裸のラリーズ

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    裸のラリーズといえば、やはり「謎」であるとしか言いようがない。結成以来34年。だがその間に発表した単独アルバムは3枚のみ、それも91年にまとめて、ごく少数を限定でリリースしただけである。ほかにライヴ映像をまとめたビデオが1本。いずれも70年代までのソースで、80年代以降のラリーズは、ときおり散発的におこなわれるライヴ以外で知る機会はなく、とくに90年代以降はステージに立つことも稀になり、96年10月川崎クラブ・チッタを最後に、もう5年も人前に姿を見せていない。もちろん上記アイテムはいずれも廃盤で、入手不可である。
    だが、にも関わらずラリーズの名は時を追うごとに古びていくどころか輝きを増し、「伝説」どころか「神話」めいて語られるようにさえ、なってきた。彼らの音楽にはいくら時を経ても錆びつくことも古びることもない、普遍的な人間の真実が刻まれているからだ。常軌を逸した大音量のディストーション・ギターのフィードバック・ノイズが、ひたすら酸性雨のように降り注いでくる光景は、夜の闇の底に引きずり込まれていくような恐怖であり、また永遠に続くオーガズムのような快楽である。その混濁とした音海の渦には、人間存在のあらゆる感情の十全たる様相が溶かし込まれている。
    裸のラリーズとはすなわち、ギタリスト/ヴォーカリストの水谷孝である。久保田麻琴、山口富士夫といった才人たちもラリーズの歴史に名を連ねたことがあるが、いずれも水谷の底なしの悪夢のごとき情念の前に、まるでエネルギーを吸い取られたかのように去っていったのだった。そして、現在の裸のラリーズがどうなっているのか、水谷がいま、どこで、何をしているのか、誰も知らない。 (小野島 大)

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