豪華演出で12000人が大興奮 西野カナが横浜アリーナで見せた、ライブパフォーマンスの進化形
(参考:嵐、西野カナ、氣志團……春ドラマ「主題歌」の傾向と対策)
会場最寄りの新横浜駅を降りると、駅前の一帯が西野カナ一色に染まっていた。グッズであるギンガムチェック柄やドット柄のリボンカチュームを付けた女の子、西野カナの衣装と同じお手製のレトロアメリカンなドレスを着た女の子たちが周辺のカフェや、ファーストフード店で待ち合わせている。横浜アリーナに向かう道でも、遠方から来たであろうキャリーバッグを引く、ライブTシャツを着た女性や、同じようにグッズのトートバッグなどを持ったカップルや親子連れというたくさんのファンが楽しそうに話しながら歩いていた。そんな思い思いにお洒落したファンが会場前では、記念写真を撮ったりしていて、ライブが始まる前から会場全体がテーマパーク的な楽しげな雰囲気に包まれていた。
ライブで強く印象付けられたのは、そのディズニーランドを思わせる演出性の高さだ。ショーあり、アトラクションありで観る側を飽きさせない。赤や青のマリンボーダーワンピースやトレンチコート風のドレス、メタリックシャイニーコスチュームなど、時にガーリー、時にセクシーな全12着の衣装を見せた西野カナ。中盤の「LIGHTS,CAMERA,ACTION」「FANTASY」「Love you Miss you」「Every Boy Every Girl」「Sweet Dreams」では、取材のメモを取っていると見逃してしまうほどの早変わりの演出も。衣装チェンジで何度かステージを離れた際も「【BAND TIME】」や「【DANCER TIME ~ DJ TIME】」でプロジェクションマッピングを駆使した映像演出を見せたり、その映像とダンスを融合させたパフォーマンスを見せ、終始ステージで行われる最新鋭のショーに釘付けになった。また、この日はこれまでに西野カナとコラボレーションをしてきたアーティストが勢揃い。「君の声を feat. VERBAL(m-flo)」では、VERBALのエッジの効いたラップがグルーブと観客の熱気を生み、MINMIが登場した「Summer Girl feat.MINMI」では、パワフルなMINMIのボーカルとアッパーなサウンドにオーディエンスが一斉に跳ねる。「ターニングポイントとなった曲を聴いてください」と語って披露された「遠くても feat.WISE」では西野カナの呼び込みに、WISEが勢いよく飛び出し、ファンは大歓声。そんなスペシャルなライブにただただファンは「すごい!すごい!」と声を上げてライブを体感していた。
そんな「見せる」演出に加え、アトラクション的な「参加する」演出も、このライブの楽しさのひとつだろう。それはアンコールの1曲目の「Join us!」。西野カナのライブでは初となるトロッコに乗って登場したのだが、そのトロッコが観客の埋め尽くすアリーナをグルッと一周。表情も衣装もはっきりと分かるほどの接近に、ファンは大興奮、西野カナやダンサーの先導で一緒にダンスも踊って一体となってライブを盛り上げていた。また「FreFlow(フリフラ)」という無線機能付きリストバンド型ライトという新しい試みも興味深かった。観客が付けたリストバンドが照明に合わせて青やピンクに変わるライトなのだが、ライブに「参加している」という一体感を高めるのに一役買っていた。西野カナが“魔法のステッキ”を使ってフリフラの色を演出したり、アーティストとファンのコミュニケーションにつながる演出も見ることができた。
そして、西野カナ自身のアーティストとしての魅力が、この日訪れた12000人のファンを惹きつけていた。「たとえ どんなに…」や「君の声を feat. VERBAL(m-flo)」というキーの高い楽曲を続けて歌っても、ダンサーやファンと一緒に踊りながら歌っても、弛まない安定感のある歌唱力は、多くのステージを踏んできた経験によるものだろう。その一面で、たくさんのスペシャルゲストや豪華演出に「こんなヤバい日、なかなかないと思うんやけど」と告げて、ファンと「めっちゃヤバい!」のコール&レスポンスをしたりと、彼女はファンにとって遠い憧れのスターというよりも、より身近な存在として親しまれていると感じた。ライブ中ずっと彼女に合わせて一緒に歌を口ずさんでいる10代くらいの女の子がとても印象的だった。
デビュー曲の「I」や新曲の「We Don’t Stop」、「好きな音楽でみんなに出会えたことにありがとうと言いたいです」と語って歌った「Best Friend」など様々な楽曲を披露した約3時間のライブ。エンターテインメント性に富み、ファンとのつながりの強さを感じるファイナルだった。(高木智史)