L→R 常田真太郎(Piano&Cho&Organ&Other instruments and total sound treatment)、大橋卓弥(Vo&Gu&Harmonica)

L→R 常田真太郎(Piano&Cho&Organ&Other instruments and total sound treatment)、大橋卓弥(Vo&Gu&Harmonica)

【スキマスイッチ】音楽を使って遊ぶ
実験は成功です!

3年前のベストアルバム『POPMAN’S WORLD』と対をなすアナザーベスト。その名も『POPMAN’S ANOTHER WORLD』は、過去23作のシングルのカップリングに焦点を合わせたユニークな作品。実験的でありながら素顔でもある、バラエティーに富んだ曲が満載だ。
取材:宮本英夫

カップリングは実験の場所。モチベーシ
ョンが上がります

一応全部知ってるつもりでいたんですが、まとめて聴くとやっぱり面白いですね。カップリングの世界観って。

大橋
僕らの場合、実験的な場所としてカップリングというものを作ってきたので。やったことのないことをやったりとか。それで失敗することもあると思うんですけど、まとめて聴いてみると自分でも面白いなと思えたので、実験的には成功かなって思うんですけどね。

いいですね。実験成功。

大橋
うん。それが後々、違うリード曲に活かされてるものもたくさんありますし。
常田
アルバムにもね。

それって最初から決めていたのですか? デビューの時に“カップリングは実験にしよう”って。

大橋
デビューシングル(「view」)は違ったね。
常田
でも、次からはすぐに。たぶんミニアルバム(『君の話』)を作って、“アルバムはひとつの作品として作りたい”という気持ちが強まったんでしょうね。で、「奏(かなで)」の時に作品としてのアルバムとは別に、カップリングは実験してみようという案が浮かんでた。「君の話」のデモは、昔、自主制作で出したかったんですよ。それをお蔵入りさせるのはもったいないし、そのままで出しちゃおうと。

それでデモバージョンに近い「僕の話‐プロトタイプ‐」が、カップリングとして世に出ることに!

常田
「奏(かなで)」の時、3曲目にインストも入ってましたし、表題曲以外の曲は実験してみるということですね。次の「雨は止まない」の時にも、カップリングだから打ち込みを使ってみようということになったり。それが徐々になんとなく、数枚かけて確立していったんでしょうね。6枚目の頃は、完全に実験としてやっていくという意識はありました。

それは今もずっと?

大橋
ですね。23枚も出してますけど、どんどん面白くなってきてるので。時にはライヴバージョンを入れてみたり、オール打ち込みのインストを入れてみたり。アルバムの流れでも、シングルの表題曲の流れでもないものを入れて、自分たちのモチベーションを上げていってるような気もします。

大橋さん、愛着ある曲を教えてください。

大橋
全部あるんですけど、すごく実験的で、それが成功した曲としては「ためいき」。クリックもなしで、僕が弾き語りで一発録りしたものにドラムやベースを重ねたんですけど、クリックを聴きながらダビングしていくものとは全然違う雰囲気の、すごくカッコ良いものができた。未だにその時にプレーしたミュージシャンに会うと“あれ良かったよね”と言ってもらえるし。あと、企画として実験的だったのは「Aアングル」「Bアングル」。コンセプトを立てて、サビのメロディーを同じにして、最終的にアルバム(『ナユタとフカシギ』)に入ってる「8ミリメートル」という曲につながるんですけど、そういう一連の流れができて、音楽を使ってうまく遊べたと思います。どれぐらいの人が最初から気付いて楽しんでくれたかは分からないですけど、いい結果になりましたね。

シンタさん、お気に入りは?

常田
いろいろありますけど、「さみしくとも明日を待つ」とか。スキマスイッチを組んだばかりの頃に作った曲で、それがデビューしたあとにかたちになり、さらに憧れのGRAPEVINEさんと共演してしまった。それは自分たちにとってもセンセーショナルな体験で、それがまた「全力少年」のカップリングになるという。

すごい出世曲(笑)。

常田
こいつにしてみれば、“え、俺?”って感じ(笑)。カップリングって、エピソードがすごく多いんですよ。“意欲がある”と言うと言い方がおかしいけど、ふたりで盛り上がって“これやろうぜ!”って持ち込んだものが多いので。

そして、初登場のボーナストラックが2曲。「壊れかけのサイボーグ」はもともとスキマ以前に大橋さんが持ってた曲だとか。

大橋
そうです。この曲ですごく覚えてるのは、シンタくんと一緒に活動し始めた頃に渋谷のハチ公前でイベントがあって、この曲を歌ったんですよ、ひとりで。その時、シンタくんはビラを配ってたんです。今歌ってる奴と俺がやるイベントがあるから遊びに来てくれ、って書いてある。
常田
スペース的に鍵盤が置けなくて、ひとりで歌ってもらったんです。だから、僕はビラを配る係(笑)。懐かしいな。

それ以降、スキマのライヴではやってない?

常田
やってないです。
大橋
もともと僕の弾き語りしかなくて、アレンジもされていない。だから、「さみしくとも明日を待つ」と同じで、こいつも“え、俺?”って感じだったと思いますよ(笑)。
常田
裸だったので、慌てて服を着せた感じ(笑)。外に買いに行く時間がないから、全部打ち込みで(笑)。ただ、僕としてはスキマスイッチを組んだ当時と同じスタイルでやりたかったんですよね。卓弥が持ってきたものを、僕がひとりでアレンジするというスタイル。

十代ですか? 書いたのは。

大橋
19歳とかだったと思いますね。

そんなに若いのに、なんでこんなに世の中を斜めに見た皮肉な歌詞なんですか?(笑)

大橋
そうなんですよ(笑)。背伸びをしすぎて、逆に…
常田
しゃがんじゃった(笑)。
大橋
昔はこういう背伸びした、大人ぶった歌詞を書きたがってたんですよ。斜に構えてたんでしょうね。でも、変えてしまうと意味合いが変わるから、歌詞はほぼオリジナルのままです。

この時の自分に何て言ってあげたいですか?

大橋
歌詞はともかく、メロディーは今に通じるものがありますし、“そのまま曲を作り続けたらいいよ”って言ってあげたいですね。20年経ってもあんまり変わらない曲を書いてるよって。“でも、歌詞はもう少し等身大のほうがいいんじゃないか?”と、言いたいです(笑)。

そして、もう1曲の「フレ!フレ!」は最新の一曲。これはMINISTOPのCMのタイアップ曲で、サイズも短めですね。

常田
80秒ぐらい。でも、CMバージョンはテンポが違って…
大橋
もっと速い。それを14秒に収めるという。CMのために書き下ろした曲なので大変だったけど、面白かったですね。作家さんならそのCMのことだけを考えると思うんですけど、僕らは“14秒の中にどうやったらスキマスイッチらしさが入るか?”とか、いつもとは違う感覚で作ってました。

ジャズっぽいフレイバーを持ち込んだのはシンタさん?

常田
いや、なんとなく。ブラシがいいと言い出したのは卓弥で、“じゃあピアノはこういう感じで、ギターはこんな感じ?”とか、あんまり深く考えずにやったら、こうなった。ただ、やるなら実験的にやろうというのは頭のどこかにあったので、「壊れかけのサイボーグ」とは違うアプローチの打ち込みでやってみようと。「壊れかけのサイボーグ」はいろんな音を詰め込んだから、「フレ!フレ!」は生音のシュミレートでやってみようと。エンジニアさんにはすごい頑張ってもらいました。

OKMusic編集部

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