晩秋の夜に音楽を、“レコードの日”に再生したい5曲
固く締め切った雨戸を漸く開けた昨晩。台風の目の中に突き落とされた東京でコンビニの明かりを求めて彷徨う人々とすれ違っても、視線がかち合うことは決してなく、テラテラ光る夜の街の中では暴風で引きちぎられた枝葉の血のような青い匂いと、鈴虫の命をむき出しにしたかのごとき鳴き声だけが鮮やかで、まるで死後の世界のようでした。さまざまな催しに体と脳を酷使する日々から少しだけ離れた1日、久々にレコードの溝の中で繰り返されるまっさらな音楽に触れる時間ができて、もうここには自分と音楽しか存在しないかのようなただの錯覚が横たわっていて、それはとても幸福なことでした。前置きが長くなりましたが、そういうわけで今回は「レコードの日」にリリースされる作品から5曲ピックアップします。今の私たちに必要なのは、繊細な盤の溝にゆっくりと針を落としたりだとか、そういったことで得られる時間という贅沢なのかもしれません。