祝デビュー10周年! 木村カエラのポ
ップな個性を支える凄腕メンツとは?

インターネットラジオ「FaRao」で配信中のアーティストを毎回一組、ピックアップ。ルーツを中心に、ジャンルや世代、国境を超えて広がる「音楽地図」を、音楽ライター 柴 那典が紹介する連載企画!

今回の『FaRao Music Discovery』でフィーチャーするのは、10月22日にニューシングル「TODAY IS A NEW DAY」をリリース、10月25日と26日には横浜アリーナにて10周年記念ライヴ『KAELA presents GO!GO!KAELAND 2014‐10years anniversary‐』を開催する木村カエラ。2004年のメジャーデビューからこれまで7枚のアルバムをリリースしており、昨年には自身が代表を務めるプライベートレーベルELAも設立し、活躍の幅をますます広げている。独自の立ち位置を築いてきた彼女の歩みから、その幅広い音楽との繋がりを紐解いていこう。
モデルとしての活動やテレビ番組『saku saku』への出演をきっかけに、シンガーとしてデビューした木村カエラ。今年6月に放映されたNHK番組『ミュージック・ポートレイト』に出演した際にアーティスト・奈良美智との対話で明かしたところによると、最初に“歌手になりたい”と思ったきっかけは、子供時代によく聴いていたglobeだったとか。中学生になってその個性的なファッションやキャラクターに夢中になったのはスパイス・ガールズ。ステージに立ちたいという強い思いを抱き、憧れをかたちにしようと決意を抱くきっかけになったのは、YUKIのステージを観たことだったそうだ。
そして、メジャーデビューを果たした彼女を最初に大きく押し上げたのは、ロックシーンのベテランや大物ミュージシャンとのつながりだった。ブレイクのきっかけになった「リルラ リルハ」は元EL-MALO、一時期は髭のメンバーとしても活躍したアイゴンこと會田茂一の作曲。続く「BEAT」は奥田民生が作曲とプロデュースを担当し、初主演映画『カスタムメイド10.30』でも共演が実現した。2006年には再結成したサディスティック・ミカ・バンドのヴォーカリストの座につき、加藤和彦や高橋幸宏などとともに活動。数々のレジェンドたちから愛される歌姫として評価を高めていく。その背景には、抜群の歌唱力とユニークな個性を持った木村カエラ自身の“素材”としての魅力があったはずだ。
また、今に至る木村カエラの大きな柱となっているのが、パンクやハードコアなど日本のインディーズシーンとの深いつながりだ。デビュー前の高校生時代に組んでいたバンドANIMOは、FULLSCRATH、the HIATUSのメンバーであるギタリストmasasucksがメンバー。その人脈から、パンクロックバンド・ASPARAGUSの渡邊忍や、スカバンド・SCAFULL KINGのメンバーなどがバックバンドを務めるようになる。特に“しのっぴ”こと渡邊忍は「TREE CLIMBERS」など数々の楽曲を手掛け、2011年のアルバム『8EIGHT8』では全曲のプロデュースを手掛けるなど“盟友”とも言える関係だ。最新シングル『TODAY IS A NEW DAY』でも作曲とプロデュースを手掛けている。
クラムボンのミト、石野卓球、BEAT CRUSADERS、NATSUMENのAxSxE、SUEMITSU & THE SUEMITHの末光篤などさまざまなフィールドの実力派ミュージシャンが楽曲を提供してきた木村カエラ。その輪がさらに広がったのが、昨年にプライベートレーベルELA第一弾作品としてリリースされたコラボカバーアルバム『ROCK』だった。自身が刺激を受けた60年代、70年代、80年代の洋楽の名曲の数々を歌ったこのアルバムでは、さらに豪華なコラボレーションが実現。a-haの「Take On Me」を岡村靖幸と、クイーンの「Crazy Little Thing Called Love」を斉藤和義と、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「SUNDAY MORNING」を細野晴臣と、ザ・フーの「My Generation」をくるりの岸田繁と、ブロンディーの「Heart Of Glass」をチャットモンチーとカバーするなど、世代を超えたロックミュージシャンたちと共作を果たした。さらには日本だけでなく、CSSやPOP ETCなど洋楽アクトとのコラボレーションも実現。大物から新人まで、国境も超えて幅広い才能を集めた一枚となった。
ちなみに、POP ETCのリードシンガーであるクリストファー・チュウは7月にリリースされた木村カエラのレーベルELA第一弾シングル「OLE!OH!」でも作曲・プロデュースを手掛けている。親日家としても知られる彼は、Galileo Galileiの新作ミニアルバム『See More Glass』で共同プロデューサーを務めたり、菅野よう子が制作したアニメ『残響のテロル』のサウンドトラックに楽曲提供したりと、日本の音楽シーンでも徐々に足場を拡大中。こちらも注目の存在だ。
こうして見ていくと、木村カエラ独自の個性は、単にシンガーとしての実力だけでなく、さまざまなミュージシャンの才能を引き出すキュレーター的な存在感にもあることが分かる。前述の番組『ミュージック・ポートレイト』では、エルトン・ジョンの「Your Song」を今の自分を象徴する曲として挙げていた彼女。「愛を持ってちゃんと人を抱きしめていられるような曲を作っていきたいし、やっぱり自分自身も人に愛されていたい」と語っていた。
真っ直ぐな思いに支えられたセンスと才能が、木村カエラのポップな魅力に結実しているのだ。

著者:柴 那典

OKMusic編集部

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