インキャパシタンツ

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    インキャパシタンツインキャパシタンツ

    インキャパシタンツは、非常階段のメンバーでもあるT.美川の個人ユニットとして、80年代前半にスタートした。そして、片面に非常階段が入っているカセット作品『Prelude To Pallo』を85年に発表。プログレ/ジャーマン・ロック的なエレクトロニクス・サウンドが聴けるのだが、そのとき以来、リリース・レーベルは基本的に<ALCHEMY>である。89年には初めてのアルバムとしてLP『Repo』を出し、激化したノイズが確認できる。なおCD化の際、『Prelude To Pallo』収録曲が追加された。そして、非常階段の準メンバーであり宇宙エンジンのリーダーのF.コサカイが加入したことで勢いづいたのか、90年の『Feedback Of N.M.S.』以降、90年代はコンスタントにアルバムを発表していく。
    インキャパシタンツのサウンドは、発振器とヴォイスが中心だ。それで妥協なき怒涛のノイズを轟かせる。その動きはストレートで、ひたすら押しまくりのストロング・スタイルのノイズなのだ。また、煩悶しているようなヴォイスも大いなる聴きどころである。ちなみに巨大音でサウンドを浴びせるライヴだと、T.美川もF.コサカイもオーヴァー・ヒートのあまり、けいれんするのだ。アルバムだと、とりわけ96年に出た『New Movements In CMPD』が、強烈な覚醒作用がある凄まじい出来だ。
    ところでアルバムや曲のタイトルがいつも意味深長というか、意味不明だったりすることもあるのだが、とりあえず音楽とは関係ない。T.美川の仕事の金融関係にまつわるものが多いようで、ジャケットと共に鋭いユーモア・センスを感じさせるのだ。そのへんも気にかけながら音を聴くと、イマジネーション拡大必至である。 (行川和彦)