ文化があるという。
「ボーカロイドシーンにおいてN次創作は一般的ですが、まらしぃや和楽器バンド、小林幸子がカバーしていることなどからも分かるように、この曲には『歌ってみた』『演奏してみた』といった、プロによる創作の派生が非常に多いんです。商業的な展開も多い。曲が公開されたのは3年前ですが、昨年だけでも小説化やミュージカル化がされるなどしており、現在になっても徐々にファンを増やしつつある要因となっているようです」
さらに、楽曲面でも多くの日本人に親しみやすい特徴があると同氏は続ける。
「『千本桜』のメロディには演歌に近いものを感じます。マイナーペンタトニックスケールのメロディを効果的に活用し、聴き手に和のテイストを感じさせる楽曲に仕上がっているんですね。そのうえアップテンポかつキャッチーで覚えやすいので、多くの日本人にとって親しみを感じやすいのではないでしょうか。小林幸子や和楽器バンドによるカバーがハマっていると感じられるのもそこが大きいですね」
シーンの垣根を越えて様々なリスナーの間でブレイクしている「千本桜」。今後、同曲が文化としてどのような広がりを見せるのか、楽しみにしたい。(リアルサウンド編集部)