険しい山を登りきって頂上についた時
に景色を眺めながら聴きたい曲

ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。 今回のテーマは、「険しい山を登りきって頂上についた時に景色を眺めながら聴きたい曲」です。山々の緑も色づき始め、澄み渡る空気を胸いっぱいに吸い込める気持ちの良い季節がやってきました。途中までの厳しい道のりのことを忘れさせてくれるような景色を眺めて、達成感に浸りながら聴きたい曲を集めました。

1.「There Must Be an Angel (Playin
g with My Heart)」/Eurythmics

「ほんまに頂上に着くんかい!」と思いながら、息も絶え絶えで一歩また一歩険しい道を踏みしめて、途端に目の前の視界がぱぁっと開けた時の爽快感といったら・・・そんな時にこのアニー・レノックスのスキャットが脳内再生されることでしょう。気持ちいい!!眼下に広がる景色と何ものにも遮られない大きな空を抱いて、スティーヴィ・ワンダーのハーモニカが響き渡ります。
1985年のユーリズミックスの大ヒット曲。「こんな風に感じている人がこの地球上にいるのかしら 私はこの上ない至福の中に包まれている きっと天使のおかげだわ 私の心と戯れてるのね」と歌っています。アニーの声からは幸せが溢れんばかりです。どんな険しい山も(人生においても)前を向いて歩を進めていれば、きっと天使が頂上へと導いてくれる気がしますね。
(選曲・文/阪口マサコ)

2.「アルプスの少女」/麻丘めぐみ

冒頭から流れる音楽とともに響き渡る”ヤッホー!”の声。開始15秒の時点で今回のテーマの全てが集約されています。この曲は、麻丘めぐみのアイドル時代のナンバー、1973年10月発売。同じ年に「わたしの彼は左きき」が、大ヒットしたので、どうしても霞んでしまう部分がありますが、この曲もそれに劣らない名曲です。アイドルとしての彼女は、笑顔も動きも声のすべてが、「かわいい」と評したくなるほどですが、それが本当によく表れています。
なお、この曲が発表された翌年に、フジテレビでアニメ『アルプスの少女ハイジ』が放送開始されましたが、それまでのアルプスの少女は、ハイジではなく彼女のことを指していた人が多かったのではないでしょうか。
(選曲・文/Kersee)

3.「Return To Innocence」/Enigma(エ
ニグマ)

エニグマは1990年に結成され、ドイツを中心に活動している音楽プロジェクトで、この曲は2ndアルバム『The Cross of Changes』より1994年にシングルカットされたものです。
ダンスのリズムを刻むバックトラックに乗せた、民族音楽風の歌声や厳かなグレゴリア聖歌。このミスマッチな融合が強烈に印象に残るのがエニグマの音楽なのです。
この曲でも印象深いのはやはりチャント(詠唱)で、Difang(ディファン)という台湾南東部の原住民アミ族の歌手が歌う「老人飲酒歌」をサンプリングしたものです。どんな国の人にも通じる、魂の音階で歌われているようなチャントは、まさに人間の動物としての潜在意識を呼び起こしてくれそうで、山の頂上から望む景色に偉大なる自然の力を感じながら聴くには最適です。
何も難しいことは考えず、思いのまま音に身を委ねて聴いてみていただきたいです。
(選曲・文/高原千紘)

4.「雪山讃歌」/ダーク・ダックス

「雪山」という字面を見るだけで、険しさが伝わるものです。それだけに登り切った後の達成感はおそらく格別のものがあるかと思います。”山よ 山よ 山よ”と本当に山びこのように響き渡るコーラスからは、実際に山登りしたことがなくても、その場の雰囲気を味わえますね。三拍子のリズムも、一歩一歩山道を踏みしめる足取りにマッチしています。もっともこの曲は、元を辿ればアメリカ民謡、西部開拓をテーマにした「いとしのクレメンタイン」という曲。映画『荒野の決闘』に使われたナンバーでもありますが、このメロディーに、京都大学の山岳部のメンバーが”山岳部の歌を作ろう”という発案し、このような歌詞が作られた、という経緯があったそうです。
もうすぐ雪山シーズンに入ります。今年も日本各地で、険しい雪山に挑戦する人たちの愛唱歌として、この曲が歌われるのでしょうか…。
(選曲・文/Kersee)

5.「Mountain Top(マウンテン・トップ
)」/VOW WOW(ヴァウ・ワウ)

ロックの名曲は数々あれど、このテーマであればこの曲を外すわけにはいきません。日本が世界に誇る孤高のハードロック・バンドVOW WOWの、ラストアルバムとなった『Mountain Top』(1990年リリース)からのタイトルトラックです。
日本のハードロックの先駆けとして1976年にデビューし、日本国内のみならず海外でも大きな人気を得て、イギリスの伝統あるロック・フェス「レディング・フェスティヴァル」にも出演したバンド、BOW WOW。VOW WOWは、そのBOW WOWを母体として、1984年にデビューしました。
BOW WOW時代よりもさらにスケールを広げた規格外のサウンドとパフォーマンスで、国内外で高い評価を獲得。1986年以降はイギリスを拠点に精力的な活動を展開。しかし、最高傑作とも言われる『Mountain Top』をリリースした1990年に、惜しまれつつ解散しました。不穏な空気を漂わせるギターの独特なリフに導かれて始まる「Mountain Top」。そのサウンドは先の見えない濃霧や荒れた斜面を思わせます。
力強いリズムセクションは、休みなく先へ進む登山者の足音のよう。そしてコーラスで不意に現れる、山の頂。壮大な景色。「艱難辛苦をくぐりぬけ、頂点に到達した」という大きな達成感とともに、「頂点を極めてしまった、もう先に進むことができなくなってしまった」という幾ばくかの喪失感をも感じさせる珠玉の名曲です。
日本のハードロック・バンドとして頂点を極めた1990年当時、メンバーの皆さんの心境もそうだったのでしょうか?
(選曲・文/伊藤威明)

著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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