松坂智幸

信念を貫きながら音楽活動を続けていくことはいかに困難か、そしていかに価値のあることか。そうして生まれる聴き手との信頼関係は何にも増して美しいものだ。会津若松の喫茶店から始まり、井の頭公園を経て、メジャー・デビューまで——シンガー・ソングライター松坂智幸の歩んできた道は、さぞや山あり谷ありの険しいものであっただろう。そして、いまだ目的地には着いていない。だが真っ直ぐな瞳と、強さと甘さが交互に顔を出すような歌からは、彼がこの旅をやり遂げるような確信がもてるのだ。虚飾のないシンプルな詞の表現には、良質なメロディとブルース臭のするアメリカン・ロック的なサウンドがよく似合う。彼のサウンドがこの先どのように変化していくかなんて二の次だ。ただ洗いざらしのジーンズのような飾り気の無い個性だけは、そのままであって欲しい、と切に想うのだ。