ジャスティン・ティンバーレイク、『マン・オブ・ザ・ウッズ』は年輪を重ねた男の等身大ポートレイト
それは人生におけるごく自然なサイクルなのか、様々な体験をして成熟し、ある一定の年齢に達すると、人は自分の出自について改めて考えたくなる。考えずにはいられなくなる。故郷や家族、そして幼少期の環境が自分の価値観や美意識の形成に与えた影響の大きさを再確認したり、自分は前の世代から何を受け継ぎ、次の世代に何を残すのだろうかと想いを馳せたり…。約5年ぶりのニュー・アルバム『マン・オブ・ザ・ウッズ』を聴く限り、37歳の誕生日を迎えたジャスティン・ティンバーレイクにも、どうやらそういう時期が到来したらしい。
きっかけが何だったのか、勝手な想像を巡らせるしかないのだが、2005年に女優である妻ジェシカ・ビールとの間に、息子サイラスが誕生したことなのではないかと思う。彼はこのアルバムについて「息子と妻と家族に加えて、かつてなく自分の出自にもインスパイアされた」と語っており、今までで最もパーソナルな作品に仕上がっていることは言うまでもないだろう。何しろ妻子の声も織り込まれ、過去3枚のアルバム…1st『ジャスティファイド』/2nd『フューチャー・セックス/ラヴ・サウンズ』/双子の3rd『20/20エクスペリエンス』&『20/20 エクスペリエンス 2/2』とは明らかにモードが違う。フューチャリスティックでファンキー極まりなく、それでいて、大地にしっかり足を付けたアーシーな重みとぬくもりがある。どこか映画のキャラクターを演じているかのような、ファンタジー的側面があった従来の作品に対し、今回は素顔が見える。これらの曲が浮き彫りにするのは、家族を持つひとりの男、アメリカ南部出身者ならではの気質を備え、その土地や歴史と深い絆で結ばれたひとりの男の、等身大のポートレイトだ。