『I.B.W.』は過渡期の日本ロックシーンを支えた、爆風スランプの懐の深さを感じさせる佳作
“暑さ寒さも彼岸まで”とはよく言ったもので、秋分の頃になると夏の暑さも随分と和らぎ、連日ジリジリと照り付けてきた太陽光の厳しさもすっかり思い出せないほど。しかし、“身体の傷は癒えても、心に刻まれた傷は消せない”とも言う通り(そんな慣用句はないよ、念のため)、夏に哀しい体験があったり、辛い思い出があったりすると、彼岸を迎えて日焼けの痕は消えたとしても、心の平穏は訪れない。爆風スランプが1989年に発表したシングル「リゾ・ラバ -Resort Lovers-」は、そんな愛憎入り混じった少年の感情を綴ったバンドを代表する楽曲のひとつであり、おそらく邦楽ロックでは唯一無二の世界観を持つナンバーであろう。無論、爆風スランプが邦楽シーンに及ぼした影響は数あれど、個人的には、人気絶頂期にこんな恨み節全開の歌詞を仕掛けてきた事実だけでもこのバンドの歴史的意義を見出したいほどだ。というわけで、数ある彼らのアルバムの中から「リゾ・ラバ -Resort Lovers-」が収録された『I.B.W -IT'S A BEAUTIFUL WOLRD』を取り上げる。