『馬の耳に念仏』/フェイセズ

『馬の耳に念仏』/フェイセズ

愛すべき飲んだくれR&Rバンド、
フェイセズの魅力が詰まった
『馬の耳に念仏』

アルバム『馬の耳に念仏』

今回、取り上げる『馬の耳に念仏』はフェイセズが71年にリリースした3作目のアルバム。フェイセズと言えば、やはりこれだろう。全英6位を記録したフェイセズ最大のヒット曲「ステイ・ウィズ・ミー」も収録されている。もちろん、多くの人が知っているヒット曲という意味で、その「ステイ・ウィズ・ミー」ばかりが取り上げられるのは仕方ない。しかし、「ステイ・ウィズ・ミー」だけがフェイセズではない。それはロン・ウッドが奏でるヘヴィなリフにマクレガンのエレピが絡むオープニングの「ジュディズ・ファーム(原題:Miss Judy’s Farm)」以下、佳曲が並んだこのアルバムが雄弁に物語っている。
ロッドによるシャウトが痛快すぎるその「ジュディズ・ファーム」「ひどいもんだよ(原題:Too Bad)」といったロック・ナンバーに加え、ソウルフルなバラードの「ラヴ・リヴズ・ヒア」、そしてスモール・フェイセズ時代から“もうひとりのソングライター”としてバンドを支えてきたロニー・レイン(Ba&Vo)が自らリラックスした歌声で歌うハートウォーミングな「ユアー・ソー・ルード」など、曲のバランスもいい。チャック・ベリーの「メンフィス、テネシー」のカバーも気が利いている。もちろん、ラストを締め括る「ザッツ・オール・ユー・ニード」でロン・ウッドが唸らせるスライドギターも聴きどころだが、やはり今回はギターとキーボードのコンビネーションに耳を傾けたい。こういうアンサンブルを聴かせるバンド、案外、他にはいないかもしれない。
ロッドがソロシンガーとして成功してしまったため、バンドはぎくしゃくしてしまい、ロニー・レインの脱退、日本人ベーシスト=山内テツの加入を経て、フェイセズはとうとう解散してしまうが、ちっちゃいことは気にしない(実はそうでもないんだけど)、彼らが印象付けた“飲んだくれロックンロール・バンド”というイメージにジョージア・サテライツ、ブラック・クロウズ、リプレイスメンツ、ガンズ&ローゼズ、ジェットら、多くのバンドが憧れた。今でもきっとロックンロールを志すミュージシャンにとって、フェイセズはひとつのロールモデルになっているにちがいない。

全英2位、および全米6位を記録したこのアルバムは、そんな彼らが一番輝いていた瞬間を記録したものとして、未だに多くのロックファンから愛されている。彼らがどんなふうに愛されたバンドだったかを物語るジャケットもいい。

著者:山口智男

OKMusic編集部

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