「私はT列15番と申します」から始まったコロナ禍で穂の国とよはし芸術劇場PLATとままごとが企画した『ランドマークプロジェクト』を、主宰・柴幸男が振り返る
始まりは「私はT列15番と申します」と記された一通の手紙だった。昨年のコロナ禍、日本全国の劇場が閉館した時に、なんだか灯台の明かりが消えたような思いになった。劇場は地域の、表現の、観客の、そして訪れたことがない人にとっても目印=ランドマークであったはずなのに。しかし『恋と演劇について-Tからの手紙-』と題された手紙は、萎みそうになった心に栄養を与えてくれた。このスピード重視の世の中で、久しぶりにホクホクした気分になった。穂の国とよはし芸術劇場PLATは、劇団ままごとと2020年8月1日から長期にわたって、コロナ禍の今だからこそ感じ取れる演劇的な取り組みを通して、さまざまな“再会”を提案する企画『ランドマークプロジェクト』を実施してきた。2013年に小豆島での滞在制作を行い、「劇団の未来」を探そうと、港全体を劇場にし、俳優も、制作者もそれぞれに作品を発表してきた、ままごと。その後も“その時、その場所で、その人たちとしかできない演劇”を手がけてきた経験が、コロナ禍でなんとも頼もしかった。そしてこの3月、「2020年」に撮影した写真、「2020年」を題材にした作文をタイムカプセルにして埋めるという。ままごと主宰の柴幸男、穂の国とよはし芸術劇場PLAT制作の上栗陽子に聞いた