安藤裕子が歌う恋の歌。4年半ぶりのアルバム『Barometz』に込めた小さなドラマ
安藤裕子の声は特別だ。彼女が歌えばそこにドラマが生まれる。『頂き物』以来、4年半ぶりのオリジナルアルバム『Barometz』がリリースされた。12曲の恋の話をしたためた、素晴らしいアルバムである。ざっと振り返っておこう。安藤裕子は『頂き物』を発表した後、前レーベルから独立。ライブ活動は続けつつ、創作に関してはしばしのお休みの期間に入ることとなった。彼女はその頃から、代表曲を組み込まない新曲ばかりのセットリストでステージに立つようになる。それまでの殻を破るような「新しい自分の歌」を探していたのだろう。彼女のそうした姿勢には、鬼気迫るものがあったように思う。言ってしまえば本作は、そんな4年半の中で掴んだ確信が音楽になったものである。さて、コロナ禍によっていくつもの問題が噴出し、多くのことが変わろうとしている。2020年がこんな1年になるとは、誰も予想していなかっただろう。だが、未曽有の世界だからこそ「夢は置いておきたかった」と彼女は語っている。とびきり儚く、ほろ苦いのに愛くるしい、そんな恋模様が描かれたアルバムについてじっくり話を聞いた。