【THE MODS】『THE MODS TOUR 2016
"HAIL MARY" Final』2016年10月15日
at 日比谷野外大音楽堂

撮影:斉藤ユーリ/取材:石田博嗣

 “なんとか、この場は保てたんだけど、明日からの様子次第では残りの今年のツアーがどうなるか怖いんですけど…会えたら会いましょう。今夜、この日が最後かも分からないので、ちゃんと感じるように”

 今年、デビュー35年目を迎えたTHE MODS。3月にリリースしたオリジナルアルバム『HAIL MARY』を引っ提げ、4月よりツアー前半戦『"HAIL MARY" Round 1』をスタートさせたが、森山達也(Vo)が2カ所目の名古屋で半月板を負傷し、4公演目以降が延期となり、後半戦の『"HAIL MARY" Round 2』も全13公演中止となった。森山の怪我の具合が心配される中で迎えた、ツアーファイナルであり、35周年記念ライヴ。冒頭の言葉は、同公演で森山が発したものだ。まさに満身創痍でステージに立っていたことがうかがえるーー。

 開演前から始まっていたファンの熱烈な“モッズ”コール。そんな中、ステージに現れたのはTHE MODS と縁の深いTHE MACKSHOWの岩川浩二(Vo&Gu)。ライヴにおける諸注意を伝えると、“森やんは今夜のために、THE MODSは今夜のために地獄から帰ってきました。楽しめよー!”と客席を焚き付ける。そして、ついに迎えた開演の時…言うまでもなく、メンバーが登場し、森山が姿を見せると、会場を埋め尽くすファン、3000人分の歓声が沸き起こった。

 1曲目は「COUNTER ACTION」。イントロに観客のオイコールが乗り、そのまま大合唱に。歓喜、高揚、感動、興奮…さまざまな感情が一気に爆発し、客席の熱量はすでに半端ない。そこに「壊れたエンジン」のソリッドなギターリフが切り込むと、そのテンションはさらに引き上げられる。35周年記念ライヴということもあり、のっけからキラーチューンが連打されたが、リリースツアーが延期&中止になってしまったアルバム『HAIL MARY』からのナンバーも投下! もちろん新しい曲だからと言ってモッズファンの熱気が下がるわけがなく、むしろ、ようやく聴けた新曲のライヴバージョンに発奮している。

 “久しぶりです。待たせました。THE MODSです”と最初のMCでツアーが延期&中止になったことを詫びた森山。さらに、リハビリの筋肉トレーニング中に痛めたほうと逆の足も痛くなり、おまけに先月には左腕を骨折したことを苦笑気味に告白。そして、“少々痛いのを我慢して演るんで、この夜を絶対に忘れないように”と言葉を続け、“そんな俺を助けてくれるゲストを呼んでます”とキーボーディストの伊東ミキオを招き入れる。披露されたのはアルバム『HAIL MARY』収録のブギーナンバー「I SMELL TROUBLE」。百戦錬磨のバンドとその盟友が作り上げる、キャリアに裏付けされたサウンドの躍動感はさすが。軽快なグルーブと弾むピアノが観客を踊らせた。

 その後も観客の拳が突き上げられた初期の代表曲のひとつ「TEENAGE BLUE」、ストーンズ・ライクなルーズなレア曲「BUNNY GIRL」と続くが、森山が“ここから先はTHE MODSのオリジナルメンバーのふたりに託して”と言い残してステージをあとにする。苣木寛之(Gu&Vo)が“たまにはこういうシチュエーションもいいんじゃないんでしょうか”とクールなロックンロール「Rock-a-hula Billy」の、北里晃一(Ba&Vo)が“大昔の曲です”とポップにパンクに弾ける「POGO DANCING」のリードヴォーカルをとり、客席を大いに沸かせた。ちなみに森山が途中退場したのは35年の歴史の中で初めてのこと。当然、森山の体を気遣ってのことだが、それは延期になっているツアーを実現させるためにも良策。延期となっているツアーへの期待も膨らむ。

 しっとりと聴かせた「ロメオとジュリエット」の静寂を破壊するように、「激しい雨が」の緊迫感のあるイントロが炸裂すると、いよいよライヴは終盤戦。佐々木 周(Dr&Vo)が刻むタイトで痛快なビートに、苣木のスリリングなギターと北里が下腹部に響くベースが乗り、さらに伊東の鍵盤が深みと広がりを与える鉄壁のバンドサウンドは、万全ではない森山をカバーするようにボルテージを際限なく高めていくが、手にしていたギターをステージ袖のスタッフに放り投げ、マイクスタンドを引きずりながらステージを行き来して歌う森山の姿は、もはや怪我や骨折のことなど忘れさせるほど。となれば、バンドが作り出すグルーブの威力が尋常でないことは想像にたやすく、「LONDON NITE」で観客を飛び跳ねさせ、「KILL THE NIGHT」で大合唱を誘い、そのまま本編を締め括った。

 そして、アンコール。冒頭の森山のMCにあとにプレイされたTHE MODSの決意表明とも言える代表曲「LOOSE GAME」の歌詞がいつも以上に胸に染みたが、“ツアーが途中で終わってしまったんだけど、どうしてもみんなの街で聴かせたかった曲があります”という言葉からの「STAY CRAZY」に震えた。《時代が終わっても 俺達は逃げない》というフレーズが、“ROCK”という名の“LOOSE GAME”を選んだメンバーの揺るぎない信念であり、どんな状況に陥ろうが変わらないファイティングスピリッツを感じさせる。“今夜、この日が最後かも分からない”という発言も、それは諦めなどではなく、今日を全力で生き切り、明日へと進むための覚悟なのだ。

 記録的な豪雨に見舞われたデビュー1周年記念や、森山が“最後の野音になるかもしれないから”と口にした30周年記念など、節目節目でライヴが行なわれ、数々の伝説を生んできたTHE MODSにとっての日比谷野外大音楽堂。森山の不屈の姿勢に、メンバーの熱い演奏に、客席の全力の“モッズ”コールに、新たな伝説が生まれたことを実感したと同時に、改めてバンドとファンの“約束の場所”であることを認識した夜だった。

セットリスト

  1. COUNTER ACTION
  2. 壊れたエンジン
  3. MAYDAY MAYDAY
  4. I SMELL TROUBLE
  5. TEENAGE BLUE
  6. 4 BRONCOS
  7. BUNNY GIRL
  8. Rock-a-hula Billy
  9. POGO DANCING
  10. WHY WHY WHY
  11. ロメオとジュリエット
  12. 激しい雨が
  13. LONDON NITE
  14. KILL THE NIGHT
  15. <ENCORE1>
  16. LOOSE GAME
  17. GARAGE WONDERLAND
  18. TOMORROW NEVER COMES
  19. <ENCORE2>
  20. LET’S GO GARAGE
  21. HEY!! TRAVIS
  22. STAY CRAZY
  23. <ENCORE3>
  24. TWO PUNKS
  25. 他に何が
THE MODS プロフィール

ザ・モッズ:1981年にアルバム『FIGHT R FLIGHT』でメジャーデビュー。以来、時代に流されることなく、音楽に対する真摯な姿勢を貫き、ファンのみならず多くのアーティストたちにも多大な影響を与え続けてきた。技術や理屈だけでは作り出せないバンド然とした強靭なサウンドと、リーダーである森山の類稀なる歌唱力とカリスマ性が最大の魅力である。THE MODS オフィシャルHP

OKMusic編集部

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