「NICOLAS「KUSOTTARE IS BACK 2022 “天獄への階段”」レポート
6都市13公演行った全国ツアー「NICOLAS「KUSOTTARE IS BACK 2022 “天獄への階段”」。同ファイナル公演が、11月13日(日)に東京キネマ倶楽部で催された。長く心を共にしてきたドラマーRITSUの卒業を受け、新たにバンドを固めようと進めてきた今回のツアー。NICOLASが何度もツアータイトルに掲げてきた「クソッタレ イズ バック」の言葉。その意味も含め、この日、彼らが東京キネマ倶楽部に描いた出来事を、ここに報告したい。
現実から意識を遠ざけるように幻惑したSEが流れだす。メンバーらの登場に合わせ、フロア中から沸き上がる歓声・歓声・歓声…。この日は、マスク越しなら声出しがOK。ファンたちも、溜まっていたフラストレーションを早くも絶叫に変え、4人にぶつけていた。
その喧騒を一気に消し去るよう、ライブはバラードの『UMBRA』から厳かに始まった。重く、でも切なさを抱いてゆったりと唸る演奏の上で、語り部となったSAKUが、フロア中でうずうずしている人たちの心へ、言葉に込めた想いを一つ一つ響かせる。そこには、大きなうねりを描く前の静かなる胎動が生まれていた。
さぁ、ここからは闇の世界へ落ちて狂ってしまえ。場内中の人たちを、理性を消し去り本能のままに生きる姿へ塗り替えるように『INSANITY NIGHTMARE』を演奏。SAKUの声に向け、拳を振り上げ、絶叫した声を返す観客たち。サビでは、胸に響くSAKUのメロディアスな歌の指揮に合わせ、大勢の人たちがその場で飛び跳ねる。SAKUは生きるための強い意志を、それを教えてくれた仲間たちへ向け浪々と歌っていた。
ZEROの弾く重厚なベースのリフメロを合図に、楽曲はさらに重さを増す。呪詛を唱えるように言葉を突き刺すSAKUの姿も印象的な『因果応報』だ。メンバー全員が、演奏しながら身体を大きく折り畳む。フロア中の人たちも、黒い音符の数々が跳ねるのに合わせ、共に大きく跳ね続ける。
ヒステリカルでサイバーなデジタルサイコモッシュナンバーの『VITAL SIGNS』が飛び出すのを合図にフロア中の人たちがモッシュし始めれば、SAKUの煽りと対峙するようZEROと一緒に「Oi!Oi!」と声を張り上げ、高く拳を突きあげる。ここにはコロナ前、当たり前にあった熱狂の景色が生きていた。制限された中でさえ、理性を壊し、みずからの熱情を全力でぶつけるライブの楽しみ方を、NICOLASと観客たちは作りあげていた。ほぼ移動のない中でも、飛び跳ねるように全力でモッシュする観客たちの熱情ぶりが胸を熱くさせる。メンバーらが観客たちを熱く煽りたくなるのも当然だ。